第10話 帝国の新型要塞と配信の切り忘れ
主星の宇宙港。きょうはやたらと発艦が多いな、何事だ?
俺はぼっちなので、掲示板をちらっと覗いた。
どうやらレグルス要塞を攻撃しに行った若手艦隊が全滅したらしい。それも一つや二つの艦隊じゃない。
数にして16。そこそこの数だ。
レグルスなんて小要塞を攻撃しても仕方ない気がするが、それでも全滅か……。胸の奥がどんより重くなる。
俺は、マップを見る。裏宇宙から帰ってきてから、表宇宙の要塞にはほとんど手をつけていない。
何でかと言えば、目立つ過ぎるから。悪目立ちしても仕方ない。
たとえば、レグルス要塞を味見して、硬そうなら、こっそりプレイできるかも。
淡い期待をもって俺はレグルスへ飛んだ。
*
レグルスは、硬いというより大きかった。
――帝国が新たに開発した要塞?
俺は、様子を伺った。これまでの辺境要塞にしては大きすぎる。
倍? いや、3倍はある。たぶん反重力装置の開発にブレイクスルーがあったか?
帝国の技術力の高さを思い知るな。
キュルルが俺を見て、きゅーと鳴いた。思い起こせば、キュルルだって帝国の作った人工生物だ。侮ってはいけない。
攻撃を仕掛けようと単独で乗り込むことも考えたが、分が悪い気がした。かといってこのまま見過ごすわけにもいかず、ムービークリップを撮影して掲示板に貼ってみる。反応を見て、同盟内で動きがあれば、要塞をスルーしてもいいだろう。
*
シェンラオ同盟掲示板
SIN:レグルス要塞? これが?
リーシェン:デカすぎない?
イオ:帝国やべぇ。
フブキ:これ知ってます。知り合いが要塞戦に行ってやられたって言ってました。
SIN:これ匿名プレイヤーだけど、生き残りが貼ってるってこと?
*
プレイヤーたちもレグルス要塞の実情を知らない人が多そう。反応を見る限り、傍観者でいる様子だ。いまから配信で「ぶち壊しまーす★」とか言えないけど。
――さて、要塞戦をやるか……
俺は、火星で得た資金で武器は潤沢に揃えていた。着々と進めていこうか。
進軍をはじめる。初手は、かるくビームのレベル3くらいで様子を見よう。
ビームが飛んでいくと、レグルス要塞はビームを弾いた。
何? バリアとか、初めて見るな。すこし驚いたぞ。
レーザー兵装は特に効果が見込めないとすると、誘導弾も駄目かも。艦載機で接近して、弱点をつくか。
俺は、艦載機ファントムを発艦させる。鋭く矢のように飛んでいくファントムがレグルス要塞を掠める。
ファントムの影が歪な軌道を描く。
ファントムの一機が撃ち落とされたことに衝撃が走る。
俺は唇を舐めた。ほほぅ、やるじゃん。こうでなくっちゃ。要塞戦の血が騒ぐ。
*
そのころ、敗走している若手艦隊がレグルス要塞を観測していた。
「交戦している艦隊1です。どうしましょう? 大尉」
「放っておけ。俺たちでどうにかなるものじゃない、とにかく情報を主星に持ち帰るんだ」
まさか若手艦隊も掲示板にでかでかとムービーを貼っている輩がいようとは思っていなかっただろう。
*
艦載機が一機、二機と落とされる。
この要塞、やるな。
もしかして、これを機にチームプレイを始めないといけない。もしかして、もしかする?
俺は、ドキドキしながら、艦隊に命令を下す。
最大出力のレーザー。これで駄目なら、要塞は撃ち落とせない。
――バリアが弾け飛ぶ。
裏宇宙ですでに射撃性能はLv.500に到達していたとは言え、こんなんチート要塞だろ。
俺は、内心で文句を言いながら誘導弾を飛ばす。バリアが強かった分、要塞自体はそれほど硬くない。
宇宙船で追撃をかける。止まらない猛攻だ。要塞の耐久がみるみるうちに落ちていく。
よし、終わりだ!
レグルス要塞が沈んでいく。我ながら良い仕事したな……と思って、気づけばカメラマークがオンになっていた。
――は?
いまの映像、配信切り忘れている?
掲示板に、レグルス要塞撃沈の様子がしっかり中継されていた。
*
シェンラオ同盟掲示板
イオ:このプレイ映像、リアルタイム?
SIN:というより、しっかり落とせてるじゃん、誰これ。というか何これ。
リーシェン:レグルス要塞、壊しちゃいました。
フブキ:このプレイスタイル、どこかで見た気がします。なんだっけ。
イオ:でも、名のあるランカーの映像でしょ、ぜったい。
フブキ:思い出しました、あのときの……
*
ライデンコールが始まると大変なので、掲示板から早々に離脱した。
レグルス要塞からドロップしたのは、【新型機動艦の設計図】だった。この設計図、レシピを見ると、かなり開発を頑張んないといけないなぁ。
研究開発の開放自体サボってたし、これを機にイオンエンジンから作り直すか。
俺は、レグルス宙域から離脱を始めた。
近くにはすでに帝国艦隊が揃いつつあった。艦隊戦は得意じゃないから逃げるが勝ちだ。
俺が若手なら勇み足になってるところだ。
ぼっちプレイの大原則は、慎重に、着々に、だ。




