わたしと制服、朝の約束
コンビニのバックヤード。
ロッカーの前で制服を取り出し、夏美はひとつ深呼吸。
シャツのボタンを留めて、最後に身だしなみをチェック。
「よしっ! 今日も頑張ろうっと」
「頑張ろうね、夏美ちゃん」
ひんやりとした生地が肌に馴染むと同時に、聞き慣れた声が心に響く。
「おはよう、制服さん。今日もよろしくね」
「こちらこそ。昨日よりちょっと寝不足気味かな?」
「えっ、わかる? 夜中にドラマの再放送見ちゃってさ〜」
「まったく、また“ちょっとだけ”って言って全部見ちゃったんでしょ」
「図星すぎるんだけど…」
「でも、眠たくてもちゃんと笑顔作って出勤してくれるから、私たち制服は本当に誇らしいのよ」
「そんなふうに言ってくれるの、制服さんくらいだよ」
「当たり前でしょ、私、夏美ちゃんのいちばんの応援団だもん」
夏美は鏡の前でくるっと回って、シャツの裾を整える。
「どう? 今日の着こなし、バッチリ?」
「うん、完璧。今日の夏美ちゃんは“できる店員さん”って感じ」
「じゃあ、ちょっとくらいレジでミスしても平気かな?」
「そこはちゃんと集中して。私たちも一緒に頑張るから!」
「はいはい、わかってますって」
制服の声は、時にお姉さんのようで、時に親友のよう。
一緒に過ごしてきた日々が、なんとなく頼もしく思えてくる。
「そういえばさ、私が初めてこの制服着た日、覚えてる?」
「もちろん。緊張して、ボタンをひとつずつ確認してたでしょ。袖もなんかぎこちなくて」
「うわ〜やめて、恥ずかしい! でも、あの日の私、ちゃんとここまで来れたよね」
「うん。成長したよ、すごく。毎日、お客さんの“ありがとう”を積み重ねてきたからね」
「ありがと、制服さん。これからも、よろしくね」
「ずっと一緒だよ。夏美ちゃんの頑張りを、今日もちゃんと受け止めるからね」
夏美は鏡の中の自分に軽くウインクして、足元をそろえる。
「よし、いってきます!」
「いってらっしゃい。いちばん素敵な店員さん!」
制服はぴたりと肌になじみながら、そっと背中を押してくれているようだった。
制服はただの衣類じゃなくて、背筋を伸ばしてくれる“相棒”のような存在。
夏美にとって、それは毎日の小さなスイッチであり、見えないエールのようなもの。
今日もまた、制服と心を通わせながら、優しい一日が始まるかな…




