### 第31話:キャスターの悲鳴
### 第31話:キャスターの悲鳴
コンクリートの段差をクリアした衝撃は、想像以上に僕の体に深く刻み込まれていた。
ガツン、と車体を乗り越えた瞬間に受けた突き上げは、腕の関節だけでなく、まだ完全に鍛えきれていない体幹の芯を激しく揺さぶった。
「おい、瀬戸! 大丈夫か今の……!」
翔太が慌てて駆け寄ってくる。
「あ、ああ……なんとかね」
強がりを言ってみたものの、右腕の筋肉はすでに限界近くまで緊張し、指先がかすかに震えていた。
日常用の車いすとは違い、競技用車いすはスピードや機動性に特化している分、こうしたイレギュラーな衝撃をダイレクトにフレームと体に伝えてくる。一ノ瀬が言っていた「深い負荷」とは、単に練習量を増やすことではなく、こうした機材の限界や、自分の肉体が受けるダメージの閾値を引き上げることを意味していたのかもしれない。
僕は震える手を膝の上に置き、深呼吸をした。
目の前には、相変わらずひび割れ、でこぼこした校舎裏のアスファルトが広がっている。
整えられたウレタンコートのような優しさはここにはない。だが、この過酷な環境こそが、今の僕の足腰――いや、車いすの上の体を鍛え上げる唯一の道なのだ。
「……もう一回やるよ、翔太」
僕の言葉に、翔太は驚いたような顔をしたが、やがて頼もしい笑みを浮かべて持ち場に戻った。
「言ってろ! 今度は容赦なくサイドラインギリギリを狙うからな!」
ふたたび放課後のコートに打球音が響く。
擦り切れるタイヤ、悲鳴を上げる筋肉、そして胸の奥で燃え盛る熱い闘志。




