第41話 出張編3
俺のポケットからはラインの着信音が鳴る。
ま、まさか…
ポケットから出し、名前を確認する。そこには雫の名前が表示されていた。
そ、そんな、だってまだ7時半だぞ?打ち合わせに晩御飯も食べるのあれば、こんな早く終わるわけもない。
「と、とりあえず、出なきゃけ…」
俺は恐れながらも、応答する。
「も、もしもし?」
『もしもし、和樹くん?出るの遅い〜、夜に電話するって書いたのに』
久しぶりに聞く雫の声に俺はとても安心した。ちょうど、雫の事も考えていたというのもあるが、流れていた涙がもっと溢れる。
『和樹くん?泣いてるの?…』
「ご、ごめん…ちょっと色々考えちゃって…」
もう昼みたいに逃げたくない、逃げない。ちゃんと話すんだ、雫と。
『それってもしかして、昼のこと?』
「うん…」
『そっか、和樹くん、もう夜ご飯は食べた?』
「え、あ、うん、食べた。ごめん、昼は食べなかったから、弁当に気付けなくって…あり─」
『待って!』
礼を言おうとしたら、急に雫に止められる。
『もう、食べ終わったんなら、弁当はとりあえず、水に浸けて、パジャマに着替えて、寝室に行って』
「え、なんで?」
『いいからいいから、お姉さんのいうこと聞いて』
『わ、分かった」
どういう事かはいまいちよく分からないが、とりあえず、電話は切らずに、弁当を軽く洗って、歯磨きをして、寝巻きに着替えて、寝室に俺は行った。
「全部終わったよ、雫」
『うん、私もオッケーだよ』
私も?
『じゃあね、私がせーのって言ったら、ベットにダイブしてね?』
「え、それってどう、、」
『行くよ、せーのっ!』
あーもうどうとでもなれ!
俺は勢いよくベットに飛び込む。
バサッ、
『バサッ』
携帯を持ったままふかふかのベットに俺は顔を埋める。そして、携帯の向こう側からも同じような音がした。
『どう、和樹くん?スッキリした?』
「う、うん、なんかすげぇスッキリした」
確かに、さっきまであった、なんとも言えない感情が消えて、軽くなった。
『私もね、もう寝る用意、終わって、一緒にベットにダイブした!』
「な、なんでまた?」
『だって、そうすれば、一緒にいるみたいでしょう?』
「し、雫…」
雫は怒ってなんていなかった。それどころか、電話越しで俺が泣いてると分かり、気遣ってくれた。
『はい、ではさっきの続きを聞かせて?弁当がなぁに?』
「あ、はい。昼は気づかなかったけど、さっき、弁当に気づいて、食べました。本当にありがとう。あと、嫉妬して、勝手に会話終わらせてごめんなさい。」
『うん、和樹くんは「ごめんなさい」よりも「ありがとう」って先に言えて偉いね。そういうところ好きだよ?』
『でも、今回は私のせいでもあるから、男の人がいるって言うのを忘れててごめんね。』
「あ、それ!今日の食事は?」
『あー行ったよ?でも、早めに切り上げちゃった』
「ご、ごめん、俺のせいで…」
『だめ!謝らないの!私が和樹くんと早く話したかったからいいの!それにあの人たちも、私が彼氏にデレデレっていうのバレちゃって、むしろ早く帰ってあげないって言われちゃった』
少し照れながら、そう言ってくる雫。
本当に雫は優しいし、さっきまで悩んでいた俺が馬鹿みたいだ
「雫、いつもありがとうな」
『ううん、こちらこそありがとうね』
『ねぇ、今日は一緒に電話しながら寝よ?お姉さんは疲れちゃって和樹くんの声がないと疲れが取れません〜』
「うん、いいよ。俺も今日はもっと雫と話していたい」
『えへへ、やった』
そうやって、俺たちは話しながら、いつの間にか電話で寝てしまっていた。
明日には雫も帰ってくるし、早く目一杯雫を抱きしめたい。




