車止めたちの誇り
夏美はバイト先のコンビニへ、いつもより少し急ぎ足。
「おっと…セーフ!」
コンビニの入り口前、駐車場の端に並ぶ車止めにつまずいて、あやうく顔からこけそうに。
思わず両手を広げてバランスを取る。
「夏美ちゃん、下見て歩いてよね」
えっ…?
今、聞こえたのは…車止めの声?
思わず足元を見下ろすと、コンクリートの小さなかたまりたちが、微妙にズレながらこちらを見上げていた(ような気がした)。
「ごめーん…」
ペコリと頭を下げる夏美。
すると、一番端っこのちょっと欠けた車止めが、ふんっと鼻を鳴らす(ような気がした)。
「僕たちはね、コンビニの駐車場の守り隊なんだよ」
「そうそう。毎日、何十台もの車の“止まる”を支えてるの。地味だけど大事な仕事なのよ」
「ふーん…」と夏美が相槌を打つと、すかさずツッコミ。
「ふーんじゃないよ! お客さんの命だって守ってるんだぞ!」
「そうよ、もし私たちがいなかったら、建物に突っ込む車もあるかもしれないんだから!」
「あー…それは確かに」
「でもな、踏んだり蹴ったりされてんだぜ、こっちは」
「この前なんてさ、酔っ払いに“どけーっ”て蹴られてさあ。あれは痛かったな〜」
「私はね、ガム。ガムくっつけられたの。ベタベタして気持ち悪かったわよ〜」
「小学生に“跳び箱!”って飛び乗られたときもあったっけ」
文句を言いながらも、どこか誇らしげな彼ら。
「でもさ、それでもここにいなきゃって思うよな」
「そう。どんなに痛くても、ずっとここに立ってる。私たち、止まるべきところで、ちゃんと止めてるの」
「車も、気持ちもね」
誰かがポツリとつぶやくと、他の車止めたちがうなずくように静かになった。
夏美は、その小さな“守り隊”たちに、ほんの少し頭を下げた。
「ありがとう。今日もよろしくね」
そして、何事もなかったようにコンビニのドアを開け、バイトの一日が始まる。
その背中を見送るように、車止めたちは静かにそこに並び続けていた。
何も言わず、でも確かに、今日も誰かの「止まる」を支えている。
駐車場の片隅に、いつも変わらずそこにいる車止めたち。
つい足元の存在を忘れてしまうけれど、実はとっても頼れる「守り隊」。
見えないところで、誰かの安全を支えているのかな…




