### 第27話:晴れ渡る視界
### 第27話:晴れ渡る視界
翌朝、昨夜までの雨が嘘のように洗い流され、初夏のまばゆい太陽が校庭を照らし出していた。
水たまりの残るアスファルトはまだ濡れていたが、空はどこまでも高く、澄み切った青が広がっている。
「おっ、今日は最高のコンディションじゃねえか!」
登校してくるなり、翔太がラケットバッグを担いで僕の教室の窓へと顔を覗かせた。
「昨日の雨で埃も流されたしな。放課後はいつもの校舎裏が使えるぞ」
「ああ、楽しみだね」
僕は笑って頷いたが、胸の奥では少しだけ引き締まる思いがあった。
雨の日の体育館で壁打ちを続けたおかげか、不思議と体の軸が安定しているような感覚があった。自分の足が動かない現実や、それに伴う焦燥感にただ振り回されていた頃とは違う。車いすの上での重心の置き方、ラケットへ効率よく力を伝える感覚が、少しずつ自分のものになり始めている手応えがあった。
授業が終わり、待ちに待った放課後。
僕たちはすぐに校舎裏の特設コートへと向かった。
昨日の雨で少し湿ったアスファルトの上で、一ノ瀬からもらった新しいタイヤが黒々とした轍を描く。
「いくぞ、瀬戸!」
「いつでもこい、翔太!」
翔太が放った初球が、乾いた音を立てて僕のコートへと飛び込んできた。
車体を滑らかに旋回させ、僕は迷いのない軌道でラケットを振り抜く。
パァンッ!
球足の早いショットが、鮮やかな直線を描いて翔太のコートへと突き刺さった。
事故直後の深い絶望の底にいた自分が、今こうして風を切り、誰かと本気でボールを交わしている。その事実に改めて胸が熱くなりながら、僕の車いすは次のボールへと勢いよく駆け出した。




