第9話【掲示板回】火星、買います。
ジェイナと別れ、ふたたび表宇宙へ飛ぶ。
この大金どうする?
俺は商人プレイはしたことないけれど、GOBO内では星々はマネーゲームで支配権を獲得できるらしい。
同盟の支配権の及ばない星を買うか? いや、あんまり大それたことはできないだろ。
俺は悩んだ末、火星の宇宙港に来ていた。ラウンジで入港手続きをすると、衛星のフォボスが孤独に見える。
マネーゲームも何もやったことがなかった。どうしたらいいの?
「火星、買います」ってどこで言えばいいの?
俺はあれこれ調べて、投資窓口を探し出した。
窓口っていうか、これ銀行? よく分からないなりに、行員に尋ねる。
「あの、火星を買いたいんですが……」
行員の目が丸くなる。たしかにその気持ちはわかる。わかるよ。いきなり来て支配権買うって頭おかしいもんな。
「どのくらいの資産をお持ちで……」
「これくらい?」
俺は五本の指を立てた。
「50000?」と行員が首を傾げる。
「――50000兆です」
行員の顔つきがさっと変わる。真面目な顔だ。
「すこしお待ちください……」
足早に行員が奥に消えて、一息つく。
星って買えるんだな。
*
【商人スレ。集まれ商人プレイヤーPart.9】
1名無しの商人たち
これってなにが起こっているの? 同盟軍さん。
2名無しの商人たち
わかるように解説して。同盟!
3名無しの商人たち
(え、え、え…… )
4名無しの商人たち
いや火星が同盟の手に渡ったってことでしょ。冷静になれ。
5名無しの商人たち
火星は、連合・帝国も多額の資金を出資しているんだよ、分かってる?
6名無しの商人たち
同盟の勢力が止まらないし、火星はワインがあるからなぁ。
7名無しの商人たち
商業ルート確立されたら、やばいどころじゃない。
8名無しの商人たち
帝国側、連合側も打つ手を変えてきそう。
9名無しの商人たち
というより、主星と火星の行き来、海賊が怖すぎる。
10名無しの商人たち
ほんそれ。
11名無しの商人たち
火星→ポルックスとか小遣い稼ぎになるから。多少武装に金出してもいいかも
12名無しの商人たち
デカい商会の出番だ!
13名無しの商人たち
で、けっきょく同盟の誰が火星の投資戦争に勝ったわけ?
14名無しの商人たち
同盟も一枚岩じゃないからね。
15名無しの商人たち
気になったの、そこ。いきなり火星クラスの惑星を投資で落とせるプレイヤーがいたら、ランキングに載ってるやろ?
16名無しの商人たち
それが……
17名無しの商人たち
……何よ。
18名無しの商人たち
これだけの資金力を持ちながら、沈没もしてないんだ。投資額トップランカークラスのプレイヤーなはずなんだけどランキングにすら載ってないの……なにこれ。
19名無しの商人たち
もしかして通貨が違うとか?
20名無しの商人たち
第四の経済圏キター。
21名無しの商人たち
それってバグかなにかじゃない?
*
俺は、火星のフォボスが気持ちよさそうに浮かんでいるのを眺めている。
火星が同盟の支配下に置かれたことをきっかけに勢力図は塗り変わった。火星と主星の往復航行に旨味を出せる商人と、それを護衛する任務で多額の資金を得て武力を伸ばす軍人。さらに往復航行中の海賊掃討作戦など、宇宙は喧噪のさなかにあった。
俺はというと、火星のラウンジでコーヒーを啜っていた。
オリンポス山は標高があり、コーヒーの名産地として名高い。火星の農業は独特の進化をした。
ドーム状のプラントはいわば温室効果を生む人工の巨大ビニールハウスだし、品種改良にも成功していると聞く。
また、巨大ビニールハウスで育てられるワインは、極上のメルローだ。
俺もまた、残った資金でワインを買いあさり、主星へ航行することにした。ひさしぶりの主星だ。




