第51話 重さを四人へ
十九日目、石材船から王宮修復用の柱が一本届いた。
長さは人の背丈四人分。重さは、港の巻上げ機でも一度に持ち上げられない。四人の帯を縄でつなぎ、重さを分けて下ろす試験が組まれた。
結人は、前日に乾いた床で試した四人の位置を板へ写した。背丈と右肩の傷に合わせ、縄の長さは一本ずつ違う。ガルドも結び目を引き、エナの肩へ直接流れないことを確かめた。
雨で傷んだ桟橋は、夜番が一部を新しい板へ張り替えていた。傾きは測り直した。だが古い濡れ板と、新しいざらついた板で、踏ん張れる力が変わることを、空荷の確認では拾えなかった。
試験が始まる。
バシュ、リコ、ソアン、エナが四隅へ入る。柱が船腹を離れた瞬間、結人の計算どおり四本の帯が張った。
次の瞬間、前左のリコだけが膝を折る。
新しい板は滑らず、彼女の足へ重さが残った。後ろ右のバシュは濡れた板で半歩滑り、その分までリコへ流れる。均等にした縄が、足場の違いを無視して彼女を押し潰そうとした。
「下ろせ!」
ガルドが叫び、赤糸を切る。柱は支え台へ落ち、石が低く鳴った。リコは立てたが、左腿を押さえている。
結人が駆け寄り、リコに試験を続けられるか聞いた。彼女は座ったまま、滑らなかった新しい板を踵で叩く。
ガルドが濡れ板へ自分の足を乗せ、横へずらした。「俺も、縄しか見ていなかった」
彼は四本の帯を外し、一本ずつ別の杭へ結んだ。前左は、力が急に増えた時に先に逃がす。後ろ右は滑った分だけ長く伸びる。エナの右肩へは流さず、バシュの踵が戻った時だけ重さを受け直す。
「踏み直す間は、こちらが受けるんですね」
結人が弛ませた縄を、ガルドが引いて確かめる。リコは自分の位置から支え台まで歩き、足が滑った時に退く場所を示した。
「ガルドさんが決めてください」
彼がこちらを見る。
「最終の流し方を。僕は縫います」
これまで結人は、意見を聞いても最後の線だけは自分で引いていた。新しい服の力を最もよく見えるのは自分だという自負があった。渡すと言葉にした途端、手の中から何かが離れる感覚がある。
ガルドは喜ばなかった。
「失敗したら俺の責任だ」
「はい」
「お前も逃げるな」
「逃げません」
二度目の試験。
柱が上がる。四人の帯は同時には張らない。リコの足場で先に力を逃がし、バシュが踏み直すまでエナとソアンが少し多く受ける。次に柱が傾くと、エナの支えが腿へ移り、右肩は自由なまま残る。
四人の呼吸は揃っていない。けれど、柱はゆっくり地面へ下りた。
石の底が支え台へ収まると、誰もすぐ手を離さなかった。重さが消えたことを確かめてから、一人ずつ帯を外す。
リコが腿を叩く。「四分の一より軽かった」
「私は少し重かった」とエナ。
「苦情ですか」と結人。
「次は酒一杯分、バシュへ回せ」
バシュが抗議し、笑いが起きた。
ガルドは完成した連結部品へ、自分の小さな刻印を入れた。これまで、古い事故以来、人の身体へ使う物へ印を入れる時だけ手が止まっていた。
今回は止まらなかった。
結人はその隣へ名を書かず、青い縫い糸を一本だけ通した。
石柱の四隅には、太さの違う四本の縄が、まだ張ったまま残っていた。




