洗濯機おばちゃん、今日も全力回転
「お母さん、洗剤ってどのくらい入れるんだっけ?」
「液体洗剤を2杯分よ」
「ありがとう…って…」
そのとき、不意に背後から声が――
「夏美ちゃん、洗剤の量くらい、覚えてちょうだいな!」
「えっ…?」
振り返ると、そこには堂々と構えるドラム式の洗濯機。
丸みを帯びたボディに、どっしりとした存在感。
中からは、しわがれたけれど力強い声が響いてくる。
「私はねぇ、この家の“洗いの母”みたいなもんなのよ」
「お父さんの汗まみれのワイシャツも、夏美ちゃんの靴下も、お母さんのエプロンだって――みんな、ぐるんぐるんしてキレイにしてるの!」
ぐるぐるぐるぐる…
洗濯機のドアの奥で、早速洗濯物が回り始めた。
「ねえ、私が回ってる間にさ、ちょっと聞いてくれる?」
「え、なに?」
「この前のあなたが転んで帰ってきた日ね、あなたのTシャツの泥汚れ、あれ結構手強かったのよ〜。でも私、ゴシゴシしてね、やり遂げたわ!夏美ちゃんに綺麗になったTシャツを着て欲しくて…」
「ありがとう!洗濯機おばちゃん…」
「どういたしまして!」
ごぉおおん、と音を立ててさらに回転する洗濯機。
「でもね、ひとつだけお願いがあるの」
「なあに?」
「ポケットのティッシュだけは、絶対に出しておいて!!」
「ひゃ、ごめんなさい…」
「この前なんか、白いカスが服じゅうに散って、私、泣きたくなったんだから〜!」
「以後、気をつけます…!」
しばらくして、洗濯終了のピーピー音が鳴った。
「ふぅ…今日もいい仕事をしたわ」
「じゃあ夏美ちゃん、干すのもよろしくね!私は洗う専門だから」
夏美は笑って頷いた。
「はーい。おばちゃんのぶんまで、ちゃんとシワを伸ばして干すね」
窓から差し込む光の中で、洗い立てのタオルがふわりと揺れる。
その香りの中に、ちょっぴり“おばちゃんの愛情”を感じた気がした。
家族の毎日を、音も力も惜しまず支える洗濯機おばちゃん。
彼女のぐるぐるには、ただの洗浄力じゃなくて、ちょっとした愛情も混ざっているのかも…




