037 甘々でラブラブなストーリー
魔王を倒して少女に変化していた元男勇者のドタバタときどきラブコメディー
「ハァ、こんなとこまで沈んじゃっていたのかい。そりゃまあしかたがないけどね。まったく、サルベージだってらくな仕事じゃないんだよ。こりゃよっぽどの刺激を与えないと、浮上も難しいとこだろうさ。さてとそうなると、どんなお話にしておこうかね」
☆
☆
☆
ドドドーーーン
ガラッ
ガラガラ
ガラガラッ
少し遠くの方で、建物が崩れている大きな音が聞こえてきていた。
その音とそれが起こした地響きがきっかけになって、私は眠りから覚めることができたようだった。
「、、カ、大丈夫か! しっかりしろ、ハルカッ!」
誰かが私に、一生懸命に呼びかけながら私の体を揺さぶっていた。そうしたことなどから、私がこれまで意識を失っていたと、知る手掛かりを与えて貰うことができた。
記憶にはないけれど、もしかすると私は倒れることなどを起こしてしまい、その間に気絶していたのかもしれないと思った。
そうして何度も呼び掛けをする相手に、尚も体を揺さぶられているうちに、私の頭も完全に覚めてきたようだった。
「う、、、ーん、、、」
「気がついたのか? 、、、ああ、よかった」
「あ、れ? ここに、どうし、て、ジュリアンが、いる、の? 、、、それに、なんで、こんな、ことに?」
目を開いて今の状況を確認してみると、私の体はどうやらこれまでの間、ジュリアンが片膝を立てた場所に寄りかかっていたようだった。
ジュリアンは、私が意識を取り戻したことから安堵の表情を見せると、すぐ様に私の背中に回していた自分の腕を持ち上げたので、それは必然的に私の顔の位置が、ジュリアンの顔の側へと近づくことになった。
「ワワッ。、、、えっと、よくわからないけど、取り敢えずありが、、、ン! ング、グゥッ!」
顔同士が近すぎているこの状況に、とても気恥ずさを感じてしまった私は、話しかけてみることでそうした気持ちを彼に見せまいとした。
しかしその振る舞いが彼に隙きを与えることになってしまい、無防備になっていた私の唇は、彼にたやすく奪われてしまっていた。
最初に唇同士が触れた瞬間は、私はただ呆気にとられているばかりになっていた。
唇はそのまま塞がれたままで、閉じていた彼の両目がやがて見開かれて私を見つめると、その眼差しを真っ直ぐに受けとめているうちに、その瞳に宿る彼の恋焦がれる熱い愛の思いが、やがてこちらへと伝染するようになった。
そして彼の両目が再び閉じられると、彼の唇から出た舌が私の唇を割って侵入してきた。するとどうしたことか、私の全身は電気が走るような感覚が巻き起こっていた。
ンチュンチュ
ンチュンチュ
ンチュンチュ
す、すごい。彼の舌が動かされる度に、私の脳内はそのたびに反応が起こってしまう。
「はあっ、、、ふぅぅん、、、」
ようやく彼の唇が離されてみると、お互いの口の周りは唾液だらけでベトベトだった。
私の体はすでにとても熱く火照っていて、力が入らない状態になっていた。
「愛しているんだ、ハルカ。僕は君を、君だけを愛している、お前だけを愛しているんだ!」
「ふぁうぁ、、、はい、、、私も、、、、、、愛して、ます」
流れに任せている私は、自分が一体何を話しているのかさえ、正直わからなくなってしまっていた。
「ウン、ウン。良かったな、、、二人共これからは幸せになれよ」
後ろに頭を回すと、私とジュリアンの近くには一人の男性が立っていた。
そのシルエットは以前の私がよく見慣れているものだった。
半年前までは姿見の鏡で毎日見ていたもの、それはあのハルキだった。
「、、、え! あれ、なんで? いやどうしてハルキがここにいるの?!」
「何でってそりゃあ、二人の祝福に俺が駆けつけるのは当たり前のことだろう。なあジュリアン?」
「ハル兄お久しぶりですね! あ、こちらにいるのが僕の婚約者になる、いえ妻になるハルカです」
「俺でさえ嫁探しをしてるというのに。お前は手が早かったんだな。それはともかくおめでとうを言わせてもらうよ、ジュリアン! そしてハルカ!」
「ありがとう。ハル兄がいなくなってからは、僕は情けないことに、また再び孤独になっていたんだ」
ジュリアンがそう言ったときの彼の顔を見ると、私が初めてジュリアンに出会っていたころの寂しそうな顔に戻っていた。
そうだった。私は彼のこの寂しそうな顔がいつもいつも心配だった。
それで彼の顔を笑顔にしてあげたくて、、、
それからジュリアンは私の両手の上に、自分が伸ばした両手をその上に重ね置くと、
「でもこのハルカが僕の孤独を取り払ってくれたんだ。ハルカ、ありがとうね」
そう言ったジュリアンの笑顔を見ているうちに、こちらが照れ臭い気持ちになってきていた。
「い、いつの間にそんなに格好良くなっていたんだ、このお馬鹿。、、、お、男らしくて、思わずみ、見惚れちゃうじゃ、、、ない、、、か」
「僕が男らしくなったと言うのなら、それはハルカ、君のおかげになるかな。愛しているよ」
キュウウウーーーン
それまでには無かった感覚だ。なにやらお腹のあたりがとても熱くなっているぞ?
それにしてもジュリアンがなぜかとても眩しい。なぜだかとても男前に見えてしまうッ!
キュンキュン
ワワワワワァッーー
なんだか顔がとても、とてもあつーいィィィィ!
ハァ、ハァ、ハァ、ハァ。
ドックン! ドックン! ドックン!
息はとても荒くなっちゃうし、心臓は激しく打ちっぱなしにはなるし。
ああ、なんだかもう、この流れにこのままに、、、
いいかも、、、しれない、、、
「あ、、、ハルカの瞼がピクピクとしてるだよ」
「なんじゃ、まことかッ! これハルカ! これ起きんかッ!」
(あれ? 、、、この、声は)
ああそうか、、、
これでようやくわかった。
これまでのは全て、、、
夢だったんだ。
「、、、ライナ、イプロンヌ?」
私は瞼を擦り上げながら、まだ目に映らない二人にそう問いかけた。
目を開いてみるとそこはお城で、自分に与えられている個室のベットの上だったことを理解した。
そしてそのベットの脇には、ライナとイプロンヌがこちらを心配そうに覗き込んでいた。
「びっくりしたんだぞ! 湖にいたあたいたちにお城から急なお使いがきてよ、ハルっちが倒れて目覚めねえっていうからさ!」
「そうじゃぞ! 本当に、、、本当に心配をしていたのじゃ! それなのにお主は、、、ムグ、、、でもまさかこうなるとは夢にも思ってもみなくて、、、一緒にいてあげられなくて、すまんかったの」
「ごめんっちゃー!」
「すまないのじゃー!」
二人はそう言って頭を下げて謝ると、モジモジとしながら俺の返事を待っていた。
ああ、そういえばそうだった。
思い出したけど、神からのメッセージを受け取っているうちに、私は途中で倒れちゃったんだっけ。
でもさっきまで見ていた夢が強烈すぎていたので、そんなことなどはすっかりと忘れていた。
しかし思い出してみると、夢の中の俺はやたらと女々しい思考をしていたのは何故だったのだろう?
☆
☆
☆
「ーーーーーーふぅぅぅぅ。まあ、こんなもんかね」
倒れたハルカがお城に運ばれた後も、イプロンベスは祈りの塔にある先程のドーム内にあった椅子に座り続けたままだった。
これまでずっとオーブの上に翳し続けていた両腕を引っ込めると、肩がボキンボキンと強く鳴る音がした。
「あーあたしももう歳なんだね。こんなことは長時間やっていられやしないよ」
椅子の前に置かれていた、石台の上に置かれているオーブは、まだ強く光を放ち続けていた。
"なんですかあ~、あの甘々のラブラブなストーリーはぁ。エリザベスさんの体験っぽいですよね~"
その声は、光り続けているオーブから発せられていた。
「あんたがハルカの頭に負荷をかけ過ぎてくれたからね。深く落ちていたあの子の覚醒には、強烈になる印象を与えて引っ張り上げなきゃいけなかったのさ。だから、、、あたしとジリウスとの昔の思い出をちょっと利用したんだよ。ああまったくもう、これはとんだ恥晒しになっちまったもんだよ。いいかい、この貸しは高く付くからね」
"ええ~? 途中からはエリザベスさんもノリノリになって~楽しんでいませんでしたか~? ハルカの今の反応を観ていると~、せっかくに私が与えたメッセージが、どうでもよくなってるようなのですが~?"
「ふ、ふん、五月蝿いんだよ! そもそもあんたが失敗を起こさなきゃ、こんなややこしいこともしなくて済んだんだからね! いいかい、貸しは貸しだよ! 、、、それとあの子には、きちんとメッセージは送れたのかい?」
"貸しはわかっているのです~、本当に助かりました~。メッセージは途中までしかダメでした~。とゆ~か~肝心なところからは送れてなかったみたいです~"
「そんなしょげた声を出されても困るね。あたしのもっている大オーブも、さっきから悲鳴を上げちまっているから、当分は無理なんだよ。後はあんたのところにいる信者たちを使えばいいじゃないのかえ? 神落としができるのだって、たしかいたはずだろう?」
"私を落とせるのはぁ~、落としたら確実に亡くなられるご高齢の人しかいないのですぅ~。若い人は見習いさんしかいなくて~、とてもむりになるんですぅ~"
「あんたんとこのあの教団じゃ、本当に人材不足が極まれりということなのかえ? 兎にも角にも、この後のことは自分で頑張ってみるんだね」
"しくしく、、、わかりましたぁ~、、、それではぁ~"
それまでは輝きを放っていたオーブの光は、その最後の台詞を最後に輝きを失っていた。
イプロンベスはドーム室を出ると、それから自分の寝室に移動して、その疲れた体をベットの中へと潜り込ませた。
「やれやれ、こんな年でまた、、、面倒事に付き合わされるとはねぇ」
すぐに寝息をたてはじめたイプロンベスは、そう言いながら意識を手放したのだった。
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