022 シルバークローバーズの結成
魔王を倒して少女に変化していた元男勇者のドタバタときどきラブコメディー
「感状。ハルカ殿、ライナ殿、ルファ殿、ルイザ殿。この度は冒険者ギルドのギルドメンバーたちの避難誘導及び人命救助に尽力されたことに、多大なる功績を残したことを表し、ここに感状を送るものとする。 デイルード市冒険者ギルド支部長カール」
ここはデイルード市にある、冒険者ギルド支部の中にある会場ルームだった。
四人の他には、先の王立キャンプ場のトレイン事件に関わった、ロバ車の番人をしていた全員(約30数名)がここに集結して参加していた。
「今回の件ではこの功績に報いるべく、4人には特別にランクポイントを与えることになった。本日からは、四名全員がランク[D]となった。これからもさらに精進してくれたまえ」
会場にいる人たちからは、惜しみのない大きな拍手がいつまでも絶えることなく送られていた。
そしてこのニュースは小さな扱いではあったが、全国紙にもニュースとして取り扱われ、こうして小さな英雄たちの名前は知れ渡ることになった。
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「うれしいけどよ、ランク[E]にはこの前になったばっかしさ? ランク[D]になったっていわれても、実感がすぐに湧いてこないだ。ルファはよ、ランク[D]とランク[E]ってどこが違うかってこととかわかるんだに?」
あの一件からの帰り道で、同じロバ車で帰った二人はすっかりと打ち解けあっているようだ。それと年齢は二歳ほど違うけど、敬語はなしってことにすることを、全員で決めていた。
「そうだね。ランク[C]になると職業が専業化(二次職)されるからわかりやすいと思うけど、ランク[D]はランク[E]とそうした意味では変化はないと思うよ。あるのは、信用度が高くなった分で選べるクエストが変わる程度のものかな。それとあと、ランク[C]の人とパーティーを組めるようになったことの方が、ハルカやライナには大きな意味があるのかもしれないね」
そうだった。俺の保護者のシエルとそのパーティーの人たちは、エンターさんを除けば全員がランク[C]なのだ。そのパーティーとは、先日にサポーターの契約を結んだばかりなのに、今ではもう、同じクエストだってできるようになっていたのだ。
「なんかこう認められちゃった? 冒険者の間でも一目は置かれるようになった、っていうことよね! やっぱり私たちには才能があるんだわ!」
「今回の昇格は棚から牡丹餅だよ、ルイザ姉さん。普通は一~ニ年を経て[D]に上がれるらしいから。とても幸運だったと思わないとね」
「そうだけど!! でもでも、それだけ私達が強運ってことじゃない! 運も実力のうちなのよ! そうだわ、私たちのチーム名を考えましょ!」
「え? チームって? この四人のこと?」
いや意味はわかるけどさ。思わず聞き返しました。ルイザは唐突に思いついたことをすぐに実行するタイプみたいだ。そして強引に事を成すタイプのようだった。
「そうよ、四人が集まったときにこの幸運が起こったのよ! まるで物語に出てくる英雄たちの出会いの場面みたいじゃない!」
「英雄なのかや? えへへへ、こそばゆいな。そったらよ、えーと、幸運だからクローバーズでいいんじゃねえか」
「そうね、、、でもクローバーズだけじゃ、なんとなく、、、あ、そうだわ! 物語の銀髪姫にあやかって、ハルカの髪の色をとって、シルバークローバーズにしましょう!」
「え? 私の髪の色? な、なんで?」
「今回のことはハルカが立役者だったじゃないの。避難誘導だってハルカの指示で始まったし、人命救助だって結局はハルカの活躍だわ! このチーム名なら世間にアピールしやすいでしょ?」
かくして、ルイザの命名によって、シルバークローバーズがここに結成されたのであった。
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かつてはこの世界を、直接治めていた十二神がいた。
その末神に当たるのが、シャイーナという神であった。
ここは地方都市シャインにある、小さな古ぼけた教会である。
シャイーナ神を崇める、シャイーナ教団の本部がここに置かれていた。
「なんですってぇ~~~!」
「リズベル様、お顔の形相が、、、」
祭司のリズベルは、自分付役の助祭司イデアからの手紙の報告に驚いていた。
そのイデアと同僚の助祭司メラニーへ寄越された封筒の中には、さきの全国紙の切り抜きが入っていたのだ。「四人の小さな英雄」と題された記事だった。
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コンコン
「メラニー、入りますよ」
中からどうぞ、と聞こえたことで、リズベルはメラニーの部屋の中に入った。
「祭司のリズベル様が自らここへ来られるとは光栄なことですわ。ひょっとしてお目当てはこれですか?」
シエルから届いた封筒を、メラニーはリズベルへ大仰に見せつけた。
「そうね、シエルから連絡があったなんて久しぶりだから。近況がわかるようなら知っておいてあげようと思ったのですわ」
「お優しいのですね、祭司様は。まあいいです、シエル様からのお手紙の内容にはきっと衝撃を受けると思いますから」
リズベルがまだ助祭司だったころには、シエルもまた助祭司であった。
この二人は、幼少時から神託を受けられる素質がある者として、教団からはいち早く期待されていた。そのリズベルにはイデアが付き人になり、シエルにはメラニーが付き人をしていたのだ。
そのシエルがいなくなってリズベルが祭司になると、リズベルとメラニーの関係はギスギスの関係になってしまったのであった。ちなみにイデアとメラニーは仲の良い親友の関係だった。
「衝撃ねえ、、、ハッ、ま、まさか、その、彼氏さんを作ったとか、そーゆー、、、はわあわっ」
「違いますよっ! あのシエル様がそのようなおぞましいものを作られるわけがありません!、、、内容は妹様についてのことでございました」
あらそう。私よりも上手くできちゃうシエルのことだからてっきりそうなのかと思い、、、、、、え、妹って?
「妹って、デイルードの病院で同室になった記憶喪失の少女を、保護者兼後見人するようになった、って以前の手紙あった、その子のことよね?」
「その子なんて言い方は失礼ですよ。この教団の次期の大看板になってくださる方なのですから。あの素晴らしいシエル様の妹様になられている、とても大幸運な方なのです。ああ、ああ、私もできたらシエル様のお側に、いつもずっといられたらいいのに、、、~~。ともかくその妹様、ハルカ様についてのお話のことなのです」
「えええええっ!! まさかっ! 10歳って聞いていたけれど、その歳で彼氏がいるのだとかいうの? それは絶対におかしいわよ!」
ロ、ロリコン退散!! NO!! 変態!! 犯罪者には神罰を!!
リズベルは思いついたありったけの呪詛を口にしていた。
「脳が腐っちゃってますね。リーズーベールー様。そっちからはいいかげんに離れていただけませんか」
「、、、コホン。それで、その、シエルの妹がどうしたというのよ?」
「はい。そのハルカ様はデイルードの近くの火山地帯においてトレインが発生した際に、30人ほどの人を避難誘導させて命を救われたそうです。これが全国紙のニュースの切り抜きです」
あら、そんなことだったの。避難誘導ね。
全国紙のニュースというなら、教団の宣伝に利用させてもらえないかしら。シエルは助祭司も降りてしまったけど、いちおうシャイーナ教団員なのだからいいわよね。
「そう。避難誘導をして人命の救助をしたニュースは、喜ばしくもうれしいものと思いますわ。妹君にはさっそくに連絡を」
「ところがそれだけじゃなかったんです。キャンプ場で逃げ遅れた人たちのために、ハルカ様が"奇跡の力"を顕現されたようなのです」
「"奇跡の力"とは大げさなことね。いったいなにがあったというの?」
"奇跡の力"とは、"神々から愛されし者"が持つ特別な力のことだ。これを持った者は多くはない。他の11教団でも多くても三人、大抵は一人いるかいないかといったところだった。
当然であったが、万年最下位になるシャイーナ教団にはそうした存在はなかった。
「ハルカ様は一台の荷馬車の周りに魔法を展開させて敵の猛攻を凌いだと、お手紙にはそう書かれていました」
「あらそんなことなの。教団の祭司クラスなら誰でもできることじゃないの。それを何で驚くことがあるの?」
「フフフフッ。敵の数が100頭以上集まっていたとしたらいかがですか。それぞれが数度に渡って波状攻撃をしても、20分以上耐え続けることができたとしたら?」
「そ、そんな、、、う、うそでしょ、、、、、、」
それが本当なら、ハルカという人物は教団の大金星確定であって、手紙の内容が事実であるならば、シャイーナ教団の未来にとって、その妹の存在は大きな意味を持つ。もしかしたら、この貧乏所帯の負け組の生活とオサラバすることだってできることになるかもしれないのだ。
いやでも、待って。
ハルカを教団の大看板に据えてしまえば、必然的にハルカという原石を発掘したシエルにも教団内ではそれ相応の地位が与えられることになるだろう。将来はひょっとして教主にだって可能なのかもしれない。
ただでさえ、以前にシエルと出世競争をしていたときでさえ、シエルと自分のスペックの差の違いに思い悩んでいたのに、大手柄を立てたシエルが相手では、今後は自分が出る芽がなくなるのではないか?
しかし悠長に事を構えていては、他の大手の教団からスカウトされてしまう可能性だってありえる。それならば、リズベルが打てる最善手は、リズベル本人がハルカを教団へ招きいれるといった実績作りになる。
メラニーはすでにリズベルが考えたことを先読みしていたようで、意地の悪い笑みを作っていた。シエルが教団に帰ってきたときには、メラニーの立場も大きく変わることだろう。
「ぐうっ、、、私はこれから、シエルとハルカのいる場所に向かいます!!」
それを聞くとメラニーは笑みをさらに濃くさせていた。しかし事は緊急を要しているので、それにツッコミをいれる余裕も今はない。こうしてリズベルは、旅支度を急いで始めることになったのである。
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