表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なつみの、ひとりごと日和  作者: ひまわり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
32/68

枕さんのやさしい夜

お風呂であたたまった夏美は、ぽかぽかのままベッドに滑り込んだ。ふわふわのお布団に包まれながら、大きく息を吐く。


「今日も一日お疲れ様、私…」


すると、耳元にふんわりとした声が届いた。


「お疲れ様、夏美ちゃん。」


「……えっ?」


「私よ。いつもあなたの頭の下にいる、枕。」


「ま、枕がしゃべった…?」


「ふふ。驚かないで。私はずっとここにいたわ。夏美ちゃんが笑った日も、落ち込んだ日も、どんな夜も。」


「そっか…いつも一緒だったんだね。」


「ええ。あのときもよ。覚えてる? 熱が出て、鼻もつまって、咳が止まらなかった夜。あなたはしんどそうで、何度も寝返りをうってた。私はそのたび、そっと形を変えて、あなたの首を少しでも楽にしてあげようとしてたの。」


「…あったね。あの夜、母が何度もお水を持ってきてくれて…ありがとう、枕さんも。」


「それから、あの夜も。初めて失恋して泣きじゃくっていたとき…私は何も言えなかったけど、あなたの涙がぽたぽたと私に落ちてきて、私はそのまま受けとめたわ。『苦しい』って、小さな声で言っていたあなたの気持ち、私はちゃんとわかってた。」


「……うん、あのときは、正直、生きてるのがつらかった。でも、朝起きたら、少しだけ心が軽くなってて…」


「それは、あなたが眠れたからよ。眠るって、不思議な力があるの。心の中の嵐を、少しずつ静かにしてくれる。私はただ、そのお手伝いをしているだけ。」


夏美は、目を閉じたまま、にっこりと微笑んだ。


「今日も、安心して眠れそう。」


「ええ。私はいつでも、あなたの眠りを支える存在。頭の重さも、心の重さも、全部私に預けて。」


部屋の灯りが消え、夜の静けさがやさしく広がっていく。


そして、夏美の呼吸が穏やかに整ったころ──


枕は、そっとその形を整え直しながら、やさしくささやいた。


「おやすみなさい、夏美ちゃん。どんな朝も、あなたが前を向けるように。私はいつでもここで、待ってるからね。」

風邪でつらい夜も、失恋で涙した夜も、枕さんは変わらずそこにいて、ただ静かに受けとめてくれる存在。

目には見えないけれど、そういうやさしさに包まれて眠れる夜は、きっと少しだけ強くなれる夜なのだと…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ