第36話 雫の過去
「早く終わらしてよ?、、」
「心配しなくってもあなたの大事な和樹くんには何もしないわよ」
こちらをチラチラ見ながら、雫は玄関へと向かった。
がちゃ、と音がして雫はおそらく外へ行った。
そしてリビングの食卓には俺と霞さんのみ。
「……」
俺は相変わらず何も言えないでいった。
「ごめんないね、見苦しいとこを見せてしまって」
霞さんが申し訳なさそうに俺に言った。
「い、いやこちらこそすみませんでした。挨拶にも行けず、、」
「あら、それはもしかして雫を嫁にもらってくれるってことかしら?」
「あ、い、いやそれはっ、、」
「あはは、冗談よ~やっぱり可愛いわね」
完全に遊ばれている、、やっぱりこの人は雫の母親なんだと再確認した。
「でもいつかはもらってくれるかしら?」
さっきよりちょっと真剣に聞いてくる霞さん。
「ふ、二人でちゃんと話し合ってからというか──」
「ありがとうね」
「え、」
「あの子と一緒にいてくれて」
「...」
「少しだけ私たちの事話してもいいかしら?たぶんあの子あなたに話してないだろうし」
「は、はい、、」
「私たちの雪森って苗字は私の家柄なの」
「え、」
「本当は旦那...雫にもお父さんがいたのだけど、雫が15歳の時にお腹に男の子を授かったのだけど、私が病気になってしまって赤ちゃんは他界しちゃってね」
俺はなにも言えない自分がただただ情けなかった。
「そのあと夫が浮気してね、すぐに離婚したわ」
「雫は弟が生まれたら、いっぱい可愛がるって言ってたわ。その上のあの人の裏切り。あの子にもだいぶ辛い思いをさせてしまったわ」
雫が言っていた「あの人」とはお父さんの事だったのか。
「そこからあの子すこし変わっちゃってね。男を信用出来なくなったらくって、今まで恋人なんて出来たことなんてなかったわ」
「でもあなたと出会って雫は本当に毎日が幸せそうだわ。和樹くん、あの子を救ってくれてありがとう」
それは違う..救われたのは俺の方だ、、あの日、「お姉さんの前では無理しなくってもいいんだよ?泣いていいだよ?」綺麗なお姉さんに、「よしよし、寂しかったでしょう?」雫に、、
「それは違います、霞さん。助けられたのは俺のほうです、、俺はいつも雫にたすけられてばっかりで、、俺はなんにも、」
……………
………
「和樹くん、大事なのは「どっちが助けてる」じゃなくって、「二人で助け合ってる」だよ?
そうわよね、雫?」
「え、」
カチャっとリビングのドアが開く、
そこにはほのかに顔を赤くした雫がいた。
「え、雫?外に行ったんじゃ?」
「この子が和樹くんをおいてどこか行くわけないでしょう?」
「………だって和樹くんが心配なんだもん」
さすがに霞さんの前で言われるとはずかしい、、
「よし、それじゃあおばさんこの辺で帰るわ」
「え、帰るの?」
「ええ、もう和樹くんの事もたくさん知れたし、また遊びに来るわ」
「あっその前に、」
「「!?」」
霞さんが俺の耳元に、
(これからもうちの子をよろしくね、かずくん♡)
「もう!お母さん、和樹くんから離れて!!!」
「はいは~い(笑)」
ガチャ、と霞さんは帰って行った。
「え、えっと、雫さん?」
絶対に怒ってるよな、、
雫は俺の方を向き、両手をめいっぱい広げ、
「ん!」(ぎゅーして)
「はいはい」
俺たちはなにも言わずただお互いを強く抱き合った。




