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角と吉報

「おはようございます」

朝のコンドウ家、アークが起きてきた。

「手伝いますー」ゴチン!

台所へのカモイに角を引っ掛けた。

「大丈夫かよ」

「へへっ。対策済み」

2本の角にはカバーが付いている。

「大事やもんね。これ持ってって」と茶碗を渡された。


納豆ご飯をかき込むアーク。

「小キズとかつけたくないんですよ」

「はぁ?」

「今、ピカピカに磨くの流行ってて」

「手入れしてるんや」

「はいー」角を撫でるアーク。

「父上みたいに戦闘の傷ならカッコいいけど、今や傷はドジの証拠ですし」

「イマドキやな」

などとしょうもない話をしているが、アークは魔王国とミナセを繋ぐ重要キーパーソンだ。

1日おきに翼人便を飛ばして手紙のやりとりをすることで、向こうの温泉開発の状況も分かり、スライムの試験飼育も始めた。ルークとの交渉、商品確認もアークの役割だ。

他の魔人達も、カツミのハードスケジュールに少々振り回されつつも、畑作業からカレー作り、試作研究なども行っている。

タケシはと言うと。

納屋にこもって大きいチャリ作り。

「ゼル、欲しい言うとったしな」

単に作りたいだけ。とみんな分かっているので、ほったらかされている。

「僕のも作ってくださいよー」アークが言うと

「羽根あるやん」

「父上もある......」

「王宮って広いんやろ、そこで乗ったらええ」

「じゃあ僕にはキックボードを」

「わかったわかった。工房に言うといたる。ちょいデカサイズ」

「量産して輸出します?」

「まぁおいおいやってもええな」

実に軽い輸出交渉であった。


家先にフワリと翼人が降り立つと、いかついマスクを外した。

「お手紙でーす」

「あ、ご苦労さん、アーク今ルークのとこや。預かっとくから飯行っておいで」

「あ、すみません。よばれてきます」と、赤い箱と防塵マスクを置いて食堂に向かって飛んでいく。

うっかりミナセ上空で、街の自警団に見つかり、胡椒玉を食らってからは、防塵マスクが支給された。念のためタケシたちのところまでは高度を上げて飛んでくる。

食堂で給食を食べて帰るのが定番になり、すっかり馴染んでいる。

「マジ便利やなー。ちょっと移住してもらってもええなー」

と、タケシは飛んでいく翼人を眺めていた。



その頃、サラディア領ではーー

「よろしいんですの?ローデリック」

「はい。奥様」

「レオン、いいって」

「リシェル、手紙を出しておこう」

「いいえ。びっくりさせちゃいましょ」





コンドウ家の前に馬車が止まった。タケシが納屋から覗くと、レオンが降り立つところだった。

「お。なんやー、きよったー」

と、出ていこうとすると、玄関をガラリと開けてアークが出てきた。

一瞬、レオンとアークの目が合う。

レオンがすかさず馬車から離れ、アークを睨んだまま腰のハリセンに手をやる。

アークの2本角から小さく稲妻が光出す。

レオンが腰を落とし、するりと足を踏み出した。

「ハァー!」

「やめー!!」タケシの大声。

抜いたハリセンが、アークの目前で止まった。

「敵とちゃうねん」

「師匠、どういうことですか!」

まだアークを睨んでいるレオン。

「事情説明するから、ハリセン畳んで」

やっとハリセンを下ろしたレオン。だがその右手には、けん玉。

「お前、角折るつもりやったな」

「.......」

タケシが馬車を見ると、リシェルが立っていた。その手にはパチンコが握られている。

「リシェルまで.....」

ため息をつくタケシ。

「悪いなアーク。うちの息子夫婦や。とりあえず家入ろ」

アークの稲妻がシュルシュルと消えた。



「お前、魔人にハリセンで勝てるかいな」

「いえ、コンドウ流奥義ですゆえ」

「すまんな、アーク。こいつ勇者やから」

「どうりで凄い圧でした」と笑うアーク。

「リシェルもあかんやろ」

「いえ、護身のために持たせています」

「いや、わかるけど。リシェルやる気満々やったやん」

「........」

「まあええ。そういうことで、わが家は只今魔人族6人受け入れ中や。わかったな」

「はい。お父さま」

「師匠......。アーク様、ご無礼お許しください」

「あ。いいですいいです。僕も久しぶりに興奮しちゃってすみません」



「いやー見たかったー」

「僕、角カバー外してなかったら、ヤバかったかも」

笑い声が、座敷からこぼれる。

アキラ夫妻、ルーク一家も交えて夕食会だ。

「でもやっぱ、カエルは強いんだ」とアキラ。

「隙がないんですよ」

「コンドウ流ですから」

「タケシさんは?」

「俺ただの馬車屋」

「師匠は勇者です」

「やっぱわかんないー」とアークが笑う。

「んで、なんで急に来たんよ」

「えっとそれは......」モジモジするリシェル。

「あ。父上」

とレオンが姿勢を正す。

「子供が.....出来ました」

「えぇー!」

「マジか、リシェル」

頷くリシェル。

横でカツミが指を折る。

……早ない?

「はぁ?」タケシがレオンを凝視する。

「勇者......ですから」


その夜レオンとリシェルはルークの迎賓館に泊まり、翌日ミナセ見物をして帰って行った。


「やっぱ早すぎやろ」

「まぁまぁ、カエル婚約してから3年ですよ、しゃあないっす」

「お前すぐやった」

「げっ。なんでわかる」

「サーシャの顔」

「タケシさんらかて、すぐ結婚したっしょ」

「そやなぁ半年位か」

「ね、カエルなりに頑張ったんっすよ」

「そやな。努力を認めよ」


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