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3兄弟

コンドウ家の前に、馬車が止まった。

「ギル兄さま!」ナターシャが飛び出して来て、ギルベルトの胸に飛び込んだ。

「ナターシャ。心配かけたな」

顔を上げたナターシャの目に、馬車から降りるユリウスが映ると、つかつかとその前へ立った。

「あ、ナターシャ」

「ユゥ兄さま.....」と、言うが早いかユリウスがぶっ飛んだ。

「ウソっ。グーで殴るか」

タケシがギョッとする横でルークがククッと笑っている。

「ね、大丈夫でしょ」

「いや別の心配が」

「グラニオス家はね、ナターシャが一番強いの」

「マジかー」

ユリウスが襟首を掴まれ、引きずられていた。


座敷の隅に、頬にスライムを当てたユリウスが小さくなっていた。

ギルベルトは初めての和室にキョロキョロしている。

「変わった城ですね......」

「あ、足崩してね、痺れるよ」

カツミがお茶を出している。

「俺の嫁はんや」

「あれ?お客様?」アークが顔を出す。

「魔王国の第2王子や」

カバー付きの角に、ギョッとするギルベルト。

「うちの兄です。よろしくお願いしますね」

「お昼まだやろ、支度するわ」

「あ、手伝いますね」

「僕もやるー」

アークとナターシャがカツミと共に台所へ行った。

「ユリウス、ここはね、みんな働くんだ。領主だろうが貴族だろうが関係ないから」

と、ルークが言うと、ユリウスは小さく頷いた。

「あー、肩凝ったー」

いつもの作業服に着替えて来たタケシが、台所をのぞいている。

「やっほー、ラーメンや。俺チャーシュー大盛りな」


「コンドウ伯爵、これ、美味しいです」初ラーメンに感動するギルベルト。

「伯爵やめて」ズズッ

「.......」言葉も出ないユリウス。

「俺、気色悪いねん伯爵呼び」ズズッ

「.......」ズルズル

「ユリウス、旨いか」

ユリウスが頷く。

「仕事して食ったらもっと旨いぞ」ズズッ

「はい」


翌日から、ナターシャの熱血薪割り指導が始まる。

「ユゥにぃ。腰を落としなさい!」ピシッ!

「真っ直ぐ下ろすのです!」ピシッ!

ナターシャのハリセンがユリウスの尻に容赦なく飛ぶ。

「ここはみんな薪割りから始まるのです!たとえ勇者であろうと」ピシッ!

「ルーク、勇者って?」ギルベルトが尋ねる。

「あー、居候4号ね。タケシの養女の婿で、元タケシの弟子の勇者」

「意味がわからん」

「ちなみに居候2号は僕。3号がナターシャで、5号がアークだよ。ユリウスはめでたく6号だねー」

「ナターシャもか!」

「うん」

「1号は?」

「アキラくん。あ、来た来た」

「ちーっす。ハハッ、やってますねー」笑いながら母屋に入っていく。

「彼はポンプの発案者だよ」

「えっ!」

「後で工房案内する。ミナセの街にも行こう。ここには魔道具はないけど、便利で快適な暮らしがある。君の常識はきっと崩れる。しっかり目に焼き付けるといい」


その後ユリウスは、1日中トロッコの動力車係をさせられ、全身筋肉痛に襲われるのであった。



「ギルベルト、ポンプ隊行かすからな」

「ポンプ隊?」

「アキラ、2編隊組んどって、商会車付きや。行けるやろ」

「了解っす。アルネシアと連絡取って、国費投入願い出しときます」

「ギルベルト、暮らしがきつそうなとこから入れるんや。領主が処分されたとこも含めて、優先順位考えるんやで」

「わかりました」

「バルサ、トロッコ隊は行けるか」

「もう仕様も出来上がってますから、うちから2人出したら後は現地のもんでいけるでしょう。ワシもチェックに回ります」

「うん。そしたらアルネシアの方は国に任せて......ギルベルト」

「はい」

「トロッコ敷設を国と交渉し。材料調達出来ても資金足らんやろ。補助金交渉はお前の仕事や」

「わかりました」

「ミナセ、見てきて気になるもんあったか」

「あ......ありすぎて......」

「そうよな」

タケシが笑う。

「アークに言うて、こことお前んとこを翼人便で繋げ。わからんことは、ほっとかんと聞いてこい」

普段ヘロヘロしているタケシが、一気に段取りを決めていく。その様子にまた驚くギルベルト。

「急がんと。でも1個づつきっちり進め。カイルはな、ほっとっても街道整備するはずや。そしたらうちの工房も動くから」

「わかりました」

「馬車はうちのん乗って帰れ。乗り心地全然ちゃうぞ。これから何度も王都に来るやろ。俺からの州長就任祝いや」

「あ、ありがとうございます、タケシさん」

「ああ頑張れ。ほんで自分で立てるようになれ」





朝から3杯メシをかき込むユリウス。もちろん納豆も乗っている。

「めっちゃ食うな」笑うタケシ。

「スピード落ちたら怒られるんです」モグモグ

「ハハッ。みんな容赦ないもんな」

「名前つけられました」モグモグ

「なんて」

「キカンシャ6号」モグモグ

「なにそれ」

「アキラ君ですよ」モグモグ

「あ、先輩の命名ならしゃあないな」

「あー。食った。行ってきます」

「はいはい。行っといで」

ユリウスの目下の仕事はトロッコ動力車専任運転士。つまりヨイショ係である。

朝の通勤タイムに3往復。夕方退勤タイムに3往復。

最初1往復でへばっていたが、徐々に慣れてきた。

昼間はタケシのところに戻って、馬車整備を教えて貰っている。

「どうです?タケシさん」

ナターシャが様子を見に来た。

「あぁ、大丈夫や。体動かすんが1番ええねん」

「ユゥにいは、サボり魔ですから」

「うちは目が多いからサボれんわ」

「ならいいですけど。何かあったら言ってくださいね。私が〆ますから」



「コラー、キカンシャ6号、急げー」

「頑張ってますって、ヨイショ」

ーーいくら罪人でも王子なのにー

「はい。これあげる」

「あ、すんません。ヨイショ」

ーー飴?食っていいの?いいか。

「6号ー。飴食っとらんと漕げー」

「うるさいボケ!うわぁ!」

「あ、それ本音飴」

「誰がボケやねん!」

「すんませんー。ヨイショ」

ーーこわー。おちおち飴も貰えん。








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