031 謀る罪はお叱りが待ち受ける
魔王を倒して少女に変化していた元男勇者のドタバタときどきラブコメディー
「ついうっかりとしておったぞ! こちらにいるのが楽しくて、実家に連絡をとっておくのを今まですっかりと忘れておったわ。ここのところなにか頭の中に、こう引っ掛かって出てこなかったのは、実はこのことじゃったのか。フハハハハッ、これでようやくすっきりとすることができたのじゃ!」
朝の4時過ぎである。外の様子は暗かった。
いつもは朝をのんきに最後まで寝ていた幼女が、この時ばかりはふいにパチリと、そしてすっかりとご満悦になって大声での笑顔を見せていた。
イプロンヌは昨夜の晩からなにかを思い出せないと、一生懸命に頭を捻りながら眠りについていたのだった。
「ん~、、、もう、、、うるさいわよ」
エンリカはまだ微睡みの中にいて起きられずにはいたが、寝ぼけながらもツッコミをすることは忘れていなかった。
「んーふあぁ。、、、、、、じっか、、、って? あの、イプシースの森のこと?」
俺は未だ思考が満足に働いてはいなかったものの、イプロンヌの実家という言葉に好奇心が芽生えたのか、そう質問してみることにした。
「そ、そうなのじゃよ(コソ)。ほれ、わしはお主たちとついてきたのはよかったものの、まさに着の身着のままに飛び出して来たということを、ついさきほど思い出したというわけなのじゃ」
イプロンヌはキョドりながらも、俺の質問に返事を返した。
この数日間をイプロンヌはこの部屋で過ごした経験から、この部屋にいるヒエラルキーを学んでいたらしく、上位のエンリカに注意されてしまったので、声は控えめで小さくなっていた。
「へー実家に戻るの?」
「そういうことになるのかのう。まあこれまでにも、わしが四、五日は実家に帰らなくとも、不思議と心配などをされたことは一度もなかったのじゃが。とりあえず一度は帰ろうと思うのじゃ」
それはまたここへ戻ってくるつもりがあると言っているのだろう。でもこちらのほうではそれはそれで困ってしまう事情がある。
この幼女、なにしろ本当に着の身着のままで出てきたらしく、お金に関しては無頓着で宿賃から食費まで、こちらのパーティーの皆さんの善意のみで、賄ってもらっている状態なのだ。
また戻ってくると言うのなら、まずは先方の親御さんと話し合いをして、お金の解決をしてもらわなければ。自分は普段大人なのじゃ、とそう言っているわりには現実はやはり子供であった。
「私がついていっても構わないかな?」
「もちろんじゃ! 外界でのわしの初めての友になるのじゃぞ! 光栄に思ってわしに堂々とついて参れっ!!」
ボスンッ!
ドヤ顔になっていたイプロンヌの顔に、不機嫌な顔をしたエンリカが投げつけた枕がそこに命中した。
「あんたたち、話し合いをしたいのなら、この部屋から出ていって、ロビーに行ってきなさいよね!」
俺とイプロンヌは、こそこそと自分たちの布団の中へ潜り、黙って二度寝を試みることになるのであった。
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「ーーーというわけで、数日間はこちらに来られなくなるから、私の心配はしないようにしてね」
ここは俺の(仮)婚約者のジュリアン(王子)が働いている職場がある、都市庁舎の中にある都市長室であった。
問題児として広く他国にまでその名を知られている、不名誉な方面では有名人になっているジュリアンが、都市長の職務中に何かまた馬鹿を仕出かさないようにと、おっさん(ジュリオ王)からジュリアンの監督と監視を任されているのだ。
俺は毎日欠かさずにここへくることが日課となっているので、数日間ここへ来ることがしばらくはできないと、報告をしているのである。
余計なことではあるが、都市庁舎での現在の三人の力関係は、俺≫ジュリアン≫エンターたち≫ルスタの順番で成り立っていた。俺がいない間に、この二人が羽根を伸ばしすぎてなにかをやらかさないかと、心から心配になってしまう。
「用時があるのなら今のうちにね。明日には出発になるから」
ハルカは今日の分の書類に目を通したあとでそう言った。
ルスタは愛想笑いを浮かべながらも、ジュリアンになにやら合図をする。
するとジュリアンは慌てながらも、オホンと咳払いをして、
「そ、それは僕も行って構わないだろうか。なにしろハルカのことが心配になってな」
「調査依頼を出してたのを忘れたか? 道中は平和だしなにも危険ないよ」
「いや、もしかするとその、森の中で襲われるかもしれないし。僕がいたら安心だぞ」
「アハハハッ、なにを大げさな。森はイプロンヌが何とかするらしいから平気だって」
こともなげにそういって、ハルカはそれじゃ、といって都市長室を後にした。
「ジュリアン様、これはチャンスですよ! なんとかハルカ様についていって、あちらの王家とコネクションをぜひ作ってきてください!」
「ムリだ! どうお願いするのだ? そもそも僕が冒険者の資格を取ったのだって、ハルカと一緒に行動しているというそのノームと、仲良くなるためであったはずであろう。それがまだ仲良くもなっていないうちに、どうやって一緒に連れて行けとせがむのだ?」
「くっこんなに早くチャンスがくるとは! いやともかくです、イプシースの森との友好関係を結ぶことができるこの大チャンスを逃してしまうことのほうが大事です!」
「ーーほう。するとお前が社会勉強と言っていたことは嘘だったんだ?」
「当たり前だ! 僕は王子たぞ! そんな危険になる稼業をどうしてしなくてはならんのだ! 僕は安全な所からだな、、、、、、って、あれ? 、、、ハ、ハ、ハルカ?」
ジュリアン王子とルスタが話をしていた間に、どうやらハルカは二人に気取られることなく、間近まで迫っていたのであった。
「ふうん。あのおっさんが元冒険者なんだとか、慕っていた兄同然のハルキがどうとか言っていたのは、一体誰だったのかな~?」
「いや、あのですね。、、、!! もう隠すのはやめましょうジュリアン様! これこのとおりですハルカ様を謀った罪のことはどうぞお許しください! おみそれをいたしました! 貴方様を利用しようとした罪、本当に、本当にっ申し訳ありませんでした!」
ルスタは土下座をして許しを乞うていた。
「だってさ。それでジュリアン君はどうするつもりなの?」
その後に都市長室では、男が二人、床で正座を一時間させられていたという。
☆
「ぐう、、、ああなったハルカは、予想を上に行く鬼だな。、、、アチチッ」
「しかたがないですよ、ハルカ様を謀って事を進めていたことがすべてばれちゃったんですから。それもハルカ様を利用する算段で計画をしていたことでしたからね。、、、イチチチッ。しかし我々の親書を向こうに手渡してもらうことを取り付けられたのは、実にラッキーでした」
痺れ過ぎた足を擦っていたジュリアン王子に、同じように足を擦っていたルスタはそう答えた。
「しかしお前、ああいったときには、とても謝り慣れているんだな」
「へっへっへっ、女に謝ることにかけましては、それなりにかなりの自信がありますぜ。ジュリアン様に教えて差し上げますが、女が怒ったときには、男は言い訳するのはまず絶対にいけませんや。とにかくその時には、ひたすらに謝ることだけに専念しなけりゃあいけねえんです」
「ふむ。でもそんなことをすれば、相手のほうが図に乗るだけではないのか?」
「そりゃああれですよ、女というものは自分に好き好きとたくさん言われちまうとですね、どんな女であろうともです、最後には仲直りをしてくれるってわけでして。さらに男には甘えてみたいっていう女心をうまくひっぱり出してやると、後はもう陥落したも同然というやつです。ヘッヘッヘ」
「お前はそちらの方面については、本当に頼りになる男だな。、、、そ、そのだな、、、相談があるのだが。、、、年下のクセに自分の年下に見るような女、、、というか少女には、一体どうしたら上手く付き合えるのだ? 、、、あこっ、これはもちろん、あ、あれだあくまでも参考として聞いてみたいだけだからな!?」
ルスタはニタリとした笑みを浮かべ、ジュリアン王子がハルカに、かなりの脈を持っていることを知って安心をした。
「私が昔に付き合っていた女に、、、」
男同士の話は仕事をそっちのけにして定時にまで及んだ。ジュリアンは顔を真っ赤にしながら、ルスタの話を聞くのであった。
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