続 謎の玉
アルネア王国王都アルネシア。王城の特別室に集まるのは、大陸内の大小7つの国の国王。
1年後の魔導国との不可侵条約更新に向けての人族同盟会議である。
今、7カ国の中で最も国土が広く、経済も段違いに強くなったアルネア王国は、当然同盟の中心国となっている。
「では、交渉は我が国に一任されると言うことでよろしいのですか」
カイルは円卓をぐるりと見回す。
「私共は、もとより小さな国ゆえ......」
「我が国もアルネアに比べると戦力は微々たるもので.....」
結局みんな逃げ腰である。
誰もが魔王国を自国に引き入れる事に抵抗があるのだ。
「カイルよ。ここは兵力のあるお前が立つのが筋であろうよ。我々も支援はするが、直接交渉の場となるとな」
ルークの妻ナターシャの父でグラニオス王国国王のヴァルディス=グラニオスがカイルに向かう。
カイルはふぅと息をついた。
「わかりました。ですが、ここ100年国交のない状態。どう転ぶかわかりません。当然条約の更新に向けての努力は致しますが、もしもの時にはご助力頂くこと、ここでお約束下さい」
カイルはその場で同盟の誓約書を作り、署名した。
剣を取り、指を触れると署名の横に押す。
そして隣に回した。
「結局さ、どこもやりたくなくて押しつけられた」
「そりゃそうだよカイル。もう長いこと、どこの国も戦争らしいことやってないんだ。うちぐらいだよ、戦力維持してるのは」
「リゥトスはそう言うけど、いいのかね、あれで。僕、大陸全部取れそうな気がするわ」
「おいおい、やめてくれ」
「やんないけどさ」
カイルはため息をつく。
「魔法を便利に使いすぎてるから新しい発想が生まれない。攻撃魔法は使うことが少ないから進化しない。結局魔法が足を引っ張ってるんだよなー」
「まあうちも、最近までそうだったがな」
「そのくせ物流網が凄いとか、商業誘致とか、そっちはノリノリ。自分らでやれよ。な」
「いや、そこはお前じゃないけどな」
「うっ。確かに。タケシなんだよなー」
リゥトスがフッと笑う。
「どうやって連絡とるんだ?」
「向こうから来るみたい。こっちは船じゃん。向こう羽根あるし」
「とりあえず待つだけか」
「あー。もし船で来ても、最初からカメスラボールぶっ放さないでね」
「あぁ。攻撃されるまでは止めとく」
「うん。あれ多分、彼らには未知だから」
「フフッ。そうだな」
タケシは川沿いの道を自転車で走っていた。3輪自転車はすでに普及し始めているが、タケシのは2輪。ついでに変速機付きにしたので、テスト運行中。
風に吹かれながら気持ちよく走っていると......
「ん?でっかい鳥やなぁ......届くかな?」
と空を見上げて自転車を止めた。
腰に差したパチンコと、ポケットから胡椒玉。
川向うの鳥をめがけて、思い切りゴムを引く。
「行けっ」パシューン
鳥が森の中に落ちていく。
「やったー。まだ腕落ちとらんな」
また自転車にまたがると、キコキコこぎ出した。
「陛下、やはりあちらはアルネア王国を立てるようですが、いかが致しましょう」
「ふむ。使者を立てるか......いやまず書簡だな。ヴェルガード、飛んでくれるか。直接王に届くようにしてくれ」
「投げ込みでよろしいですか」
「うむ。突然お前が現れたら、腰を抜かすであろうしの」
「承知しました。夜にでも」
そこに、真っ赤な目をしたオルフェンが駆け込んだ。
「陛下!」
「ん?オルフェン帰ったか」
「またやられました!」
「はぁ?」
「変わった乗り物を見つけまして、止まって見ておりましたら、突然謎の玉が」
「今度もカー?」
「いえ。男が.....その乗り物に男が乗っておりましたので」
「んー。その男を.....調べるか......だが、お前ケガはないんだな」
「はい。くしゃみがすごくて、しばらく飛べませんが、体は全く」
「意味がわからん........」
「リゥトス、これだ」
「どうやって届いたんだ?魔王国から」
「夜中にさ、窓をコンコンってするから、開けてみたら置いてあったんだ」
「なんだか、らしくないよなー」
「でも、これ見てごらん」
「ん。条約更新と国交回復のお願い?」
「あぁ。署名見て。ゼルヴァーン=ドラグニル。これ、200年前条約締結した魔王だ」
「てことは、まともな奴だな」
「うん。多分」
「で、返事どうする」
「使者を受け入れよう。2名位で。窓に置いとけば取りに来るみたいだから」
「丁寧だな」
「うん。実に紳士的」
「陛下、お返事が届きました」
「おぉ。見せよ」
カイルからの書簡を、ゆっくり隅々まで読んだ。
「使者を受けて頂けると言うことだ。来月だ。ただ場所が.....ミナセ領主宅?」
「やはり王都では人目がつきますゆえ」
「んー。大丈夫かなぁ.....謎の玉」
「領主宅というのであれば、直接空から降りればよろしいかと」
「そうだな。では承知したと送ってくれ」
「はい。窓に箱がつけてありました。先方も、この方法で安心されたと思います」
「ではヴェルガード、そなた従者を1人つけて行ってくれるか」
「承知致しました」
コンドウ家の縁側。タケシが鼻歌交じりに木を削っている。
「あー。肩凝ったー」
首をグルグル回していると。
「あ。デカい鳥や」
パチンコを持って立ち上がる。
「2羽かー。デカい方やったら.......」
グインと引いて、パシューン。
「へっへー♪」
タケシ宅の裏山の森の中。
「ヴェルガードさまぁー。へっきゅしゅん」
「はーっくしょい。くそー」
夕方ーー
「おっかしいなー」
「ルーク、どないしたんや」
「お客さんがねー。来るはずだったんだけど」
「来んの?」
「うん。家わかんなかったのかなー?」
「あー。森の中やしなぁ」
「まぁいいか。今度は地図書いてもらお」
「陛下.....申し訳ございません。また謎の玉にやられました」
「何!?」
「すぐ近くまで行っておりましたが、くしゃみが収まらず、あえなく帰ってまいりました」
「すぐに詫びの手紙を出せ。あと、謎の玉だが.......」
「リゥトス、ルークの近くで謎の玉に襲撃されたみたいなんだけど......」
「はぁ?謎の玉?」
「うん。くしゃみが止まらくて行けなかったって」
「おいそれって」
「やっぱ......タケシ?」
「しか.....ないだろうな」
「もー。今まで3回やられたってよ」
「アイツ.......」
「よし。次、タケシんちにしちゃお」
「いいのか?」
「伯爵家だし。いいでしょ。ルークもいるし」




