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新たなカタチ

アルネシア郊外の魔導車開発施設に、タケシは来ている。

「ウッホー。すっげー。流石国家施設やな」

魔導車の進捗見たくない?などと言われ、タケシはヒョイヒョイ乗ってきた。

「今日はゆっくりできるんだろ?」

「うん。隅々まで見せてもらうな」

ご機嫌のタケシに、カイルは後ろを向いてベロを出す。

「じゃあゆっくり見てって。後で僕の部屋でね」

「おー」


「あれな、めっちゃかっこええけど、車としては無駄多いで」

「??」

「要らん装飾外して流線型にな。ほんなら空気抵抗減ってな」

「リュウセンケイ?」

「クウキテイコウ?」

「ちょい紙あるか?」

タケシが紙に書いたのは、新幹線の絵。

「走るとな、空気の流れがこうなって」

「ほう」

「もっと早なる。多分魔力効率上がるんちゃうか」

「ねえ、ちょっと気になるんだけど」

「ん?」

「タケシのいたとこだとさ、こことミナセ、どれぐらいで行けるの」

「んー。馬車で1日やろ、30分かな」

「えぇー!!」

カイルとリゥトスが思わず立ち上がった。

「いや、もっと早いのもあったけど。レールから浮かせてな.....あ、ここは無理やで。ぜーんぜん」

「うん。だよね。そう、そんなに違うんだ」

カイルが座り直す。

「まずはミナセまで半日。それで十分やと思うで。安全性の方が大事やし」

「そうだよね。分かった。設計に伝えとくよ」

「あ、名前つけたろ」

「ん?」

「ヒカリ号」



「やっぱり呼んで良かったな」

「そうだな、自治州とはな」

グラニオス王国の実情を聞かされたタケシは、驚きながらも一つの案を提示した。

国としてはアルネアになるが、グラニオス州として自治を認めるというものだ。

アルネア王国として、通貨を統一し、基本法もアルネアに準ずる。だが一方、グラニオス独自の州法を定めることも許可し、独自の文化を守る。

軍は国軍に統合し、アルネアから派遣する。

鉱山運用はアルネア国領とする。

そして、グラニオスの皇太子が州長として州をまとめ、その補佐にはアルネアからの人員を置く。

州として名を残し、その自治を、たとえ制限付きであっても認めることで、グラニオス王国国民の反発を回避し、王家のメンツを守る。

「あちらには、随分いろんな国のかたちがあるのだな」

「王政は少ないと言っていたね」

「王がいない国ってどういう事だ?」

「わかんないよ。でもそう言うとさ、ミナセでやってる住民会議ね。ああ言うのかもね」

「んー。やっぱりわからん」



グラニオス国王は、カイルとの会談から帰国すると、すぐさま軍を投入して国境を封鎖し、不正の摘発を始めた。

次々と投獄され、国家反逆罪としての厳しい処分が下されていく。

主犯格は処刑され、一族は爵位剥奪。領地没収。財産接収。

軽い者でも国外追放。

そして、第2王子ユリウスも投獄されている。

国王ヴァルディスはその処遇に悩んでいた。

「本来なら処刑もやむなしだが......」

「父上、ユリウスが主導したわけではありません。むしろ利用されただけです」

「じゃがな.......罪は罪なのじゃ。罪人であることに変わりはない」

皇太子ギルベルトは、憔悴しきった国王ヴァルディスに向かう。

軍服の踵を揃え、腰の剣の柄に手を置いて、まっすぐ前を見つめて言った。

「父上。私は、このグラニオスの最期の王としての役割を全うする覚悟は出来ております。ユリウスの処分は、私が」

そしてグラニオス国王ヴァルディスは、この傾国の不祥事の責任を取って退位し、その後をギルベルトに明け渡した。


ギルベルトは、その玉座に座ることなくアルネアを訪れた。


緊張の面持ちで顔を上げると、柔和な顔が笑みをたたえていた。

「よく来た。カイル=アウレリウスだ」

ギルベルトは、差し出された手を握り、ハッとする。それは剣ダコの出来た男の手。

「ギルベルト=グラニオスです。グラニオス国王として参上致しました」

「そうか。ではこちらへ。今後について話そう」


「罪人の処分はほぼ終了いたしました。財産を差押えておりますので、ご都合いただいた資金の返済はいたします」

「そうか、だがそれでは国は回らんだろう」

「.......はい」

「ギルベルト。もはやグラニオスは国家としての機能は崩壊している。分かるな」

「はい」

「では、これを読んでくれ」

書類を差し出すカイル。

それは、タケシの提示した、グラニオス自治州案だ。

一字一字丁寧に読むギルベルト。

「カイル陛下、これは......」

「この条件。のめるか」

「あ.....ありがとうございます」

「国はなくなる。城は明け渡し。君を含め、爵位は一旦剥奪する。いいな」

「グラニオスの名を.......残していただける......」

ギルベルトの目が真っ赤に潤む。

「あぁ。頑張れば爵位も回復する。アルネアは実力主義だ。国家として、君等の自治をサポートするよ」

カイルはギルベルトの肩をポンと叩いた。


「ユリウスは、投獄しております」

ギルベルトは苦しげに口にする。

「そうだね.......難しいところだが、私は処刑の必要はないと思うよ。ただ、このままグラニオスに置くことも出来まい」

「はい。罪人としての兵役も考えましたが」

「分かった。では調印式の時にこちらへ連れておいで。アルネア流で裁くから」


そして1ヶ月後の調印式。

居並ぶアルネア貴族の前で、グラニオス城の明渡しと、自治州としてアルネアに属する調印が行われた。

ギルベルトが震える手を抑えながらサインすると、貴族達からの拍手が巻き起こった。

それを静かにカイルが制する。

「ギルベルト。ご苦労だった」

そう言うと、下座の貴族達を下がらせた。

残っているのはルーク、リゥトス。そして頭に?を付けているタケシ。

「さて、グラニオス州長ギルベルト。ユリウスをここへ」

「はい」

ユリウスが連れてこられた。

頬はこけ、うつろな目でうなだれたまま、力なく立っている。

「ユリウス=グラニオス。そなたの罪は重い。贖罪の意思はあるか」

「はい」と小さな声。

「では、アルネア王国として、そなたに罰を課す。ミナセ領主ルーク=アウレリウスの元で、再教育と強制労働を命じる」

顔を上げるユリウス。

「はい」力ない声だが、まっすぐカイルを見ている。

「ルーク、良いな」

「はい。父上」

「コンドウ伯爵、良いな」

「へ?俺?」

素っ頓狂な声に、カイルがつい吹きそうになる。

「タケシ、好きにこき使っていいぞ」

「え。マジで」

その様子に不安の色を見せるギルベルト。

「ギルベルトよ。そなたもミナセを見て参れ。あの街は参考になるぞ。コンドウ商会は不可欠だしな」

「はい。承知致しました」


「なあルーク、聞いとったんか」

「うん」

「こき使う言うたかてなぁ」

「大丈夫。ナターシャもいるし」

「そう?てかナターシャの兄ちゃんか」

「うん。見ものだ」

「??」




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