第13話 エーゼストリアの憂鬱(後編)
エーゼストリアを救うにしても、金策は必要だよな。
俺は、裏宇宙圏で金策に励むも、なかなか上手く行かない。ジルデ帝国領には関税が大きくかかる。せっかくエーゼストリア領の星で仕入れをしても、それがエーゼストリア領の遠くの星ではないと旨味が少ない。
――これには、困った。
エーゼストリア領の星は徐々に解放しているとはいえ、このままではジリ貧だ。
俺は悩んだ挙げ句に、エーゼストリア領から一度表宇宙へ飛んでみたらどうかと品物を積んで航行中だ。
表宇宙と裏宇宙の境を通り抜けると、すでに同盟の商船があちこちに飛んでいる。
交易圏が拡大していると思えた。同盟の勢力圏が広がっている。
俺は、そのまま火星を目指した。
火星は相変わらず俺の投資した資金によって、同盟の勢力圏だ。
俺はエーゼストリア領で仕入れた品を火星の交易ステーションで並べてみる。しかし値段はそこまで変わらない。やっぱり駄目なのか? 俺は頭を抱えた。ところが、交易ステーションで思わぬことを聞いた。
「同盟の星なら、高く売れるでしょう」
その言葉を俺は信じた。ポルックスで品物を売ってみる。価格は2.5倍以上の価格で売れた。どうして?
俺はじっくりと考えてみた。そうだ、火星はエーゼストリア領の資金で動いている。どこまで遠かろうが、同じレートで取引することになる。では、同盟領ならどうか。
同盟とエーゼストリアではレートがかなり違うと見た。
俺は、このことに気づくと、せっせとエーゼストリアと同盟領の交易を開始した。
*
【商人スレ 商人プレイヤーの茶会 Part.12】
1.名無しの商人たち
なんか同盟領、物価上がっているんだけど。
2.名無しの商人たち
気づいた。でも好景気だからじゃない?
3.名無しの商人たち
いやそれにしても、ここんところの物価の上がり方はおかしいって。
4.名無しの商人たち
星々の投資額も高止まりしてる。このまま行くと、どこの勢力も手を出せない。運営の介入が必要になる。
5.名無しの商人たち
誰が何の目的で。商人プレイに逆風なんだが。
6.名無しの商人たち
ほんそれ。帝国でも連合相手でもそれなりに儲からないときつい。
7.名無しの商人たち
強大なマネーがどこから来ているか、なんだけどさ。前にどこかのスレで、第四の経済圏の話あったじゃん?
8.名無しの商人たち
あった、あった。でも噂にすぎないでしょ?
9.名無しの商人たち
第四マネーが同盟のマネーを駆逐するんじゃないかって思うんだけど。
10.名無しの商人たち
いや、そんなことありえないでしょ。お茶でも飲んで。
11.名無しの商人たち
同盟経済の信用ガタ落ちになるってこと?
12.名無しの商人たち
それは、帝国と連合側は嬉しいんじゃない?
13.名無しの商人たち
いや、これは……、由々しき事態ですよ。
14.名無しの商人たち
その第四の経済圏のほうが素晴らしいってなったら?
15.名無しの商人たち
商人たちのディストピアが来るわよ。
16.名無しの商人たち
……。
17.名無しの商人たち
でっかい商会は何してるの?
18.名無しの商人たち
いや、もう動いていると思っていいでしょう。
19.名無しの商人たち
ファウマン商会の人間です。
20.名無しの商人たち
本物?
*
たったひとりの交易業がここまで成功して、エーゼストリアの国力が上がっているのは、正直驚いた。
裏宇宙産の品物はとくによく売れる。
いちど生産まで俺の支配下まで置くべきか。
俺は火星の交易ステーションにいちど停泊して、同盟領へ入る。
いちばん遠い同盟領は、主星だが、いろいろと感づかれるのはまずいので、シリウスやカペラで取引をする。
シリウスやカペラで取引するのは、中央経済ではあまりに目立ちすぎるからだ。少しずつ移動しながら大量に買い付けをする。
数回、中央で取引をしたら何かをしたことがモロバレだった。正直、こっそり進めたいし、同盟には迷惑かけたくない気もするんだ。
裏宇宙でのエーゼストリア領は、着実に回復して交易ルートや商人が増えた。
俺はすこしだけ安心したが、手を緩めることはなかった。
同盟領の市場は、あきらかに俺の介入によって異常な状況に突入していた。俺は魔王なのかもしれないなとこっそり思った。
要塞戦のエキスパートでかつ市場の革命児、二つ名がつきすぎて怖いな。
――ぜったいによく思ってないやつだっているだろうし。
俺は裏宇宙で航行し始めた商船を眺めた。商船は大小さまざまで、星の礎を確かに作っていた。
今回は商船の護衛だった。要塞は現れず一安心した。
表宇宙へ戻る途中で、珍しく海賊に囲まれた。
あっさり敵陣を崩したところで、別の商船が近づいてくる。
通信回線がオープンになった。
「ライデンさま、ですね?」
名前を知られている。誰だ?
「ファウマン商会のライアン・シューです」




