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013 大人の事情。子供の事情。(ジュリオ王とジュリアン王子の視点)

魔王を倒して少女に変化していた元男勇者のドタバタときどきラブコメディー



## 今回は、ジュリオ王とジュリアン王子の視点で物語が進みます ##




魔王討伐の成功記念式典が、恙無く無事に終わりを迎えると、会場に集っていた国賓の人たちは来賓館に招かれて、そこで催された晩餐会に出席していた。


その中でも、ジュリオ王が歓談している一団がひときわに騒がしかった。




「カカカカッ! 俺もお前もずいぶんと老けたな! 、、、久しぶりになるか 、、、ジュリオよ!」


「三人が一同にというと珍しいですぞ! 随分とひさしぶりなのですぞ! 逢いたかったですぞ!」


「人が騒々しくてウンザリ、、、氷結で沈黙、、、ブツブツ、、、魔導通信機を揃えるべき、、、」




「お前たちと会えるとは、いったい何年ぶりになるんだろうな? ジェイソン! ユルハラス! おっとハミエールは相変わらずだ! 今日は出会えてとても嬉しいぞ我が友たちよ。息災で何よりだ!」


ジュリオ王は3人にそれぞれ抱擁した。ハミエールの構えたワンドはこのときに、しっかりとジュリオ王の手に握りしめられた。


ダイマハル帝国で将軍をしているジェイソン、アモーン協商同盟で大臣をしているユルハラス、レアン連合国で宮廷魔術士長をしているハミエール。


この三名はジュリオ王が若い頃に、共に冒険者の仲間として過ごしていたのだ。




「ここはどうやら面白い都市であるな、ジュリオよ。万国の人民が集まっているようではないか!」


「そうですぞ! 万国の富が、いやさ、万国の人民が、ここに集結しているようなものですぞ!」


「異文化が混じり合う、融合を遂げた都市は、例を見ないもの。、、、むう! とれない、、、」




「俺もその意見には同意する。数年前まではただの辺境の田舎町だったデイルードが、こんなにも様変わりをするとはな。、、、戦時の思わぬ副産物だ」


ハミエールはジュリオ王との身長差があり、ワンドを取り戻そうと、ぴょんぴょんと飛び跳ねている。




「フンッ! お前のことだ、この田舎町がこうなると見込んで、わざと無償で提供したのだろう?」


「ですぞ! ここは大陸中のまさに中央。人の往来も資金も集まりやすいのですぞ!」


「ジュリオは策士。今回の魔王討伐で、利益を上げてたのは、この国だけ。、、、ハァハァ」




「ハハハハ。最前線での拠点造りなど、どこも名乗り出なかったから、うちが渋々と引き受けただけだろう?」


なにをとぼけたことを、それも計算のうちだろう、と四人でさらに騒がしくなる。すっかりと昔日に戻って楽しんでいるようだ。




すでに酔も回っていた頃に、ジェイソンは唐突に話した。




「ジュリオよ、婚約のことだ。名も知れぬヤツに賭けたが、本当によかったのか? ゴクゴクッ」


「あ、、、このことはお前たちに、一番最初に話しておかなければならなかった。、、、スマン」


「いやべつにかまわん。すでに解決したといったところだろう。、、、よかったな。 ゴクゴクッ」




ジュリオ王とジェイソン将軍はそれで黙ってしまったが、ユルハラスは陽気に笑って、


「婚約の発表バンザイ! ですぞ! ジュリオ殿が決めたことなら、よい縁結びでしょうぞ!」


「直感で決めた、そんなとこ。ジュリオは強運。だから、、、くッ、とった! まんぞく」






「直感で決めた、、、か。、、、ハミエールのいう通り、直感なんだ、、、」


ジュリオ王が凸凸と話しだした。三人は顔を見合わせて再びジュリオ王に顔を戻した。




「ハルカ嬢とジュリアンが一緒にいるのを見ると心が安らぐのだ。それは勇者ハルキとジュリアンが一緒のときのように、、、いやそれだけだよ。俺はそれでハルカ嬢を婚約者に迎え入れたいと思ったんだ。当人は乗り気じゃないようだったから、泣き落としや一年契約のようなもので、なんとか承服をさせたんだがね」




「お前がそう決めたのならそれでいいと思うぞ! そうだッ! どうせならお前がハズレるのも見てみたいものだ! カカカカッ!」


「お意地が悪いですぞ。ハルカ嬢でしたかな。あれは会場でも評判が高かったと申しておきますぞ」


「会場は大絶賛。息子は大人しすぎて問題児。、、、私もハルカ嬢がほしい。譲ってほしい」




それからの四人は、晩餐会でそれぞれの身内話を楽しく始めることになった。


☆


☆


☆




カッポーーーーンッ


ジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボ




ここは王族が貸し切っている三ツ星ホテルにある大浴場。




式典が終わると外は暗い時刻で、ジュリアン王子とハルカはこちらへ返された。ハルカは明日、小春日和亭に戻ることになるが、今晩はここで夕食を済まして与えられた個室に泊まることになった。




こちらの男の湯では、ジュリアン王子が脱衣場で服を脱いでいる。現在はジュリアン王子が専用で使う時間となっているので、他には誰一人として人はいなかった。




ガラガラガラッ


引き戸を開けて入ると、視界が見えにくくなるほどの湯気が脱衣場へと侵入してきた。




今日一日ですっかりと疲れた体に、まずは桶にひとすくいしたお湯を体にかける。


それから大きな浴槽の中へ、勢いよく飛び込んだ。




「くうはあああーーー、いっっきかえるなーーー」


肩まで湯につかったジュリアン王子は、目をつぶると、お湯をすくい上げて顔を洗った。それからぐてんと脱力すると、しばらくは動かなくなった。




最上階の豪華な部屋付きのバスルームに備えられた浴槽は、かなりの大きさがあるものだったが、王宮で普段使われるものは、その数倍の大きさを誇っていた。


なのでこうして、大浴場を借り切って使うことにしているのだ。平民には許されることのない、贅沢な大浴場の一人貸し切りである。




15歳のやんちゃな盛りの彼は、しばらくするとまわりをきょろきょろと伺って、誰もいない大きな浴槽内で水泳をしたり、もぐってみたりと遊びに興じるようになった。


自分以外には男の湯に入ることができないので、やりたい放題というわけなのだ。




バシャバシャバシャバシャッ


そのように興に乗りながら楽しんでいると、脱衣場のほうから音が聞こえてきた。




ガラガラガラッ




浴場の扉が開く音が聞こえてくる。


おかしい、誰なのだろう?


もしかすると、父上なのだろうか?




そうなら、父上のお背中を僕が流してさしあげよう!!




ジュリアン王子は父親のジュリオ王が大好きである。


問題児であるが、問題を起こす理由は大抵の場合、父親に格好いいところを見せたいといった動機が主だった理由が多かった。


それは父親とのスキンシップが足りないゆえの裏返しの行動であり、はっきりいえばファザコンである。


そんな彼にとっては、そのイベントを見逃すはずがなかった。




湯船の中から立ち上がると、ザブザブと勢いよく音を立てて、洗い場にいる人物へ急行していくジュリアン王子。




「お帰りがお早かったですね。僕がお背中をお流しします!」


湯気の向こう側で、体を洗い始めようとしていた人物へそう声をかけた。




しかし遠近法からは、この人物の大きさがとてもおかしいと思い当たるようになった。


いくら近づいても、その大きさは不思議と小さいままに見えるのだ。




ジュリアン王子はより近づくに連れて、視界を遮っていた湯気も消えて、そこで初めてそのシルエットが、ジュリオ王のものではないことに気がついた。


慌てて急ブレーキを試みたが、全速だった足を強制的に止めてしまったために、それは足を派手に滑らすことに繋がり、ジュリアン王子は盛大な水飛沫を上げて倒れることになってしまった。




ガボ、ガボガボ、ガボッ




ぷっはーーーーーーーー




ああ少し水も飲んでしまったか




ーーーげへげへげへげへ




ジュリアン王子がむせった鼻から水を流しながらきつく咳き込んでいるうちに、そこへと近づく人影が現れた。


「なにしてるんだ、ジュリアン」




相手はむせっているジュリアン王子の背中を叩き始めた。


「す、すまな、い。ゲヘンッ」


「まったく。浴槽の中は走る所じゃないぞ。すごい音だったが、転んで痛くはなかったか?」


ジュリアン王子は、コクコクと首を縦にふって大丈夫と伝える。




「あ、ありが、とう。、、、き、君は?」




そこには笑顔のハルカが立っていた。


腰に手を置きながら。


湯船の中で、、、




裸でっ!




「のわわっわッーーーーーー!!」




後ろに倒れた状態だったジュリアン王子は、器用に両手と両足を使って、倒れたままで全速後退をしていく。



「なんだ、意外と大丈夫そうだな。それなら私は戻るからな」




ハルカは浴槽から上がると、体を洗うために再び洗い場へと戻っていった。


ハルカは体を隅々まで洗ってから、浴槽に入る派であるようだ。




「フーンフンフンフーン♪」


ハルカは鼻歌を出しながら首の周りから両腕、前の体、両足という順番でゴシゴシとスポンジを使って洗っていく。


「お~い、ジュリアン。さっき言っていたよな。オ、私の背中を洗ってくれよ」




「え、、、あ、、、えっと」


俺は返答に困ってしまう。




てゆーか、なんなんだコイツは!


この男女二人きりの状況で、ノーリアクションのままだなんて、普通ではありえないだろっ!




「はい、これスポンジな。あんまり力をいれるなよ~」




自分の背中を向けながら、俺に向かってスポンジを受け取れと、手に持ったそれを差し出してきたハルカ。




い、いかん。僕の心臓がバクバクと早く動いてるのがわかる。


うおおおおっ! 


ダメだ、思考が冷静に働かない!


ど、ど、どうしたらいいんだーーーーーー!!




「さっさと始めろよ、ほら受け取れ」


焦れたハルカは、僕に前向きになって立ち上がると、僕の手の中に、いままで使われていたスポンジを挟み込んできた。


それからまたイスに腰を掛けると、始めろというジェスチャーで自分の背中を指した。




僕の手にあるのは、ただのスポンジのはずなのに、いままで女の子が使っていたというだけで、それが特別な物のように感じてしまった。


このスポンジは女の子の肌とこれまでは一体となっていたもので。いけないものを手渡された錯覚が僕を襲っていた。




ハッ、僕はなぜっ、こんなことを思ってしまっているんだっ!


へっ、変態ではないからなっ!


く、くそっ~、ハルカめっ! 


小悪魔めっ! 奸計を策したのか?




「ジュリアン。こうして一緒に入ったのなら、お互いの背中を流すのが礼儀なんだぞ。さあ始めてくれ」




ここにきてこのセリフから、ハルカは僕に誘惑を仕掛けているのではなく、天然で僕を異性として見ていなかったことに気がついた。


よくよく考えてみると、ハルカはまだ10歳なのだ。


いやもう10歳なら、普通に異性に恥ずかしがってもいいとは思うけど、聞いた噂では、父親といつまでも入りたがるような女の子も、世の中にはいるそうだし。


人それぞれの環境で、恥ずかしがる年齢も違ってくるのか、それは個人差なのかもしれない。




ハルカに今まで驚いて本弄され慌てていた僕が、第三者の視点で見返すと、ひどく滑稽になる男の子に思えてきた。


当たり前だが、それまでに昂ぶっていた気持ちも、自然と急降下してくるようになる。


しかしすぐに別の考えが頭をよぎると、昂ぶりは先程よりも上げ上げしていく!




そう。男子ならこの状況を利用しないでいるなんてやつは、絶対に馬鹿としかいえない。


相手がたとえツルベタであれ、女の子が裸で平気になって目の前にいる。その身体を見られても構わないというのなら、ぜひぜひ、見させてもらいたいっ!




、、、コ、コホン。


いや違うんだ。


これはあくまでも、お風呂での礼儀をたんにするだけのことだ。


普通で当たり前のことを、ただしてあげるのだ。




グビビ。


緊張からなのか、唾を喉に飲み込んでしまった。




「よ、よし、わ、わかった」


俺はハルカに近寄ると、その背中にスポンジをのせる。




マジマジと見るっ!


ウッハッ、これがハルカの背中か。


さっきは、じっくりと見てるなんて余裕さえなかった。


もったいないことをしたっ!




すっげぇー白くて、つるんつるんでプヨプヨとした肌だ。


めっちゃ触り心地が良さそうだ~!


、、、


ま、間違えて、身体を、触っちゃっても気づかれないよね?



触れてみたいな、、、



僕のスポンジを持たない手は、恐る恐るハルカの背中へ伸ばされていく、伸びていく。あと少しだ、、、


その手の指先が触れるか触れないかの、まさにその時にーーー




ガラガラガラッ




また浴場の扉が開く音が聞こえてきた。


入ってきたのは父上とロイスの二人だった。






入ってくるなり、父上とロイスは、あんぐりと口を開けて自失呆然になって唖然とした様子になった。




僕とハルカの二人を遠目でみると、イスに座ったハルカの背中側で、その両肩に手をおいて両膝を折った状態の僕。


これでイスと取ってしまえば、これからいけないことを始める場面に見えてしまうのだ。




「あ、おっさ、、、お先にお邪魔してまーす」


ハルカは入ってきた二人に、平然と普通に挨拶をしていた。




ハルカァァッ!!


この場面なんだぞ!


なぜ平常運転でいられるんだぁぁぁーーーーーーー!!!




「ほほぉ、なるほど。、、、お前たちはずいぶんと急速に仲良くなったものだな。、、、ジュリアン、お前が純粋無垢なハルカ嬢を誘ったのだろう。いやまったくこうまでお前がスケベだとは思わなかったぞ。俺の若いころよりも斜めをいった早熟さだよ、、、今度は男同士の話でもしてみるか?」


父上がニヤニヤとして僕を見ている。




違うんだーーー!!




ハルカのほうが勝手にこちらへきただけなんだっ!!




「お坊ちゃまがまさかこれほどまでにハルカ様をお気に召していらしたとは。これまでの爺の目はとても節穴でございました。これからは積極的にバックアップをさせていただきますぞ。早速奥方様に連絡の使いを出さねば・・・・」




だああああっ!!!


まてまて、待ってくれっ!


事情が間違っている!


勘違いしないでくれーーーー!!




「ああ、わかったぞ。自分が年上だからって先に背中を洗わせたいのか。よしそうなら、ほらジュリアン、私がお前の背中を洗ってやるぞ。ここに座って、こちらへ背中を向けろ」


ハルカは自分の身体をろくに隠さずに、俺の前に堂々と立って、そう言った。


そして自分のオシリを置いていたイスに、俺を座らせようと腕を掴んできて引張った。




え、今まで女の子が生で座っていたイスに?




僕は思わず劣情が起こりそうになったが、この状況でそれはヤバイッ!


父上を見ると、その様子をロイスと示し合いながら、かなり楽しそうな笑顔でみている。


ああ、これは最初から二人に担がれたんだと、ここで思い当たった。







ああっ!


もうどうとにもなれ!!

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