018 田舎からやってきた純朴少女
魔王を倒して少女に変化していた元男勇者のドタバタときどきラブコメディー
## 田舎から出てきた少女の視点から始まります ##
「ライナさん、あなたの体内魔力の測定が終わりました。測定値は50MPになります」
体内魔力測定を行っていた職員さんは、さらりとそう答えると、今度はあたいの後ろに並んで順番待ちをしていた、娘っ子さを呼んでいた。
いやーそっかあ。
やっぱすかー
これでもうはっきりしただ。
あたいには魔法職の素質がないってことをさ。
それは前からわかってはいたことなんだ。
あたいの村には、治療士をしてた婆様がいてさ、オドって呼ばれちゅう目に見えねえもんを感じ取れねえと、こうした仕事はできねえんだって話をよ、むかーしに聞いていたんだ。
あたいも小さいころはさ、そうゆう不思議なもんにとっても好奇心があったからよ、そのオドっちゅうもんを感じ取ろうとしたもんさ。
でも、なーんも感じとることはできなかったさ。
だから体内魔力測定器とかゆうもので、こうした結果さ聞かされたって、そりゃとっくに諦めをしちまっていたから、がっかりはしてねえよ?
あたいは小難しいことを考えるのが元々苦手な性分だし、素質があるとしたってよ、ガラにあわねえと思うしな。
順路を案内する別の職員さんが、あたいに話しかけてきた。
「あそこに見える出口を出ましたら、隣の部屋に移ってください。中へ入りましたら、そちらで体力測定を受けてくださいね」
「わかっただ。ありがとさま!」
戦士になりたいあたいは、これから受ける体力測定でどんな数値がでてくんのか、それが今からとても楽しみなんだ。
ワクワクすんな!
あたいは用さなくなっていたこの部屋から出ていこうと、早歩きさ始めていたんだ。
とその時さ!
バッキーーーィィィンッ
ひえええっ!?
い、いったい、なんの音さ?
突然に後ろからって、びっ、びっくりするでねえか!
あたいの背後からよ、器械が起こした音が、ど派手に聞こえてきたんさ。
何事かと思って振り向いたら、今の音を出したものっちゅうのが、ついさっきまであたいが使っていた器械だったんだよ。
「ものすごい勢いで振り切れたわね」
「不良品かもしれないんだよ~」
そこに、あたいの後ろに並んでいた娘っ子に付き沿っていた、お姉さんたちがそう話す会話が耳に入ってきたんだ。
二人はあたいと離れてっけどよ、あたいの耳はすっごくいいもんだから、勝手に聞こえちまうんだべ。
「この冒険者ギルドにあるもので、不良品はないはずなのですが。ハルカさんの前の方までは普通に作動していましたのに、、、」
前の方ってゆうのは、そりゃあたいのことだ。職員さんはそう言って、替えのものを取りに行ってきますと言い残して、部屋から出ていっちまった。
あたいが体内魔力測定器に両手を置いたときにはよ、こう、スル~スルスル~みたいな、チョットずつユックリさ針は動いていったんさ。
それがあの娘っ子が使ったらよ、スゲーでかい音出して針を振り切っちまうんだから、そりゃ壊れちょるんだろ。
「おーい、次の人は誰なんだ?」
隣の部屋にいた職員さんが、この部屋から次の人が来ないので、こっちまで様子を見に来ちまったみたいなんさ。
いけねえ、いけねえ。
「すみません、あたいです! すぐに行きます!」
そう言って謝ってから、あたいは急ぎ足で、隣の部屋へ移動することになったんさ。
☆
☆
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「フーンさん、そこの交差点は事故が多いから急がないでゆっくりと渡ってね」
「そうだよフーちゃん~真ん中は馬車がたまに速く走ってくるから、気をつけるんだよ~」
「なんなのそれ、勝手な渾名とかやめてっ! とても恥ずかしくなるから!」
俺は先程までいた冒険者ギルドで、自分のことなのに重大局面で「ふーん」とつい言ってしまったおかげで、ここまでずっとイジられ続けているのだ。
「ちょっと、ハルカ、前、前を見て!」
「うーん、道さ迷っただ。ここはどこだべさ?」
ドンッ
後ろにいた二人に、歩きながら振り向いて抗議をしたら、前方の往来で立ち止まっていた人に、俺はぶつかってしまったようだ。
「あ、すみません」
「大丈夫さー。気にすることはねえだよ」
振り向いて謝ると、そこにいたのは俺よりは幾分高い背丈で、年がそう変わらなそうな子供がいた。
赤銅色に見える超健康体の肌色をしていて、長い髪を後ろで無造作に束ねていた、オーバーオールを着ている男の子だった。
その子はぶつかった瞬間に、手に持っていた紙を落としていたのを、俺は見ていた。
その紙は俺がすぐに拾い上げて渡そうとしたのだけど、そのときに紙に大きく書かれていた文字が、つい目に入ってしまったのだ。
「あれ? 小春日和亭って書いてある?」
思わず記された文字を音読してしまった。すると男の子は破顔する笑顔になって、
「おっ、そこの場所をおめさは知ってるのかよっ! こりゃあ助かったべ~~」
「え?、、、どうゆうこと? そこって女性せん、、、モガ、モゴ!」
「ハルちゃん~それ以上は言ったらだめ~」
「そうそう。ハルカってば、そーゆー観察力はなんでか働かないわよね。、、、同性なのに鈍いのはどういうことなのかしら」
二人はそう言うと、そこに用があるのなら私たちと一緒に行きましょうか、とその男の子に話しを持ち掛けた。
あれれ?
、、、同性?
、、、あ!
俺がわかった、という顔色を見せると、シエルの手はやさしく離れた。
「あたしたちはちょうどその小春日和亭に泊まっているのよ。あなたもそこに? あ、そういえばお名前は?」
「あたいはライナっていうんだに。よろしくなー! そこのある宿屋の道さ、わかんなくって困ってたんだ。今日からそこさ泊まる予定なんだ」
それぞれの名前の紹介が一巡すると、ライナを連れながら宿屋へ向かうことになった。
宿屋までの帰り道は、ライナが自己紹介を始めたので、色々と身の上話を聞くことになった。
彼女はデイルードから南へ続く街道を、乗り合い馬車を二回乗り換えて、三日間かかる村からやってきたらしい。
村から本寄りの小さな町にあった冒険者ギルドの出張所でランク(F)の実技講習と座学を全て履修し終えて、先々週には(E)へランクアップを果していたのだそうだ。
しかし、ランク(E)の職業適性測定は地元では取り扱っていなかったので、それで今日に合わせてここへとやってきたらしい。
小春日和亭を探していたのは、村へ半年間隔で来る女性の行商人に、この都市で良い宿はないかと訪ねたら、この紙を書いて渡されたということだった。
「? ライナはさっきから、私のことをよく見てる?」
ライナは俺のほうをチラチラと見ては、自信をなくすようにため息をしていた。
「ハルカ、おめえさはとってもめんこいな。あんたは都会っ子なのかよ?」
「私って、都会っ子にみえるの?」
「おめさのその服はえらく可愛いぞ! ハルカには似合ってて、とてもうらやましいさ」
「服? これはそこにいる義姉が見繕って着せてくれているんだよ。服のことなら私のほうこそ、ライナの服がうらやましく見えるんだけど、、、」
今日の俺のコーデは、赤い色のオフショルダーのワンピースに、サンダルと白色の麦わら帽子(もちろんリボン付)といった組合せで、お嬢様風に見せている服装のようだった。
都市長の婚約者として恥ずかしいものは着せないと、日夜張り切っているシエルは、俺が着る服装選びには余念がないのだ。
「ハァー、、、あたいにはそーゆー服が似合わないけえ。お人形のようにえらく可愛い、ハルカがとってもうらやましーさ」
「女の子はね~そう思ったときからとても可愛くなれるんだよぉ~」
しょげていたライナに、シエルはそう励ます。
「あんたは、成長期だってまだこれからでしょ。気持ちから変わっていけば、それで自分を変えられることだってあるかもしれないわよ?、、、もっともそれだけじゃ越えられないものも、、、ブツブツ」
続いてエンリカも援護したつもりが、なぜだか自滅モードになってしまっていた。
「そっかー、こんなあたいでも変われるもんかなー。、、、エヘヘ、そうだとしたらうれしいだに!」
ライナは頬を赤くして俯いてモジモジしていた。俺はそれを見て今でも十分に可愛いと思ったのだった。
☆
☆
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「うん。仕事は順調に回っているようだねー」
一度ライナの案内のために宿屋へ戻った俺は、その後に都庁舎にある都市長室に向かった。
先月までは、この部屋の一つ手前にある秘書室には、未決済の書類の山々がたくさんあった。
それが今ではすっきりと片付かれていて、もともとあった風景に戻されていた。
「フフン、僕が本気を出せばこんなもんさ。どうだ、見直したか?」
ジュリアン王子は立派な椅子の中で、両手の指を組んで深く寄りかかり、ふんぞり気味になりながらそう言った。
「よーしよしよし。ジュリアンはエライぞ、エライぞ。やればできる子じゃないか」
ナデナデ、ナデナデ
ジュリアンが椅子に座ってふんぞり返っていると、身長が130cm台の俺でも、頑張ればジュリアンの頭の上に手が届いていた。
「ハッハッハッハッ! 当然だろう。将来は父上のあとを、、、ってそれはやめろー! また僕を年下扱いするんじゃないっ!!」
って言っても、俺は元勇者のハルキで、こいつの兄役をずいぶんと長くしていたからな。
無意識でついつい昔のようにしてしまうクセがとれないんだよ。
「なあ、ジュリアン。お前がファザコンで」
「う、うるさいっ! それはほっとけ!!」
「あのおっさんを尊敬していて」
「父上をおっさんって、、、国王陛下なんだぞ。ハルカ、お前のその態度はおかしいぞ?」
「こうやって努力だってできるんだから、馬鹿王子ってゆうお前の評判は、おかしくはないか?」
「、、、、、、、、、」
ジュリアンは黙ってしまった。
しまった。
こいつとの昔の関係を思い出していたら、馴れ馴れしく踏み込んだ話を、うっかりとしてしまった。
俺のこの姿でこいつと出会ってからは、まだ二ヶ月しか経ってなかったのだ。
ジュリアンにしてみたら、無神経だと思われたのかも知れなかった。
「来週末は暇になる?」
俺は急に話題を切り替えた。とはいっても、こちらのことを聞くことが、今日ここにきていた主だった目的だったのだ。
「、、、なんだ、僕に何か用なのか?」
「実はね、私の知っているお店で、今度内輪だけのパーティーがあるんだ。よかったらジュリアンも参加してみない?」
「なんだと?、、、それは庶民のみで集まってするものなのか?」
ジュリアンは戸惑いを浮かべた顔をつくり、返事をすることなく、質問が返ってきた。
「当たり前だろ。私が庶民なのを知っているよな。お前、もしかしてからかっているのか?」
「そうじゃない。、、、その、僕はこれまで、そうした集まりとかは参加したことがないわけで、、、恥ずかしいが、その、勝手が色々とわからないんだ」
そういうことか。こいつはこれでも王子だから、庶民というのは遠くから手を振る対象でしかなかったわけだし。
「なるほどね。、、、うーんそれなら」
俺は思いついたことを口にして見る。
「それなら今日の定時で上がったら、庶民用のフォーマルウェアがあるお店に一緒に出かけよう!」
「いいのか? それは助かるけど。、、、機会があれば市井との触れ合いを大切にせよ、と父上からもそう言われている。、、、お前もいるのなら、参加をしてみようと思う」
するとジュリアンは自分の顔の方向を、俺と反対側になぜか向けた。
「、、、僕の孤独はハルカが埋めているんだ。馬鹿なこともする必要はもうないのさ、、、」
なにかつぶやいているのはわかるけど、それが何を言っているのかまでは分からなかった。
こうして定時を過ぎた二人は、仲良く街中へ買い物(デート?)に出かけるのであった。
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