↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラスボス悪女に転生したので死亡エンド回避を目指していたのに、なぜか原作以上に詰んでいます  作者: 菱田もな
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/72

エミリア・セラフィーネ-3



「というわけで、来週の休日にエミリアとお出かけしてくるから」


 帰宅早々、レインにそう告げると、彼の顔は分かりやすく歪んだ。


「何が“というわけ”なのか、全く理解できないんだけど。そもそも、この間の話を忘れたわけ?」

「エミリアが怪しいって話でしょ。ちゃんと覚えてるよ」


 「忘れるわけがない」とはっきり伝えると、目の前の顔はさらに歪む。

 ――だったらなんで? と言いたげな表情だ。


「何度か二人で出掛けたこともあるし、大丈夫だと思ったのと……あと、エミリアのことを、知りたいって思ったから了承したの」

「知りたい?」

「うん。エミリアの本心を知りたい。わたしのことを疎ましく思っているなら、それも含めて彼女と話がしたいなって思っているの」


 エミリアのことを無条件で信じられるほど、わたしは彼女のことを知らない。ユリウスにも、そう話した。


(だけど、そもそも知ろうとしていなかった。勝手にゲームの知識で知ったつもりになって、目の前の彼女のことをよく見ていなかった)


 だから、たとえ、本当にエミリアがわたしのことを殺そうとしていたとしても、このまま本心を知らないまま、距離を置くのは嫌だと思った。


(もちろん、それだけが理由ではないけど)


 今日の発言や、ユリウスの秘密を知っていたこと。そして、エミリアの口から出た「アナスタシアは赤色が嫌いだ」という言葉。


 その小さな違和感たちが、あるひとつの疑惑へと繋がった。


 もしかしたら、エミリアは自分と同じなのかもしれない。彼女もまた転生者なのではないかと、そう思っている。


 だから、それを確かめるためにも、彼女とは一度ちゃんと二人きりで話したい。

 だけど、目の前のレインは苦い顔をしたままだ。


(やっぱり、反対だよね)


「俺はあの女を疑っている。だから、極力関わってほしくない」

「……うん」

「でも、アナスタシアの気持ちを大事にしたいと思ってる。君の望みは叶えたい……だから、気をつけて行ってきな」


 少し困ったような、それでいて優しい笑みに胸の奥があったかくなるのが分かった。

 いつだって、彼はわたしのことを考えてくれている。


 嬉しさから、隣に座るレインに腕にそっと抱きつけば、彼もまた嬉しそうに目を細めた。


「ありがとう、レイン」

「また危険な目に遭わないか、不安すぎるけどね。こっそり着いていこうかな」

「あ、そこは安心して。もしものことがあった時のために対策を考えたの」

「対策?」

「そう、みてこれ!」


 そう言うと、わたしはレインから身体を離した。そして、彼の前にあるものを差し出す。

 虹色に光るそれは、今日の帰りに街の市場で買った腕輪であった。


「何これ」


 彼はわたしの手から腕輪を奪うと、首を傾げる。なので、わたしは得意げに説明を始めた。


「これはね、筋力が上がる腕輪なの! なんと、この腕輪を身につけている間は、筋力が十倍になる素晴らしいものらしいの!」

「へぇー」

「だから、もしエミリアに襲われることがあっても大丈夫!」

「……大丈夫? なんで?」

「え? だって、もしエミリアから羽交締めされたとしても抵抗できるでしょ? それに、馬乗りになって首を絞められたりしても、突き飛ばせるもの!」


 なんてたって、筋力が十倍になるのだから!


 ドヤ顔でそう告げると、レインは眉をひそめる。何言ってんだコイツと言わんばかりの表情だ。


「いや、襲うときは普通に魔法を使うと思うけど」

「え」

「わざわざ肉弾戦に持ち込むほうが面倒でしょ。だから、筋力が十倍になったところで、あんまり意味ないと思うけど」


 そう言うと、レインはわたしの手に腕輪を戻した。だけど、わたしにはもうそれは必要ない。


「まあ、でもアナスタシアもそれは分かったうえだよね。他には?」

「ほ、他?」

「うん。……まさか、対策ってこれだけ?」


 その言葉に、何も返せなかった。


 黙り込んだわたしに、呆れたような視線が痛いぐらいに刺さる。


 どうして気づかなかったのだろう。

 前世では、魔法で襲われることなんてない。だから、筋力さえ強化できれば安心だと思い込んでしまった。


(この世界では、筋力勝負になる方が珍しいというのに!)


「アナスタシアって、」

「馬鹿じゃない!」


 レインの言葉を遮るように叫ぶ。


「まだ何も言ってないけど」

「どうせいつものように馬鹿って言おうとしてたでしょ! 分かるんだから!」

「そんなことない。ただ、間抜けだよねって言おうとしていただけ」

「同じようなものじゃない!」


 その言葉に、レインは笑った。


「抜けているアナスタシア様には、俺が護身用の魔法をかけてあげますね」

「……馬鹿にしてるでしょ」

「まさか。かわいいなって思ってる」


 そう言うと、レインはわたしの頭をぽんぽんと撫でた。まるで、子供をあやすような態度である。


 思わずムッとした表情を浮かべると、彼はより一層楽しそうに笑ったのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。