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029 三人の姉妹順列の結果発表

魔王を倒して少女に変化していた元男勇者のドタバタときどきラブコメディー



行きは楽しい物見遊山でイプシースの森に出かけることになったエンターたち一行はイプロンヌと出会ってしまい、彼女は彼らを気に入って共についていくと言って譲らなかった。その帰り道はついてくるイプロンヌをどうしたらよいものかと意見を出し合っていた。


やがてデイルード市へ到着したエンターの一行は、今日の報告を待っていた、都市庁舎の都市長室にいるジュリアン王子とルスタの元へと向かうことにした。市内には日中の活動に従事する人たちが忙しなく動いていて、様々な姿を見せている。




「ここが人間の町じゃとッ! 城壁も見事な作りでうちのものがただの塀のように見えるわい。中にある建物はどれも大きな建物ばかりじゃなっ! 、、、ほおほおこれは三階建てになるのか。なるほどのう、これは頑丈に作られておるな。なんと2階建て以上の物にはこのバッテンの木材が使われているではないか。とするとあれは重さを補強しとるというわけか。これはためになるのう。ふむこちらのは斜めに一本のみじゃぞ。ここに使われる木材はなんのためじゃ? ちと中側から見させてもらおうか」


「ちょっちょっと! あんた勝手に、他人の敷地の中に無断で入っていったらだめでしょうが!」


「ああっ! そんなにガチャガチャとノブを回していると、何かと思って出てきますの!」


「わあああっ!! でてこないからって叩いちゃ駄目だよ!」




デイルード市に生まれて初めて足を踏み入れたイプロンヌは、見るものすべてが興味の対象になるらしく、その対象のほうへ走って行くと、軽犯罪法に触れそうなことを次々とし始めていた。




「おいおい、本当についてきちまったじゃねえか。どうするんだよコイツ」


「こうまでついてこられたら、いまさら一人で帰れとも言えないしね」


「となると保護しておくしかないだろう。シエル、すまないけど、そちらの宿屋で預かれそうか?」


「女将さんが、六人部屋がいつも埋まらないって困ってたから~、いっそのこと部屋を交換してもらったらどうかしら~?」


「厄介者を市に預ける案がでないあたりに、このパーティーの人柄がでちゃっているのよね。まったくもう貧乏クジになるんだから」


「っとあれぇ~? この場合ってハルちゃんとライナちゃんとイプちゃんって、誰がお姉さん妹さんなのかわからないわね。これははやく決めとかないと後々でいけないわ~」


シエルの問題は、イプロンヌの受け入れ問題よりも、誰が姉か妹なのかに頭を悩ませるのであった。


☆


☆


☆




ここは都庁舎にある都市長室の部屋の中。今回はハルカの護衛隊に任された私事になるので、今回の報告に来ているのはエンター、アルフレット、サミーの三人だけが来訪していた。女性陣たちは、宿屋の配置替えをマーシャへ伝えるために早々と一足先に別れていた。




「申し訳ございませんが、もう一度、ご報告をおねがいします」


「はい、道中及び現地についてはときおり倒木などがありましたが問題は特に見つかっていません。また少なくとも魔物たちが広場の周辺で活動した形跡はないということなどはチェックしています。これで報告は終わりです」


「いえ、あの、、、コホン。、、、さきほどに言っていたその後のほうでして」


「ああ補足的なことですか? 私達は現地でノームの幼女を保護いたしました。私たちと同行をして社会見学がしたいと願い出たので、現在は女性陣の宿屋の方に泊まらせておいています」




「(ハハハハハッ! これは瓢箪から駒がでちまったか!)」




ルスタはニヤリとほくそ笑んだが、すぐに取り繕いの澄ました真顔に戻った。



「あの、まだ何か?」



エンターは2度目の報告、それも返事を待たされていたので、少し怪訝そうな顔をして見ている。




「あ、いえいえ。こちらのことですよ。お気になさらず。どうもご報告をありがとうございました」




報告をし終えた三人が扉から出ていったのを見届けると、部屋に残ったジュリアンはルスタに質問をしだした。




「ルスタ。なにかいいことを思いついた顔をしているな」


「ヘッヘッヘッ、ジュリアン様にはもうお分かりでしたか」


「お前と何年間、主従の関係を結んでいたと思っているんだ。一体どういうことなのか説明してくれ」


「それなんですがね、、、ジュリアン様はイプシースの森の件については、どれほどご存知になりますか?」


「お前から聞かされていることは、森の中には太古からの妖精族がいると言うことだけだ。それぐらいしか僕は知らないぞ」


「でしたよねえ。、、、ではこちらの方は知っていますか。私も浅学になるんですが、あの森の住人たちと人間族との間では大昔に戦争をやらかしてましてね。、、、これが一体どういうことになるのか、お分かりですか?」




すると得意顔になって、ふん、とジュリアン王子は鼻を鳴らすと、


「断交中になっていた相手が、時を越えてあちらのほうから現れてくれた、ということか?」


「流石は物分りの早いジュリアン様です! それもですよ、ただの断交相手ではないのです。軽く数百年は断交していたというイプシースの森ですよ。これがもしも、ジュリアン様の手腕で交流が可能となったら、その功績は計り知れないことが確実となりますよ」


「ほうほうそうか。功績がな、、、クックックッ、そいつは幸先がいいぞ」


「せっかく向こうから転がり込んできた幸運です。是非とも、ものとしましょう」


「、、、フン、してどのようにするのだ?」


「そのノームのガキンチョ、いえいえ、その子供を利用してですね、あちらの森へ接触出来ればよいのです。そうすると、、、」




都市長室では、二人の談合が定時を過ぎていてもなお続いていたという。


☆


☆


☆




「よかったわ~、六人部屋が誰にも使われていないから今日からでもいいって~」


「女将さんも使ってもらえるんだってあんなに大喜びしていたしね」


「ここは通りに窓がある二階なんですね。今まで借り手がいなかったのが不思議なくらいだ」


「元の宿屋では需要はあったのじゃが、いまは女性ばかりなので借りたいといったお客はいなくなったといっておったな。女性専用の宿となって使われなくなっていたとは不遇であるのじゃ」




「おおっ、イプっちがなんか小難しいことをぬかしてるべ」


「わしは大人だと言うておろうっ! 28歳なのじゃぞっ!」


「ノーム族では成人が40歳なんでしょ? 人間に合わせたらあんたはまだ10歳よ」


「おお、ならあたいが一番お姉さんになるのかもな。あと四ヶ月もしたら11歳になるだ」




イプロンヌは自分が大人だといって譲らずにいたので、六人部屋の住人たちの間ではこうした口論が起こってしまっていた。仲裁に入ったシエルはエンリカとの間で、このことについて協議することになった。




「えー、私とリカの二人での厳正なる審査の結果~ ライナちゃんが一番上のお姉さんにきまりましたあ~ イプちゃんは一番下の妹ちゃんですぅ~」


パチパチパチ


パチパチパチ


パチパチパチ


「なっ、何でじゃあ!! わしは28歳じゃぞ!! 一番年上はとうぜんわしなのじゃ!! なのに一番下とはすべて納得がいかんぞ!! どういう理屈なのじゃあ!」


「あんたの見た目がそもそもの原因なのよ! 幼女に私が歳上といわれて、はいそうですとは言えないじゃないの! それにノーム族の場合は年齢が人間のx0.375になるんだし、そうなると毎年、人間と年齢が離れてしまうのよ。だからこれはしかたがないの」




納得ができん! と騒ぎたつイプロンヌを、これから野宿をしたいのねだったらどうぞと、エンリカが畳みかけたので、これをとうとう折らせることに成功した。




「ハルちゃんは記憶喪失で保護になった発見日がお誕生日になるから、それよりも誕生日が早いライナちゃんが一番上と決まったのですぅ~」


「私が魔王城で発見されてからは、もう半年になるんだよなあ」


「最初の頃は三人だったのに今では五人。すっかりとにぎやかになっちゃったわね」




「あたいとハルカとはこれまでどおりでかまわないだよ。だから姉とか妹とか関係ねえだ」


ライナは素直な気持ちからそう思って言ったのだが、これは主に、イプロンヌに向けて上下関係を躾けているといった面があった。それをまずは10歳の三人の間でそれをやんわりと学んでもらっているのである。




「ハァ。まあライナはライナだったということよね」


「やっぱり事前に打ち合わせとかする必要があったんじゃないですか?」


「う~んでも~、ライナちゃんはそーゆー腹芸のできる子じゃないんだよぉ~」


「、、、ってハルカ。10歳の思考で察することができるなんて、やっぱりあんたが普通じゃないわよ」




エンリカの的確な突っ込みに、キョドって慌てた様子をみせるハルカだった。

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