第24話 雨の日
とある日、会社にて。
「うわー、降ってきちゃいましたねー」
同僚のそんな声を聞き、俺は自分のデスクのパソコンから窓の外へと目線を移した。さっきまで明るかったのが嘘みたいに真っ暗で雨がザーザー、と降っている。天気予報では特に雨が降るなんて言ってなかったのに、と思いながら俺は仕事を続けた。
数分後、
ゴロゴロ……ドカン!
「おっと、結構大っきいなぁ」
久々に雷の音を聞いた気がした。俺は大きい音とか苦手ではないが、流石にこれほど大きいと仕事に集中出来ないから、課長に許可を取って、イヤホンしながら仕事に戻ると俺の他にもヘッドホンやイヤホンをしながら仕事をしている人も多い。
それから30分。
「課長、終わりました」
「うむ、ご苦労。もう、帰っていいいぞ」
「では、お先に失礼します」
仕事も終わって、カバンを取りにデスクに戻り、携帯を手に取る。
「ん?雫から電話が着てた」
携帯の待ち受けに雫からのLINEが5件も来ていた。イヤホンをしていたせいで全く気が付かなかった。普段、会社にいる時は滅多に連絡して事ない雫がどうして?もしかして、なんか買ってきて欲しいものでもあったのかな?と思い、雫に電話をかけてみる。
「ーーーーー」
出ない。少し不思議に思い、早足で会社を出た。外はまだ大雨だし、雷も定期的に鳴っている。この雨の中を走って、駅まで向かうのもなぁ、だから、タクシーを呼んで、そのまま家まで帰る事を決めた。
ドカン!!
また、雷かぁ。本当に多いな。外を眺めていたら、ほんの15分程度でマンションまで着いた。タクシー代を払い、マンションの中に入り、エレベーターに入る。10階まで着き、1019室の自分の部屋へと向かう。
ドアの前まで着き、インターホンを鳴らす。
ピンポーン
……………
………
誰も出ない…ま、まさか、雫の身になにかあったのか!?そんな考えが頭を横切った瞬間、俺は急いでカバンから合鍵を取り出して、ドアを開ける。
「雫!?」
玄関は真っ暗だ。いつもなら電気が付いていて、雫が「おかえり」と言ってくれるはずなのに、今日はない。呼んでも返事がない。
だんだん、怖くなってくる。呼吸が苦しくなる。心臓が熱く、重くなる。俺はカバンをその場に投げつけ、寝室に向かった。すぐ近くのはずなのに、今はとても遠く感じる。
不安が高まる中、俺は寝室のドアを勢いよく開けた。
「雫!いるか?!」
いない………
ように見えたが、ベットの中に何かいる。なんだあれは?布団を被り、わずかに震えている気がする。不審に思い、近寄ってみる。恐る恐る布団をめくってみる。
バサッ!
すると、
キャッ!
「し、雫?…」
「か、和樹くん…」
布団の中には雫がいた。布団を被り、耳を塞いで、震えてながらこちらを見ている。まるで何かに怯えるように。俺は混乱に落ちた。一体に彼女の身に何があったのだ。
「ど、どしたの、雫?…」
俺もそんな雫を見て、泣きそうになってしまった。
「か、かずくーーん!」
ぎゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜
雫は俺に勢いよく抱きついてきた。しかも、大泣きで。もっと事態が理解出来ない俺でいたが。今はただ、彼女を優しく抱きしめてあげることに決めた。
「一体どうしたの、雫?」
数分たって、彼女が少し泣き止んだところで聞いた。
ベットで抱きついたまま、雫はくすん、くすん、と言いながら口を開いた。
「そ、その、軽蔑しない?…」
「絶対しないよ、そんな事。」
…………
「きょ、今日、お昼後くらいから雨が降り出して、そしたら、いっぱい雷が鳴って…わ、私、雷凄く苦手で…」
そこまで言ったところで、俺は大体分かったが、彼女は続けた。
「凄く怖くなって…かずくんが仕事中なのは知ってたけど…で、でも怖くって、せめて一回だけも声が聞きたくって…電話しちゃって…本当にごめんね」
「いや、雫は謝らないでくれ。君はなんも悪くない。それより、俺の方こそ電話に出れなくってごめんな。雷の音があまりにも大きかったからイヤホンしてて気が付けなかった。本当にごめんな、雫」
「うん、分かってるよ。だから、もういいのー」
ドカン!!!!
「きゃあああ」
またもや、大きい雷がすぐ近くで轟き、雫は俺にさらに強く抱きつく。
「ううう…」
「よしよし、怖くない怖なくない。俺がそばにいるからもう大丈夫だぞ」
「う、うん……がっかりした?君より年上になのに、雷なんかが怖いなんて」
「そんな事ないよ。いつもはお姉さんだけど、こうやって俺に甘える雫も可愛いよ。ギャップ萌えってやつかな?」
「もう何よ、それ」
「怒った?」
「うん。怒った。罰としてー」
すると、雫は俺から少し離れ、顔を真っ赤にして、涙ぐんで、こう言った。
「今日はかずくんがお姉さんを甘やかして。お願い…いっぱいぎゅーってして。いっぱいよしよしってして。いっぱいちゅーってして。」
凄く恥ずかしいそうに言い彼女がめちゃくちゃ可愛いし、普段は雫に甘やかされてるけど、こういう雫を見たら、目一杯甘やかせたくなる。
「良いよ」
「えへ、やった。かずく〜ん」
ぎゅー。




