赤レンジャーと、じいじの約束
夏美がレジカウンターに立っていると、
小さな男の子と、その手を引いたおじいちゃんがやってきた。
男の子は、つぶらな瞳で夏美を見上げながら、おもちゃつきのお菓子を差し出す。
「これください」
「はーい、ありがとうね」
ピッ。
バーコードを読み取り、シールを貼ってそっと手渡す。
「じいじ、ありがとう」
その一言に、おじいちゃんが目尻を下げて、やさしくうなずいた。
———
(…かわいいなぁ)
夏美はレジの手を動かしながら、ふわりと妄想の世界へ入っていった。
———
朝、カーテンを開けた男の子が言う。
「じいじ、今日はなにして遊ぶ?」
「そうだな〜、天気がいいし…よし、公園に行こうか」
「やった〜!」
お気に入りの帽子をかぶって、小さなリュックを背負って出発。
公園までは、じいじと手をつないで歩く。
途中で見かけたアリをじっと見つめたり、落ち葉を拾ったり。
時間がゆっくり流れていく。
公園では、ブランコを背中からそっと押してもらって、
「もっと高く〜!」と笑い声が弾む。
すべり台では、「じいじもすべって!」と言われ、
ええいと覚悟を決めて一緒に滑るじいじ。
ズボンがちょっと汚れたけど、孫の笑顔がすべてを帳消しにした。
「じいじ、ちょっと疲れた」
「じゃあ、ちょっとひと休みしような」
ベンチでお茶を飲みながら、空を見上げるふたり。
「ねえ、じいじ」
「ん?」
「ボク、赤レンジャーのお菓子がほしいの」
「そうかそうか。じゃあ、帰りに買いに行こうな」
———
そして今、コンビニに来て、
「これください」と差し出す小さな手。
渡されたお菓子を胸にぎゅっと抱きしめながら、
「じいじ、ありがとう」と嬉しそうに言う男の子。
「たいせつにするんだぞ」
じいじの手が、そっと頭を撫でる。
(きっと、帰ったら赤レンジャーのシールを貼って、
中に入っているカードをじいじに見せて…)
(「ボク、これがいちばん好きなんだ〜!」なんて言いながら、ソファの上で飛び跳ねてるのかも)
そんな妄想をしているうちに、ふたりはレジを離れていった。
男の子はピョコピョコと歩き、おじいちゃんはゆっくりとその隣を歩いていく。
夏美は、お菓子売り場をふと見て、
「赤レンジャーのお菓子、あと2個かぁ」とつぶやく。
そしてもう一度、入り口のドアに目をやる。
外はぽかぽかとした春の日差し。
あたたかな時間が、コンビニの片隅に、確かにあった。
それは現実と妄想がまじりあった、
夏美だけの、やさしい物語だった。
コンビニで交わされる何気ないやりとりの中に、
こんな物語が隠れていたらいいな…と、夏美の妄想はふくらみます。
小さな手、大きな手。
その間にある「ありがとう」が、とてもあたたかく感じられました。




