↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
車輪の軌跡 ―時速0キロからの挑戦―  作者: じょんどぅ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/104

### 第20話:ウレタンの洗練

### 第20話:ウレタンの洗練


一ノ瀬に促されるまま、僕は競技用車いすを進めて第2体育館のコートへ足を踏み入れた。

アスファルトのざらついた感触とは全く違う。滑らかで、それでいて適度なグリップ力を備えたウレタンのフロアが、タイヤの下で心地よい反響を返してくる。


「どうだ、普段のざらついた地面とは違うだろう」

一ノ瀬はラケットケースから自分のラケットを取り出しながら、静かに言った。

「滑りすぎず、止まりすぎない。車いすテニスにとって、この床の感触をどれだけ早く掴めるかが最初の勝負だ」


「……はい」

僕はタイヤを小さく前後に動かし、その感覚を確かめる。

校舎裏のひび割れたアスファルトでは、常にタイヤが削れる恐怖と戦いながら微調整を強いられていた。しかし、ここでは力の伝わり方がダイレクトに車体に反映される。まるで、自分の体が数倍軽くなったような錯覚すら覚えた。


「おい、いつまでも感触に浸ってる暇はないぞ」

一ノ瀬がネットの向こう側から鋭い視線を投げかけてくる。

「今日はタイヤの予備を譲るという約束だが、ただで渡すつもりはないと言ったはずだ。僕から一本でも取れたら、一番状態のいい予備をくれてやる。取れなければ……そのボロボロのタイヤのまま、自力でどうにかする方法を考えるんだな」


周囲で練習していた他のプレイヤーたちの視線が、ふとこちらに集まる。

冷やかしではない。プロフェッショナルな眼差しが、僕たちのコートに注がれている。

プレッシャーが、背筋をスッと冷たく撫でた。だが、不思議と恐怖はなかった。むしろ、胸の奥で熱いものが激しく脈打っている。


「……望むところです」


僕はグリップを握り直し、低い姿勢をとった。ワイヤーが覗く右側のタイヤに体重を預け、いつでも飛び出せるように身構える。

翔太と交わした放課後のラリー。あの小さな空き地で泥臭く掴んできたすべての感覚を、この整えられたコートの上で証明する。


「いくぞ、瀬戸!」


一ノ瀬のトスが上がり、鋭く放たれた初球が、僕のコートのサイドラインへと突き進んできた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。