表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/24

祝福の街

サラディアに向かう街道を、黒い馬車が走っている。前部の御者台と後部の幌付き荷台に分かれたトレーラータイプの黒馬車には、タケシとカツミ、クニオとスセリが乗っている。

「なあ、神様やったら、馬車使わんでも行けるんちゃうん」

タケシがクニオを横目で睨む。

「だってタケシの馬車、乗ってみたかったんだもん。ね、スセリ」

意に介さないクニオ。

「ええ。道の駅にも寄るんでしょ。楽しみー」

スセリも全く動じない。

「狭いのに......」

「タケシ、諦め。クニオもスセリもミナセから出たことないんよ。うちらが頼んでるんやから」

「そうやけど」

「帰りはピュッと帰るよ。僕らも、あんまりギルド留守にできないし」

「休んでるんか」

「テラに頼んでるけどね」

「お土産いるな」

「うん。えっと」

紙切れを出した。

「キノコのカレーと、ジャムのセット、それから.....ミックスナッツ」

「まあええわ。それは俺が見繕う」

「やったー。僕らの分も?」

「はいはい。わかりました」


レオンとリシュアの結婚式。

タケシとカツミは、散々悩んだあげく、婚活ギルドの門を叩いた。

ーー小さな加護でいい。授けてやってくれないか。

神様は、普段ミナセから出ることはない。

テラが、王都のカイルに会いに行くのと、たまに、冒険者ギルドのスサノーとヤマトが、魔物討伐で出る程度。年に1度あるかないかだ。

「だって、タケシ達の娘と弟子でしょ。当然行かせて貰うよ」

と、クニオは快く引き受けてくれた。


街道は整備されていて、所々に道の駅や馬車基地がある。

普通の馬車旅なら4日かかっていた行程も、タケシの馬車の改良で夜間走行が可能になり、途中で馬を変えることで、どんどんスピードが上がった。

必死で飛ばして2日だったのが、楽に2日で行けて、休憩所や食事処まである。

もはや馬車旅は楽しめる旅になっていた。



道の駅にはクレスの他にも屋台が出ていて、串焼きやら春巻きやら、好きな物を買って食べる。

スセリとカツミが飲んでいるのは、ミナセサラディア間で今ヒットしている、タピスラドリンク。ピュアフローパウダーで作ったタピオカがサラディア産フルーツと豆乳に入っているのだ。

「カツミちゃん、これすっごくおいしい」

「豆乳はグレイスビーンズ使ってるんですよ」

「この頃は、ミナセでも豆腐やおあげさんも売ってるけど、グレイスビーンズのはやっぱり一味違うわね」

「カツミちゃん、今クレスって何店舗あるの?」

揚げ春巻きを齧りながら、クニオが聞いた。

「工房は10かな。で各工房から道の駅へ2店舗づつ出てる」

「すごーい」

「なんかいつの間にか増えちゃって」

「大変だね」

「そうでもないよ、こういう店舗は自由にさせてるの。オリジナルがある方が楽しいし」

「そっか」クニオが頷きながら、ふらっと立ち上がる。

目が、買い物中の美女に向いていた。

「クニオ!」スセリの声が凄む。

「相変わらずやね」

「......だって」

「だってじゃない!」




「タケシ、綺麗な街だね」

サラディアは、災害から約7年。すっかり街は整備され、新しい家が立ち並んでいる。当初建てられた小屋は、住人達が家を建て退去すると、改築され、宿や商店に変わっていた。

街路樹はまだ小さいが、鉢植えの花が並べられ、広めにとった馬車道に、彩りを添えている。

人通りの多い公園通りは、露天が立ち賑わっていた。

ゆっくりと黒馬車が通ると、自然と人が割れる。そのまま城趾公園に入って馬車が止まった。

タケシが降り立つと、「領主さまー」と声が掛かった。

そして、クニオとスセリが降り立つと、民衆から「おぉー」とどよめき。

クニオは、白装束に髪を耳の横で結わえた正装。スセリは巫女姿。

初めて見る「神様」に、住民達が手を合わす。


公園に設えた祭壇に進む。

レオンとリシュアが待っていた。

成人を迎えたリシュアは背も伸びて、少女の面影を残したまま、美しい娘になっていた。

純白のドレスに身を包み、髪に住民の子供達が作った花飾りを付けている。

レオンも白い礼服。だが.......

タケシが駆け寄ると、背中のハリセンを外した。

「もういらんやろ」レオンの目を見る。

頷いたレオンは、リシュアの手を取った。


クニオがゆっくりと祭壇の前へ進む。横に鈴を持ったスセリ。

その場の空気が、すぅーっと静まる。

両手を高く上げ天上に祈ると、ひざまずくレオンとリシュアに向き直った。


神はーー

その誓いをもってーー

契となすーー


シャリンシャリンシャリン


2人の頭上にスセリの鈴が鳴る。

リシュアの手を、レオンの大きな手が包みこんだ。



2人は花で飾られた馬車に乗り、街に出る。

寄り添い時折見つめ合う2人に、住民達の花びらのシャワーが降って、街は歓喜に包まれていく。


「タケシ、彼らは大丈夫だよ」

声をかけたクニオは、もう元のパーカーとジーンズ姿に戻っていた。

「そっか。うん」

目の先で、2人が沿道に手を振っていた。

「ね、お土産買ってー」

「お。そやな、行くか」


教会で、父母の墓前に結婚の報告をして、レオンとリシュアが帰って来た時には、もうクニオ達の姿は消えていた。

「お父さま、神様は?」

「土産持って帰ったで」

「お話したかったです」

レオンがリシュアの頭にポンと手を置いた。

「リシュア、クニオ様とは会わなくていいよ。リシュアは綺麗過ぎる」

「??」

「ハハ。それ言えとる。スセリにまた怒られるわ」

「??」


「レオン、これからお前はレオン=コンドウや」

「はい、師匠」

「師匠はもう終わりやろ」

「あ.........」

「お前は俺の息子や。ほんでこのサラディアを統治するんや」

「はい........父上」

レオンは真面目な顔でタケシを見ていた。

「父上!?」

横でカツミがプッっと吹き出す。

「しゃあないな。父上やわな」

「うぅー。なんや背中がモゾモゾするけど、まあええ。ローデリック、レオンに任せるからな」

「はい」とレオンを見るローデリック。

「レオン様。今後も厳しく参りますぞ」

「はい」

「はいではありません、もっと堂々として下さい」

「うむ。わかった」

胸を張って見せるレオンに、その場の空気がかえって和んだ。













評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ