キラリと光る、優等生ATM
夏美がレジカウンターに立っていると、ATMの前で誰かが操作しているのが見えた。
音もなく黙々と画面に向かっているその姿に、夏美はふと興味をひかれる。
(あの人、お金を下ろしてるのかな?それともチャージかな?)
そんなことを考えた瞬間、いつもの妄想スイッチがカチリと入った。
――ATM物語。
「私はATM。Automated Teller Machine。
だが、ただの“機械”とは呼ばれたくない」
銀色のボディが自信に満ちて光っている。
その中央には、四角いメガネをかけた、きりりとした表情のATMがいた。
画面の中で、背筋をピンと伸ばしながら語り始めた。
「お金の出し入れだけでなく、PayPayのチャージ、公共料金の支払い、振込……僕は、できるヤツなのだよ」
(キラリとメガネが光る)
「へぇ…すごいですね」と、妄想内の夏美がぽつりと呟く。
「それに比べて君は――アナログ派。手書きのメモ、現金払い、口座残高は通帳で確認。君とはきっと、あまり縁がないね?」
ちょっとだけ挑発的に、ATMは笑う。
「たしかに…私、あなたをあんまり使ったこと、ないかも」
夏美は恥ずかしそうにうつむく。
「えっ…なんと!」
ATMの画面が一瞬、ピカッと明滅する。
「君はこのコンビニで働いていながら、僕の実力を知らないなんて…そんな…」
がっくりと、画面の中のATMが肩を落とした(ように見えた)。
でも、すぐに顔を上げ、再び誇らしげな表情を浮かべる。
「でもね、君にこそ知ってほしい。
僕は、日々頑張る人たちの“そっと役に立つ存在”なんだ。
給料日、君がスマホにチャージしたいときも、
誰かに大事なお金を届けたいときも、
僕は、ここで待っているよ」
再びメガネがキラリと光る。
夏美は、その輝きがちょっとだけまぶしく感じた。
――妄想が終わり、現実に戻ると、ATMは静かに画面を初期画面に戻していた。
ただそこに立っているだけなのに、なんだか誇らしげに見えるのは気のせいだろうか。
(…今度、チャージ、してみようかな)
小さくつぶやきながら、夏美はレジ袋に商品を丁寧に詰めて、
次のお客さんに「ありがとうございました」と微笑んだ。
ATMの向こうでは、機械の奥で小さな“ガッツポーズ”があった…かもしれない。
ただのお金の出し入れ機…なんて思っていたら大間違い。
今日もレジ横で、メガネを光らせながら密かに誇りを語る優等生が…




