028 地面下の住居に訪問しました
魔王を倒して少女に変化していた元男勇者のドタバタときどきラブコメディー
エンターたちの一行は任務を完遂して、昼食後にはレクリエーションを楽しむことにした。
シエルやエンリカたちは子供たちとボール遊びに興じて、交じって楽しんでいた。
ポーン
ポーン
「くあぁぁ。ちと眠くなっちまったな。少し横になってくるぜ」
「あ、ボクも休もうかな。ごめんね」
アルフレットは腕を伸ばして大きなアクビをした。サミーも適当なところで遊びを抜けた。
のどかな森のポカポカと陽気な日差しがある中で、元気な子どもたちの相手をしていたアルフレットだったが、食後の眠気には敵わなかったようで、子供たちと抜けて休むことにしたようだった。
「はい! シエルさん! あ。ごめんなさいですの!」
「ボールがそっちへいったよー」
キィ
「まかせて! 、、、はいッ!」
「おっし! そっちにいっただよ!」
キィ
「まかせなさい! それッ! あん。ドジったわ」
「あら~、変な方向にいったみたい~」
キィ
「キランッ! 妹の危機! ハァッ!」
「うっそッツ! いまの絶対に追いつけないのに追いついた、、、」
キィ
「フッ! 為せば成る! リカのボールは俺が救う!」
「お兄ちゃんキモい、、、」
「ガーーーーン!」
キィ
キィ
「、、、気のせいか、何だか木がきしんでいるような、そんな音が聞こえねえか?」
「え。、、、あ、、、かすかな音だけど、、、確かにボクにも聞こえたよ」
アルフレットは横になっていたが再び体を起こした。それからみんなに聞こえるような大きな声を出した。
「この音はどっから聞こえてきやがるんだ? 気になって眠れやしねえぞ。 オオーイ! 皆少しの間だけ静かにしてくれねえか?」
ボール遊びをしていた皆は手を止めて、何かあったのかと不安げに見ている。アルフレットは立ち上がって、近くにあった大きな礎石の上にまで来ると、そこに耳を当ててその音源の位置を探し始めた。
代々ハンターの一家に生まれ育った彼は、森の中のことなら誰よりも詳しく熟知した男だった。こうして音を探るのもお手の物のようだ。
「森の中じゃねえ、、、!、、、そっちだ!!」
指差したアルフレットは、その方角の地面を注意深く見つめ始めた。
するとそこには草むらがあり、よく観察をしてみると不自然に草が生えていなかった空間があるようだった。その草の間の地面には、隠れた木製のマンホールのような物が置かれていた。アルフレットは周囲を警戒しながらも用心深く、一歩一歩それに近づくのであった。
「お、なんだこりゃ。しっかりと内側からカンヌキがしてあるな」
マンホールは巧妙にカモフラージュされていて、一見しては分からないようになっていた。アルフレットは開けようと試みたが、蓋はしっかりと固定されていてびくともしない。
「はい、そこをどいて。、、、アンロック!! 、、、これで開くはずだわ」
こうしたことに手慣れたエンリカの唱えた呪文で、内側からかけられていた閂が音も無く外された。次にアルフレットが取っ手の部分に手を掛けて引き上げると今度は簡単に開いた。そこには地下へと続く階段が現れた。
階段はさほど深いものではなく、十数段も降りてみるとそこにドアがあることがわかった。周囲はとても丁寧な仕上げで作られていることが次第に分かるようになった。この階段の構造はとても狭くて小さく、成人している人間は入っていくことがやっとになりそうだった。
「どうやら坑道とは違うものだ。ひょっとしたら住居なのかもしれねえな」
「どうやらそのようだね。これは小人族の子供用につくられた住居っぽいよ」
「ドワーフでもないな。丘よりも山を選ぶからね。だからここにいるのは恐らく」
「「「ノームだ(ろう)(ね)」」」
ノームとは大地の妖精と呼ばれる種族で、丘がちで森の多い場所の浅い地下に住むことが多い。成人しても身長は130cmを超えることはない。
「とりあえず報告だけで済ますこともできるが、どうするかな?」
「ノームは基本はローフル(善)の奴ばかりだし、実害はねえけどな」
「訪問するにしたって、こんなに小さくて狭い階段を、大人は無理じゃないのかな」
「だったら私が見てきましょうか? 危険はなさそうですし」
「そういうことなら、僕もついていくことにするよ」
俺よりも少しだけ高い背丈のルファは、先頭に立ってやや屈んで進むことになった。
コンコンコン
「こんにちわ~」
ノーム語はわからないので、共通語で話しかけてみる。
「んごっ、、、、ZZZZZ」
ドアの中からは、寝言が聞こえてきた。
これで在宅していることは間違いなさそうだ。
「すみませーん。、、、お邪魔をさせていただきますよー」
そう言って、しばらく待ってもやはり反応がなかったので、ルファの手でドアを開けさせてもらった。
中を見ると、木製の揺り椅子に設計図のようなものを掴みながら、ぐうぐうと眠っている幼女がいた。地上で聞いた木が軋む音の出処は、どうやらこの揺り椅子の出す音だったのだろう。
部屋はとても狭くて、俺とルファとでいっぱいになっていた。
俺は入るとその幼女のちかくに進んだ。
「あのー、起きてくださーい」
俺は彼女の肩を少しだけ揺さぶってみる。
すると突然、その幼女は両手を上げて、大きな声で叫びだした!
「やったのじゃ!! 大成功じゃ~!! さすがは天才技師のわしなのじゃあっ! ほれ皆のもの、もっともっと褒めろ、褒めるのじゃ!! ウケッケッケッケッ、、、」
「び、び、びっくりしたあ、、、」
ハルカとルファは驚いた。幼女はまだ夢を見ている最中なのか、そのまま大声をだして笑い始めた。
「ケッ、、、ケッ、、、あー、、、なんだ夢か。損をしたのじゃ。、、、チェッ」
眠い目を再び閉じながら手を下げて、またも眠り始めてしまった。
俺はルファと目が合うと、今度は二人の力で揺さぶり始めた。
「あ~、、、なんじゃい。とても眠いのに。ファァ、、、」
「話しかけても大丈夫ですか?」
「昨日はわしの生涯で5061回目の失敗があったから機嫌は悪いのじゃ、、、まあ話だけは聞いてやってもよいぞぉ、、、」
うつらうつらとしながら、半目になってこちらを見ている幼女だった。
「ここを建てたのはいつごろですか?」
「建てたんじゃないわい、掘ったんじゃあッ!! 、、、まあ最近になるのじゃ」
口が悪いが律儀な幼女だった。
いま自分が怒鳴ったことでどうやら覚醒をしてくれたっぽい。
俺とルファに焦点を合わせると、ギョッとした顔になった。
「、、、、なっ! ななっ、なんじゃおまえらは! どうしてわしの住居に侵入しとるのじゃあっ!! ここはわしの、わしの家なんじゃぞ! お主らが来るところではないわぁいっ!!」
ドタン、バッタン
「おおーい、そちらの方は大丈夫なのかー?」
「こちらにまで大きな地響きがきこえてくるよ」
「まあもうしばらくしたら、静かになるんじゃねえの」
あとから聞いた話では、穴の中から聞こえてくる騒ぎの音は収まらず、音だけがよく聞こえてきたエンターさんたちは、どうしようかと迷っていたそうだ。
☆
「コホン。、、、わしはイプシールの森に住まうイプロンヌ様という者なのじゃ。将来は天才技師、それと天才発明家になる予定でもある。お主らもしかと覚えておいて損はないはずなのじゃ!」
地面の地下から出てきたのは、腰に両手を当ててふんぞり返るようにして挨拶をする幼女だった。
身長はまだ100cmあるかないかで、肌の色はやや薄めになる茶色。髪の色は黄土色で瞳の色は青糸色、長い髪は左右に分けて結ばれているツインテールになっている。
服装はセーラー襟にリボン付のピンク色のタンクトップに、フリルのプチスカートがついた黒色のかぼちゃパンツといった出で立ちをしている。まだお子様にしかみえないスタイルであった。
「かわいい~! よしよしナデナデちゃんだよ~ エヘヘ~ (イプロンヌからは子ども扱いするな!! との抗議の声がした)」
「お前さんはかなりちっちゃいなや。いったい何歳になるんだべ?」
「人間でいうなら、、、7歳ほどにしかみえないわよね」
「わしは子供ではないのだ!! ふふん聞いて驚け、なんと28歳になっておるのじゃぞ!! 一族では40歳で成人というわけじゃ!」
「成人した人は何歳なの~? ナデナデ」
「一族は40歳で成人なのじゃ。、、、おい、やめんかッ!」
「ふーん、、、人間に直してみると、一歳で0.375歳になるわけだね。すると今は10.5歳って計算になるのかな?」
( * * この世界では15歳が成人年齢になります * * )
「ていってもよ、見た目でいえばどこからどう見ても普通の幼女だしな。、、、デヘヘ。永遠の幼女キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!」
イプロンヌは幼女ではないわい! と言い張るのだが、実年齢が10.5歳ならまだ子供という意見が、皆の間ではまとまったのだった。
「それでと、、、イプロンヌは、ここに一人で住んでいたのかな?」
「ここはわし専用で使っている別宅というものなのじゃ。まあ平たく言ってしまうと、ここはわしの秘密の基地になるのじゃよ。客も入れないので小さくて構わないのじゃ。むろん本宅は森の中にあるのじゃが、そこは退屈になるばかりか刺激がとても少ないところなのじゃ。なによりもわしが発明品を作っても喜ばぬ者ばかりで、それが嫌になってのう。そこでここの秘密基地で大発明に励んでおるわけなのじゃ。ここには誰も来ることのない場所だったので、色々と試したいときには好都合になるわけでのう。またここを足がかりにして、前々から興味があった外の世界に踏み出そうとしていたところなのじゃが、、、しかしやはり外の世界は知らない世界でとても怖そうなのじゃ。これまでここにこうしていることが、今のわしができる精一杯じゃったと、そういうわけなのじゃ!」
ノームは一人で長話をするといった特徴もあった。
この幼女もその例外に漏れなかったようだ。
「おおっ、そうじゃっ! わしは今こそ外界の見聞を広めるよい機会に恵まれたというわけじゃな! お主らはどうやら害のなさそうな奴らと見える。ということで、特別にお主らに付いて行ってやろうぞ。ワッハッハッハッハッハッ! ありがたく思うのじゃぞ!」
「「「「「「「えええええっ!!」」」」」」」
こうして、旅装着に手早く着替え終えたイプロンヌは、さあ出発するぞ、と号令を出してカラカラと笑うのであった。
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