表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【2万PV、届きました】私、実は選ばれし魔法少女なんですけど…推しが多すぎて困ってます  作者: 藍瀬 七


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
51/52

第51話 この胸のざわつきの正体は──

土の国王との謁見で、火の国との協定が正式に結ばれる。

子どもたちとの交流の中、ディーンが水の魔法で実を育てたことに感動した。

ルロンドは衝動的に世未を抱きしめ、その気持ちの正体に戸惑い始める。

 城を出た瞬間、外の風が頬を撫でた。空は澄み渡り、穏やかな時間が流れている。

 ──だが、俺の心はざわついたままだ。静けさが、かえって胸の内の波を強く浮かび上がらせる。



「お姉ちゃん、この間はりんごありがとう!僕たちからのお礼、受け取ってほしい!」

 子供たちの声が響き、俺はその声に引き戻された。


 俺たちの人数分のりんごが差し出された。その瞬間、世未の顔が驚きに染まる。


「ううん、あなた達が食べていいのよ?」

 彼女の声は優しさに溢れていた。しかし、子供たちは首を横に振る。

 

「お姉ちゃん、あのね、お兄ちゃんが水の魔法で木を育ててくれたんだ!

 だから、もう大丈夫!」


 彼らの指差す先には、たくさんのりんごが実った木々が広がっていた。


「本当だ……!」


 世未の瞳が潤む。まるで奇跡を見たかのように、彼女は静かにその光景を見つめていた。


「ディーン、やるじゃない。見直した」

 

 褒められたディーンは顔を赤くしながら、精一杯強がる。

 

「べ、別にこんなの余裕だもん!僕は天才だからね!」

「ふふっ、可愛いところあるんだから」


 そんな微笑ましいやりとりを見ていると、不意にジョーが世未の顔を強引にこちらへ向かせた。


「うん、やっぱり可愛い。世未は俺のもの!」


 唐突なその言葉に、世未は目を丸くした。


「ちょっと、ジョー……みんながいるのに……っ」


 戸惑いながらも、完全には否定できていない。

 笑顔の裏に、ほんの一瞬だけ影がよぎった気がした。

 ……それを、俺は見逃さなかった。

 

 その様子に、ジョーは満足げな顔で彼女を抱き寄せる。


 


 ──俺には、その光景がどうにも引っかかって見えた。


 あれが……彼女の望む“関係”なのか?

 だが、どこか無理しているように感じたのは……気のせい、か?


 いや、気のせいであってほしい。

 そう思うのは、俺が──彼女のことを、特別に思っている証拠なのかもしれない。


 


 ……何なんだ、この感情は。


 世未が笑っている。幸せそうで、何より……そう思うのに。

 なのに、なぜこんなにも胸がざわつく?

 あの笑顔のせいか? いや、ジョーの「俺のもの」という言葉か……?



 

 無意識のうちに、俺はジョーを鋭く睨んでいた。


「お前たち、いつの間にそんな仲になったんだ?」


 ジョーは俺を見て、ニヤリと笑う。

「隊長が見てない間ッスよ♪」


 顎に手を添え、じっと思案する。

 ……ジョーのこの態度、前々から気になっていたが、どうも妙に確信めいている。


『俺のもの』


 その言葉が脳裏にこびりついて離れない。


 世未……お前、本当にそれでいいのか?


 そして、なんで俺は、彼女を抱き締めてしまったんだ……?

 世未がディーンとハグする事を認められなかったからか――?


 ……いや、それだけじゃない。

 あのとき、俺が抱いた“理由”が、自分でもまだわかっていない。


 しかし、俺は世未に嫌われるような事をしてしまったのか……?

 我ながら何をしているんだ……。



 ♦♦♦


 風がそよぎ、子供たちの笑い声が遠くに響く。

 現実の音が、思考の渦に沈んでいた俺を静かに引き戻した。


 ──任務は、進めなければならない。


「俺たちのこれからの予定なんだが、いったん火の国へ戻り、サージェの研究結果を聞きに行こうと考えている。サージェ曰く、大事な話があるようだ……。特に、世未」


 ルロンド隊長の声は落ち着いていたが、その視線は真っ直ぐ世未を捉えていた。


「は、はい!」


 少し戸惑いながらも、世未はしっかりと頷く。


「お前の火の力と、異常な回復力について、何らかの結果が出たと聞いている。その話を聞きに行こう」


「……わかりました」


 緊張した面持ちで、彼女は深く息を吸い込んだ。


「それと、ユリア。君とはここで解散だ」


「えぇ~!?なんで?」


 ユリアが口をとがらせて抗議する。


「ユリアは学校生活もあるだろうし、国をまたいでの活動は厳しいと考えるからだ」


「うーん、確かに。時間の合間を縫って手伝うことしかできないけど……」


 納得はしつつも、ユリアは視線をそらし、口元を少し膨らませた。


「短い間だったが、世話になったな」


 ルロンド隊長が軽く頭を下げると、ユリアはふっと笑って肩をすくめる。


「もう、わかったわよー。ただし、土の国に関する事だったら何だって協力するから、声かけてよね?」


「ああ、そのときは頼む」


 言葉の端に柔らかさがにじむ。ユリアも、満足げに笑みを浮かべた。


「私も、また会えるって信じてるから。次はもっと成長してるかもよ?」


 明るく微笑むその姿に、俺も思わず頷いていた。



 

(……この胸の奥に宿った“理由”。

 それが何かを知るには、もう少し時間がかかるのかもしれない)


 

 あと少しだけ、この時間が続いてくれたなら……。

 そう思うほど、別れの言葉は近づいているように感じた。

温かな仲間たちに囲まれ、世未は“帰ってきてよかった”と実感する。

ラトやジョーの言葉に戸惑いながらも、心の奥にぬくもりが芽生えていく。

ルロンドはまだ名もない想いに気づき始め、物語は次の局面へ──。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ