### 第106話:王者の執念
### 第106話:王者の執念
「ゲーム、真壁・御堂ペア、5-4!」
王者の意地は、そう簡単には折れなかった。
マッチポイントを握られたプレッシャーの中、真壁はむしろ吹っ切れたような鋭いサーブを連発し、続くゲームを執念で奪い返してみせた。
「ふぅ……ふぅ……!」
真壁の荒い息遣いが聞こえる。その目はまだ死んでいない。むしろ、崖っぷちに追い詰められたことで、本物の「強者の牙」が完全に剥き出しになっていた。御堂もまた、無言のまま冷徹な眼光をこちらに向け、隙あらばすべてを叩き潰そうと全神経を研ぎ澄ませている。
「ちっ、しぶとい連中だぜ……! でも、ここからだ!」
翔太が汗を拭いながら、自身の車いすのハンドリムを力強く握り直す。
スコアは5-4。依然として僕たちがリードしているが、ブレイクを許せば一気にイーブンへと戻されてしまう。
(まだ僕たちの軸は崩れていない……!)
野田さんがミリ単位で調整してくれたマットブラックのフレームに手を添え、僕は深く呼吸をした。骨盤をしっかりと立て、体幹の中心にすべての力を集中させる。
一ノ瀬コーチの厳しい指導の下で積み上げてきたものは、こんな土壇場で揺らいだりしない。
「行くぞ、翔太!」
「おうっ! このゲームで終わりにしてやる!」
第10ゲーム。全国の頂点をかけた、本当の決着の幕が上がろうとしていた。




