船長
先任は悪い人じゃないけど、直情的なところがありました。
俺の上司はというと、物凄く年老いて見える老人だった。
実年齢は50代だったようだけど、白髪と禿頭が合間って物凄く年老いて見えた。
顔だってお世辞にも50代には見えなかった。
そんな彼だったけど、俺は彼のことをよく知らなかった。
基本的に上司は仕事人だったからである。
上司は基本的に仕事へやから出ることはなかった。
本当に仕事以外の付き合いはなくて、1日に上司の顔をみることは多ければ3回くらい。
それも昼ご飯のことを除いたら、2回くらいだった。
「あのくそ爺......。」
そして、何故かはわからないけど、俺の先任はそんな彼を嫌っていた。
先任は基本的におおらかな人だったけど、上司に関してはそうではなかった。
いつも、あいつくそだわ!とか言っていたのである。
常勤にタッチもないから、結構のびのびとしている感じだったけど、何でそこまで毛嫌いするのか俺は分からなかった。
たまに先任が小言を言われることはあったけど、それも先任が未だに業務を全く熟知してなかったからだった。
「おい!」
ある日のこと、上司の部屋から帰ってきた先任は俺にある紙を見せてきた。
俺はまた愚痴に付き合わされるのかなと思ったけど、それは違った。
まあ、部屋に入っている時間が物凄く短かったから、怒られているとかはないようだった。
「これ見ろ!」
そう言った先任は俺に紙を渡してきた。
紙は何かの資料だった。
「これがどうしたんですか?」
「そうじゃない、裏だよ。」
そう言われて俺は紙を裏返した。
そこには老母、船、退職金、介護という単語が癖のある字でかかれていた。
ふむ、どうやら上司も苦労しているらしい。
「これどういう意味だと思う?」
「さあ、老母の介護で退職金で船を買うって話じゃないですか?」
「そうだと思うよな?」
「確実ではないですけどね。」
謎にウキウキした先任の前に俺は私見をのべた。
それを聞いた先任はさらに上機嫌になった。
どんだけ嫌いなんだよと俺は思った。
「あいつ苦労しているみたいだ。笑えるわ!」
「そうですね、あはは......」
ちょっとその感性ついていけないわ。
そう思ったけど、俺は後任の義務として、愛想笑いでその場をごまかした。
蛇足をいうと、俺はそれから心のなかで上司のことを船長と呼ぶことにした。




