表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なつみの、ひとりごと日和  作者: ひまわり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/68

トマト村から届いた甘い贈り物

「今日はね、美味しそうなトマトがあったの。何もつけずに、そのまま食べてみて」


夕食のテーブルに並んだ赤いトマト。

まあるくて、つやつやで、どこかうれしそうに笑っているように見える。


夏美はひとくち、パクリ。


「……美味しい〜! あま〜い!」


その瞬間、夏美の頭の中でトマトの物語がはじまった。


——


「甘いでしょう、私」

赤く色づいたトマトが、にこっと笑った。


「私ね、山のふもとの畑で育ったの。昼はぽかぽかの太陽がやさしく照らしてくれて、夜はお月さまがそっと見守ってくれてたのよ」


「へぇ〜、気持ちよさそう」


「うん、とっても。でもね、毎日楽しいだけじゃなかったの」


トマトちゃんは、少し誇らしげに話し始めた。


「雨が少ない時期は、おじさんが一つひとつの苗に話しかけながら、必要なだけのお水をあげてくれたの。“がんばれ、甘くなれ”って」


「話しかけてたの?」


「そうよ。おじさんの声、あったかくてね、聞いてるだけで元気が出るの。

 土も、風も、虫たちも、みんなで支え合ってたのよ。カエルの子たちがいつも応援してくれて、ミミズくんが土をふかふかにしてくれたの」


「まるで、トマト村みたいだね」


「そうそう。みんな仲良しのトマト村。

 でもね、ある日、強い風が吹いたの。葉っぱがちぎれそうになって、私も揺れて揺れて、怖くて泣いちゃったの」


「大丈夫だったの?」


「うん。おじさんが、すぐに支柱を立ててくれて、“大丈夫だよ”って手でそっと包んでくれたの。あのときのぬくもり、今でも覚えてる」


トマトちゃんは、ちょっと照れたように顔を赤く染めた。


「だから私は、がんばって甘くなったの。あなたに美味しいって言ってもらえるように、ずっとずっと楽しみにしてたのよ」


——


ふたくち目をゆっくり味わいながら、夏美はつぶやく。


「……ありがとう、トマトちゃん」


母がうれしそうに笑った。


「おいしい? よかった。あなたが喜ぶ顔が見たかったの」


トマトに詰まった、太陽の光と、大地の恵みと、たくさんの“やさしさ”。

それが今、夏美の食卓にある。


心まで満たされる気がして、夏美はそっと目を閉じた。


農家のおじさんや自然に守られて育ったトマトちゃん。

その一口には、太陽や風、土のぬくもりと、人のやさしさがぎゅっと詰まっています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ