### 第25話:雨粒のグラウンド
### 第25話:雨粒のグラウンド
翌日、目を覚ました僕の体には、昨日の疲労が鉛のように重く残っていた。
特に右腕の筋肉は、微かに動かすだけでもピリピリと痛む。それでも歯をくいしばって身を起こし、登校の準備を整えた。
だが、空は朝からどんよりとした鉛色の雲に覆われていた。
学校に到着する頃には、ポツリポツリと冷たい雨粒がアスファルトを叩き始め、放課後を迎える頃には本降りの雨へと変わっていた。
「おい、瀬戸。今日の校舎裏、完全に水溜まりの海だぞ」
ホームルームが終わるやいなや、翔太が傘を片手にやってきた。
窓の外を見やると、僕たちの特設コートである校舎裏は、古いアスファルトの凹凸に雨水が溜まり、あちこちで小さな池のようになっていた。水はけの悪いあの場所で車いすを走らせれば、タイヤが空転するだけでなく、泥水がフレームや自分の服を容赦なく汚すのは目に見えている。
「……だな。今日はさすがに無理か」
僕は窓ガラスに打ち付ける雨粒を見つめながら、小さく息をついた。
昨日感じた肉体的な疲労と心の重さが、この雨によって半ば強制的に足止めを食らったような、そんな複雑な気分だった。練習できないもどかしさと、正直なところ「休める」という安堵感が入り交じる。
「ったく、せっかく昨日新しいレシーブのコツを掴みかけたってのに」
翔太は不満そうに舌打ちをしたが、すぐに肩をすくめた。
「まあいい。こんな日は無理して怪我しても仕方ねえ。雨宿りがてら、体育館の端っこででも上半身のトレーニングでもするか?」
翔太のその前向きな提案に、僕は少しだけ救われたような気がした。
自分の足で走れないもどかしさや、事故の記憶に囚われかけていた心が、彼の何気ない一言で少しだけ軽くなる。
「……そうだな。付き合うよ」
僕は日常用の車いすのハンドリムを握り、雨音の響く廊下へと漕ぎ出した。
コートに立てない日であっても、僕が車いすの上で生きているという事実は変わらない。泥まみれのグラウンドを離れ、僕たちは静かな体育館の片隅へと向かった。




