ガードウーマン帽子、ただいま見守り中
夏美がバイトへ向かう朝。
玄関を出た瞬間、まぶしい光が夏美に降り注いできた。
「うわっ、今日はかなり晴れてる…」
空は雲ひとつなく、まさに絵に描いたような青。太陽が真上から、じりじりとした光を惜しみなく降らせていた。
「こりゃ焼けそう…」
そうつぶやいた夏美は、棚からつばの広い帽子を手に取る。
少しヨレかけたリボンを整え、軽く頭にのせる。
そして、くいっと深めにかぶった。
自転車にまたがり、ペダルをこぐ。
顔に風を受けながら、ふと、頭の中に静かな声が響いた。
「今日もかぶってくれて、ありがとう」
「……え?」
「私は、あなたの帽子。いつもあなたの頭の上で、静かに見守ってるの」
夏美は少しだけ笑って、空を見上げた。
「帽子って、やっぱりしゃべったりするんだね。なんか不思議だけど、うれしいかも」
「うん、今日は特別に。ねぇ夏美ちゃん、今日は日差しがとても強いの。紫外線もたっぷり降りてきてる。
あなたのお肌はとてもきれいだから、少しでもそのままでいてほしくて……だから、私はそばにいるの」
「ありがとう。でも……太陽って元気になるじゃない?日焼けもちょっとくらいなら、まぁいいかなって思ってたんだよね」
「その気持ちも、すごくわかるよ。太陽の光って、心まであったかくしてくれるものね。
でもね、紫外線って、目に見えない分だけ油断しやすいの。あとになって、気づいた時にはもう…ってこともあるから」
「うん……たしかに。シミとか、気づいたら増えてるしね」
「そう。でもそれを“怖い”と思ってほしいわけじゃないの。
私はただ、あなたがこれから先も、自分のことを好きでいられるように、小さな影を届けたいだけなの。
あなたの頬に、そっと影を落とすだけで、守れるものがあるのなら…って、いつも思ってる」
夏美は、思わずそっと帽子のつばに触れた。
自転車をこぎながら、心が少しだけあたたかくなるのを感じた。
「帽子さん、じゃなくて…」
「ふふっ、“ガードウーマン帽子”よ。強くて、優しくて、そばにいる存在。そんなふうに思ってもらえたらうれしいな」
「うん。そう思う。なんか、頼もしいお姉さんみたい」
「ありがとう、夏美ちゃん。今日も一日、あなたのそばで静かに見守ってるから。安心して、前を向いてね」
帽子のつばが、風に合わせてふわりと揺れる。
その影は、まるで優しい手のひらのように、夏美の頬と額をやさしく包んだ。
太陽がまぶしい朝の道。
けれど夏美の足取りは軽く、心には、そっと寄り添ってくれる声が、まだ残っていた。
何気なくかぶる帽子にも、やさしい想いがこもっていたら…。
強くて静かな“ガードウーマン帽子”が、今日もあなたのそばで、日差しからそっと守ってくれているかもしれません。
気づかれなくてもいい。けれど、ちゃんと見てる――そんな存在がいるって、なんだか心強いですね。




