機関車は行く
シュルシュルシュルースポン
シュルシュルシュルースポン
タケシは縁側でヨーヨーの練習中。
「又差し戻し喰らいました.....」
ガックリ肩を落として、ユリウスが母屋に戻ってきた。
「工房長チェックか」
「はい。もう1回工程表見直してみます」
「ああ。アイツの許可ないとうちのハンコ押せん。うちは厳しいで」
「コンドウクォリティー......」
「そうやで。あ、お前の案な、ルークがやりたいって」
「レンタル?」
「うん。駅に置き場付ける方向で直しとき」
「やったぁ。わかりました、追加します」
ユリウスの案。それは駅ごとに3輪自転車やキックボードを置いて、降車後の足にするというもの。
晩ごはんの時に、思いつきをタケシと話しているうちに、具体的になって来た。
返却時に代金の半分を返金することで、未返却を防ぐ。又他の駅返却もできるなど、カツミも一緒になってワイワイ盛り上がった。
「チャリとボードも売れるしな」
「在庫整理出来ますね」
「へへっ。よくやったぞ。褒めてつかわす」
シュルシュルシュルースポン
何とか工房長の許可が出たのは、2カ月が経ったころだった。
「見積もりってこんなに手間だったなんて.....」
「お前ゼロからやし、しゃあないよ。よう頑張ったで」
「ほな役所行って、ルークに提出」
「はい!」
「ねえタケシ、これ、キカンシャ6号の。凄いじゃん」
朝、ルークが座敷に顔を出した。
「やりゃ出来るんや」
「時間かかるって聞いてたけどさ、ここまで丁寧なの初めて」
「ハハッ。普段適当やもんな」
「そうだよ。バクっとじゃん、いつも」
「それは下地があるから。バクっとでもちゃんとできてるやろ」
「そうなんだよなー」
「アイツに手抜きは教えられん」
「キカンシャやりながらだろ?すごく頑張ったんだね」
「ハハッ。ほんでいつからかかる?」
「すぐにでも」
「ほな契約書作らせて......まぁ1週間待って」
「はいはい。役所でお待ちしております」
帰りかけて、振り返るルーク。
「あ、タケシ。僕のヨーヨー出来た?」
「そこの籠に入っとる」
「やったー。いただきー♪」
更に1月後、資材や人員の手配も終わり、トロッコレールの敷設が始まった。
「行かんでええんか」
「いやだって、キカンシャせな」
「今日ぐらいええのに」
「あっちは僕いなくても出来ますし。昼に見に行きます」
「そっか。ご苦労さん」
母屋の前に馬車が止まった。
降りてきたのはギルベルトだった。
ギルベルトは、鉱物資源に頼りきった状態から抜け出す事を考えていた。
カイルからポルトスの様子を聞き、グラニオスの海岸地域でもできないかと思い、そこの領主を連れてポルトスに行ったのだ。
マルセルにも会い、工場等の視察をして来た。
「缶詰を輸出したいんです」
「ほぉ」
「西の方はポルトスも魔王国もあって流通してますが、東まではあまり来てません。実際グラニオスにはないですから」
「そやなぁ、遠いもんな」
「アルネアに出してもいいけど、日持ちするものなら、輸出の方がいいんじゃないかと」
「あてあるんか?」
「鉱物出してますから、そこから繋ぎつけられると思います」
「缶詰だけやと、そんなに儲からんかもよ」
「いえ。海岸沿いは鉱山もなくて、仕事が少ないんです。このままじゃ若いものが出ていってしまう」
ギルベルトの後ろに座っている領主が、大きく頷いた。
「雇用の確保か。ええんちゃう」
「で、タケシさんにお願いに来ました」
「資金は?」
「貴族から取り上げた金がまだ残っています。彼も出すと言っていますし」
後ろの領主、また頷く。
「よっしゃ。分かった。ほんなら......」
「ただ今帰りましたー」
ガラガラと玄関が空き、ユリウスが帰ってきた。
「あ、兄上......」
座敷を覗いたユリウスが、その場に直立した。
「ユリウス......お前......」
真っ黒に日焼けし、すっかり逞しくなったユリウスに、驚くギルベルト。
「タケシさん、明日予定どうり一部開通式やりますから、出てくださいね」
「おう。分かった」
「僕、ちょっと工房でチャリ出す準備して、そのまま退勤便行きますから」
「お、おぅ.......」
「失礼します」
ユリウスは、客に向けて礼をすると、そのまま出ていった。
「タケシさん、ユリウスですよね」
「あぁ......線を引いたんやろ」
「........」
「明日、見てから帰り」
「はい。そうします」
「ルーク、トロッコ順調やな」
「うん。ユリウスのおかげだよ」
「俺の領もやるかな」
「サラディアかい?そりゃコンドウ領だし、遅いくらいだよ」
「工房あるから基本設計だけで行けるんやけどな」
「うん」
「ユリウス行かせたいんよな」
「あー。でも一応さ、ミナセ送りってことになってるしねぇ」
「そうやけど.......監視付きならええかな」
「監視ってもしや.....」
「へへっ」
「ユリウス、今度サラディアにもトロッコやろうかと思てな」
「あ、タケシさんの領ですね」
「うん。お前行って」
「はぁ?」
「父上、ご無沙汰です」
「おぉレオン、来たか」
サラディアからレオンが到着した。
「見てきたか」
「はい。いいですね。是非やりたいです」
「そやろ。ほんでな、ユリウス預けるわ。1ヶ月」
「ユリウス=グラニオスですか」
「うん。でー、これやる」
「それは?」
シュルシュルシュルースポン
「な。ええやろ」
「新しい武器ですか!!」
「精進せい」
「ハッ!!」
シュルシュルースポン
シュルシュルースポン
「さすが勇者やなぁ。薪、置いたろか」
「はい」
シュンカンスポン!シュンカンスポン!
ーーこの人と一緒に行くなんて.......僕、生きて帰れるんかな......




