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権限至上主義:世界がどうなろうと知ったことか  作者: biyaozhie


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12/16

低空降下、シートベルトは必須

極天は振り返り、もう一度念入りに辺りを探した。


だが、やはり一人用の飛行装置やパラシュートといった骨董品は見当たらない。


極天は死体のそばへ戻り、爆薬をいくつか拾った。


簡単に改造を施し、装薬量も減らす。


そして再び操縦室へ戻った。


座席の下に爆薬を仕掛ける。


そのまま機内へ戻り、船壁に身体を預ける。


死体から回収したヘルメットを被り、両耳を塞ぐ。


そして、手元の起爆スイッチを押した。


ドンッ!!


爆発とともに機体が大きく揺れる。


煙が立ち込め、破片が飛び散った。


機内の赤いランプが激しく点滅し、警報音が鳴り響く。


だが、すぐに煙は開いた機体後部のハッチから流れ出し、外へ消えていった。


極天は素早くクッションを元の位置へ戻す。


そして爆発によって「取り外された」座席を担ぎ上げ、機体後部へ運んだ。


座席の底にも爆薬を仕込む。


それから座席に腰を下ろし、安全ベルトを締めた。


航路の先へ視線を向ける。


木々の少ない場所を探し、おおよその位置と距離を計算する。


そして――


足で床を蹴った。


機体から離れる。


飛行艇はあっという間に遠ざかっていく。


風が耳元で激しく唸る。


極天は座席ごと揺さぶられながら、急速に落下していった。


……やはり、姿勢制御は難しい。


地面がみるみる近づいてくる。


地上数メートル。


極天は起爆した。


ドンッ!!


座席の底で爆発が起こる。


強烈な衝撃が下から突き上げ、座席ごと極天の身体が空中へ放り出された。


胸が一瞬、締めつけられる。


だが、その不快感はすぐに消えた。


座席が落下を始める。


極天は安全ベルトを外し、座席の上で半身を沈める。


落下地点までの距離を予測し、身体の姿勢を調整する。


そして――


両足で座席を蹴った。


座席が先に地面へ落下する。


ドサッ!


座席はそのまま転がり、土煙を巻き上げながら脇の茂みへ突っ込んでいった。


極天の両足が地面に着く。


身体が転がり始める、その瞬間。


極天は頭を下げ、顔を片側へ向けた。


反対側の肩から地面へ接触し、衝撃を逃がす。


そして――


身体が制御を失ったように転がり始めた。


十数回。


ようやく止まった。


服はほとんど破れていない。


だが、身体にはいくつもの青あざができていた。


極天は草地に仰向けになり、空を見上げる。


星空がぐるぐると回っている。


そのまま、しばらく静かに横たわった。


こみ上げる眩暈。


そして、それとは別に。


胸の奥には、ほんの少しの心地よさがあった。


しばらくすると、眩暈も収まっていく。


極天は立ち上がり、来た道を戻る。


そして、クッションを回収した。


その時だった。


上空から一本の光柱が降りてきた。


極天がいる開けた場所を、強烈な光が照らし出す。


「おーい」


「お前がそうか」


「俺が迎えに来た、あの死体三人組の――」


極天は光を見上げる。


意識リンクを操作し、映像を拡大する。


光柱の根元。


夜空の一角がわずかに歪んだ。


そして――


光学迷彩が解除され、小型飛行艇が姿を現した。


同時に、飛行艇に搭載された武装がゆっくりと旋回する。


極天へ向けられた。


「今なら、一人くらい増えても構わないぜ」


ドンッ!


閃光。


弾丸が銃口から放たれる。


極天へ命中する、その寸前。


一本の指が弾丸を受け止めた。


激突した瞬間。


時間が一拍だけ、遅くなったように感じられた。


弾頭が指先で一気に砕け散る。


無数の色鮮やかな光の糸へと変わり、その光がまるで生き物のように空中へ伸びていく。


美しい弧を描きながら、指の両側から後方へ回り込んだ。


そして――


その光の糸によって、一人の男の顔が浮かび上がる。


自信に満ちた、傲慢な顔。


男は誰かが反応するより早く、口元を動かした。


「紅鈴ちゃん、俺の船は?」


次の瞬間。


ドォォォン――!!


巨大な轟音が高空から押し寄せてきた。


空気が震える。


地面まで微かに揺れた。


轟音はどんどん大きくなり、どんどん近づいてくる。


まるで夜空そのものが落下し、押し潰そうとしているかのようだった。


やがて轟音が一定の距離で止まる。


その直後。


夜空に波紋が広がった。


波紋が幾重にも広がっていく。


その中心から――


巨大な宇宙戦艦が姿を現した。


低く重い駆動音が、なおも空気を震わせている。


どう見ても、頭上に巨大な摩天楼が浮かび、そのままゆっくり落ちてきているようにしか見えない。


戦艦から、妙な音が響いた。


まるで、登壇前にマイクをポンポンと叩いているような音。


そして次の瞬間。


「刑尚遠!!」


緋紅鈴か?


「お前、頭おかしいんじゃないの!?」


「手続きが何件必要だったと思ってるのよ!!」


極天の目の前にいた男が、空を見上げて叫んだ。


「何だと!?」


「どうして俺が湮甦重工の最新型戦艦を買ったって知ってるんだ!?」


戦艦の上から、緋紅鈴の怒鳴り声がまだ聞こえてくる。


その時。


極天は気づいた。


戦艦が到着したことで、意識リンクの通信信号が復旧している。


【通信接続:緋紅鈴】


「こいつは誰だ?」


戦艦上の緋紅鈴が怒鳴り続けている一方で、極天の耳元にも緋紅鈴の声が響く。


「もう一人の二号」


少し間を置いて、


「病人」


「あなたの上司。保安部の主管」


「刑尚遠」


「……つまり、俺は自分の上司すら知らないのか」


「普段は部長の後ろについて歩いてるからね。知らなくても無理ないよ」


「それに、会社の大小さまざまな事柄は私の権限で処理できるから、別に知る必要もないし」


「私はむしろ、あなたにはあの人から離れていてほしいけどね」


極天は先ほど、刑尚遠が一瞬で現れた場面を思い返す。


「どうやった?」


「現れたこともそうだが、弾丸を止めた方法も」


「もっと頑張れば、そのうち知る権限がもらえるかもね」


その時、小型飛行艇から声が飛んできた。


「刑主管殿ぉー」


「挨拶もせずに帰るなんて、ずいぶん失礼じゃないか」


「だから――俺は帰るぞ」


「ついでに止風兄弟にもよろしく言っといてくれ」


刑尚遠が振り返った。


口元に浮かんでいた笑みが、ゆっくりと消えていく。


さらに消える。


そして最後には、口角が下がり、不機嫌そのものの表情になった。


口を開きかける。


だが、何かを言うのをやめた。


首を横に振る。


そして刑尚遠は極天へ視線を向けた。


二度ほど値踏みするように眺める。


次の瞬間には、再び笑顔になっていた。


左手を腰に当てる。


右手を振り抜き、飛行艇を指差した。


その指先が示す方向。


上空に浮かぶ戦艦の艦載プラズマ砲が、ゆっくりと旋回する。


照準が小型飛行艇へ向けられた。


刑尚遠が大きく息を吸い込む。


胸郭が大きく膨らむ。


「撃てぇぇぇ!!」


艦砲がエネルギーを集束させる。


砲口が徐々に光を放ち始めた。


――だが、その瞬間。


刑尚遠の網膜上に、大量のメッセージが表示された。


【緋紅鈴からの通信】


【緋紅鈴からの通信】


【緋紅鈴が強制接続中……】


【艦載兵器権限がロックされました】


【意識調整局からの告訴】


……


【緋紅鈴があなたを通報しました】


刑尚遠はゆっくりと俯いた。


沈黙。


小型飛行艇は、その隙にこっそりと逃げていった。


刑尚遠は一度だけ飛行艇へ視線を向けた。


だが、もう追おうとはしなかった。


代わりに極天の隣まで歩いてくる。


右手を極天の肩へ回した。


「出来たてホヤホヤの新人だな」


「機能は多彩、性能は抜群」


「……?」


「主管、お疲れ様です」


「うんうん、お前もな」


そう言っている間に、彼の背後から一機の飛行艇がゆっくりと降下してきた。


どうやら戦艦から投下されたものらしい。


一方、巨大な戦艦は徐々に上昇していく。


刑尚遠は極天と肩を並べ、そのまま腕を回した。


「ほらほら、まずは工場に戻ってメンテナンスだ」


「その他のことは、あとで考えればいい」


二人が歩き出そうとした、その直前。


極天が上空を指差した。


「……あれには乗らないのか?」


刑尚遠の頭が勢いよくこちらを向いた。


首から、


「ゴキッ」


という音が鳴る。


その目が輝いた。


「おおおお――」


「お前もそう思うか!?」


刑尚遠はさらに極天を強く抱き寄せる。


二人は歩きながら話を続けた。


「最初から一級宇宙港を街中にぶち込んでやればよかったんだよ!」


「お前、知らないだろ?」


「郊外だったから助かったんだぞ」


「そうじゃなきゃ、俺の大事な大事なベイビーだって、着陸できたかどうか怪しいんだからな!」


「それにな――」


二人は飛行艇へ乗り込む。


ハッチが閉じる。


飛行艇がゆっくりと上昇する。


そして――


湮甦・球湖支部へ向けて飛び立っていった。


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