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謎の玉

サラディアの帰り道、タケシは自ら手綱を取った。カツミが御者台に並んで座る。

「たまにはゆっくり帰ろ」

「うん。久しぶりや」

蹄の音が軽快にリズムを踏む。

「なんか肩の荷が降りたっちゅうか」

「でも領主はあんたやから、たまには行かなあかんよ」

「わかってる。でも安心したわ、俺」

「レオン、もう尻に敷かれてたな」

カツミがクスッと笑う。

「いつまでたっても、かわいいてしゃあないんよ、アイツにとってリシュアは」

「うちは?」

カツミに顔を覗き込まれたタケシ。

「あー。かわいいかわいい。めーっちゃかわいいでー」

「よしよし」

カースケが「カ」と短く鳴いてフワリと飛び立った。


カースケが戻って来た。

普段と変わらない様子で、タケシの肩に止まる。

「ん?魔物がおったって?」

「カ」

「珍しいな、街道沿いに出るなんて」

「道の駅大丈夫かな」

「まあ冒険者駐在しとるし、大丈夫やろ」

カツミが御者台の後ろをごそごそする。

「出しとこ」

カメスラボールの箱を出す。

「だわな」

タケシがニッと笑った。


ミナセに近い道の駅。数軒の屋台と休憩所の馬車だまりだけの小さな駅で、タケシ達は馬車を停めた。

「どうする?もうすぐ暗なるし、ここで泊まるか」

「そやね。このまま行っても夜中になるしな」

2人でのんびり休んでいると、又カースケが飛んでいった。今度は胡椒玉を咥えている。

「優秀やな」

「マシロはどうなん」

「きゅる?」

一応尻尾を立てているマシロ。

「期待してないで」

尻尾がしゅるんと下がった。


「カ」

「お、帰ったか。それにしてもちょっと変やな」

「そやね」

「大した魔物やなさそうやけど」

「帰り、ギルドに寄ってみる?」

「うん」

タケシは首をかしげた。

もし危ないようやったら......魔物避けせなあかんなぁ.......



「そうか。森の魔物には変わりないようだがな」

ギルド長のスサノーは首をかしげた。

「街道からも被害報告はないぞ」

「カースケの勘違いかな?」

スサノーがカースケを見る。

「カースケ、どんな魔物じゃった?」

じっとスサノーの目を見るカースケ。

「ん?これは.....」

スサノーが眉を寄せる。

「ここいらの魔物ではないな。かなりの上位種か、もしくは.......」

「もしくは?」

「いや、わしも見たことはないんじゃが。魔人、かな?」

スサノーが首をひねる。

「魔人?」

「んー。そうか.......そろそろか。更新時期が」

「何の?」

「魔王国との条約がな。わしはそのへん詳しくないんだ」

「不可侵条約.......」

「なんじゃ、タケシは知っておったか。100年ごとに更新だとテラが言っておったのが......100年前位だったと」

「もー。ロングスパンで意味不明や」

「まあ心配いらんだろう。前回も特に変わりはなかったしな」

「ほんまかいな」

「念のために街道警備は強化しておこう」



家に帰ってきて、座敷でゴロリと横になる。

「さすがにちょっと腰に来るなー」

「まあそれなりの年やしな」

「あ、タケシさん、帰ってきたっすか」

アキラが座敷に入ってきた。

「お前もええ年やから、スカスカ言うのやめや」

「え?だめっすか」

「あかんわ.......こいつ」

「昨日ポルトスから魚届いたんで、〆て保冷箱に入れてますよ」

「やった。今日は塩焼き〜」

ポルトスからは、生魚が届くようになった。だがアルネアの人にとって、生魚は扱いのハードルが高いらしく、干物や加工品の方が人気があった。それぞれの領で定期便の中身を指定して、月1〜2回利用している。

タケシのところには、毎月マルセルが贈ってくれていた。

「ようけあるやん。みんなで食おか」


夜、みんなで魚を堪能したあと、タケシはルークを呼び止めた。

「美味しかったー。ごちそうさま。あ、カエル君元気だった?」

「ああ。幸せそうな顔しとったわ」

「ま、彼は本来勇者だから、任せて大丈夫だよ」

「うん。それよりな.......」

タケシは道中の魔物の気配と、ギルドでの会話をルークに話した。

「あー。不可侵条約ね。たしか来年位じゃなかったかな」

「魔王国ってどんなとこなん?」

「僕も、本で読んだだけでさ......」


ドラグニル魔王国。

200年前、長い戦争状態の中、魔王ゼルヴァーン=ドラグニルが即位後、人族連合との不可侵条約を結んだという。

「魔王国と森の魔獣は、魔がつくけどちょっと違うんだ」

魔王国には魔人が住んでいて、その姿は人に近いが、角や牙、羽根を持つ者ももいる。

一方魔獣はケモノ。どこにも属さないし知能も低いので、自由に狩れる存在だ。

「え?ほなドラゴンとかは?」

「魔獣寄りだねー。強いけど」



その頃ーー

魔王国。

「どうしたオルフェン。目が赤いぞ」

「陛下......偵察に行っておりましたが、謎の玉にやられて」

「謎の玉?」

「はい。私、半日くしゃみが止まりませんで。何とか帰ってこれました」

「ほぉー。新しい兵器か?」

「いやー。軍はいませんでした。街道近くの森に潜んでおったのですが......」

「軍ではない?」

「はい。たしか直後に.....カーと」

「カー??」

「はい。聞こえました」

「??」

「陛下、アルネア王国のここ数年の動きは、ただごとではございません。夜も、街道は馬車が明るい火を照らして行き交っており、その数も増える一方。謎の玉は気になりますが、やはりしっかりとお調べになる方がよろしいかと」

「そうか。皆には注意するように伝えよう」

「あと、特に気になるのはやはり今回私が参りましたミナセと言う街で」

「ミナセ?」

「はい。前回の更新時ではまだ小さな村だったようですが、大きな街になり、さらに、ここを出入りする馬車が特に多いのです」

「ほぉ」

「なので、もう少し探って参ります」

「うむ。頼んだ。気をつけてくれ」

翼人オルフェンはさがっていった。

「謎の玉か......」

魔王ゼルヴァーンは呟いた。

「ともかく.......なんとかせねば.......」


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