亡国の王
トロッコ運行から数ヶ月。何故か途中に駅らしきものが出来たりしながらも、馬便1日2往復、動力車便は台数が増え、勝手運行されていた。
「まあええよ。みんなが楽になったんやったら」
と、呑気なタケシだが、たまに視察したいという領もある。
が、図面やるから作ったら?と言うと大概引き下がる。
「なんでやろな」
「製品売ってもらうことしか考えてないんでしょ」
アキラが笑う。
「楽したらあかんってええ加減覚えんかい。なぁ」
「そんなもんですって」
「まぁ魔導車出来たらそっちに行くか」
「あ、バルサさんのとこ、どうでした?」
「車はほぼできてるけど、坑道にレール敷くのが大変らしい」
「あー。そこねー」
「魔王国とも連携取れたし、お互いええとこどりしたらええ」
「翼人便?」
「うん。直でやるって」
「ただいま帰りましたー」
アークが、魔導国ツアーの添乗から戻って来た。
コンドウ観光は、今アークが中心になってツアー運営している。
「悪いかったな、急で」
「案外ウケました。王子直々の名所案内と飛行体験」
「そっか」
「僕、又行ってもいいな」
「いや、そこは出し惜しみして。付加価値上げてガッポリや」
「ちぇー。あ、カツミさん、温泉パック買ってきましたー」
「やったー♪サンキュー」
「後、入浴剤とオンスラせんべい」
ドサリと袋を置いた。
一方王都アルネシア。
カイルの部屋で、暗い顔のルーク。
「それは......確かですか」
「あぁ、密偵情報だ。まだ公にはしていないようだね」
「.......」
グラニオス王国の鉱山で起きた落盤事故。
死傷者も出たようだが、隠されていた。
「隠したい気持ちは分かるけど、すぐにバレる。そして信用を落とす」
「はい.......」
「魔道士を使っていたようだ」
「本当ですか」
鉱山管理は国によって違う。アルネアは全て国領として国が管理している。グラニオスは数も多く管理しにくいので、王族や貴族領として管理していた。
又、魔道士による掘削は安くて早い。だが危険を伴うので、アルネアでは完全に禁止されていた。
「あぁ、分割返済日も近いが.....無理だろうな」
「どうなさいますか」
「んー.......出方にもよるが......うちが後を引き受けるとしても、あのままにはできないよ。内部の膿は出さないとね」
「やはり第2王子ですか」
「みたいだね。跡目争いだろうが.......あそこも皇太子は軍人なんだ。多分対立するのは金を流せる貴族。つまり鉱山を持っている奴らだ」
「........」
「親ってのはこういう時辛い。だが時には身を切る覚悟が必要だ。それが国と民を守る王の役目だ。甘いんだよ、ヴァルディスは。情では政治はできない」
カイルが目を伏せ黙り込んだ。
「父上、ナターシャには言わなくていいですか」
「うん。まだいい。あの子はもううちの子だから」
そしてやはり返済日が来ても、グラニオスからはわずかな入金と返済猶予の申し入れだけで、その事実は隠された。
1月程待って、カイルは動いた。
ーー内部監査人の受け入れがない限り、返済猶予は出来ない。
グラニオスは、渋々監査人を受け入れた。当然すぐに崩落事故がバレてしまう。
カイルは事故を隠蔽したことを咎め、事故現場に調査隊を入れ、魔法の使用を確認すると、全ての鉱山の一時停止と鉱山領の内部監査を求めた。
「リゥトス、これで多分動き出す。尻尾を出すぞ」
「絞り込みはできている。やはり普段の諜報活動が生きるな」
「ウチの諜報部は超一流だよ。どこの国も気づいてないだろうさ」
「国内だってな」
「シュートだったか」
速水秀人。タケシ達と同じ転移者で、行商をしながら各地を巡っている。が、実は諜報部の幹部として動いていた。
「あぁ、やはり彼らの記憶の力だよ。本人に言わせると、エイガで見ただけだって言うんだがな」
「エイガ?」
「よくわからんが、好きだったんだと、数字の名前」
次々と明るみに出る不正。賄賂、公金横領、不正申告の税逃れ。
国外に伸びる金の流れ。
そしてそれに絡む第2王子。
「かなり昔からだってな」
「ああ、そのようだ。古いのは巧妙に細工されていて裏は取れないが、逆に近年は雑になっていて、かえって分かりやすい」
「慣れたんだろう」
「結局王子は利用されただけだろうな」
「バカだな」
「で、どうするつもりだ?カイル」
「国を潰すのは簡単だが......何か存続させる手がないか.......」
「うーん」
「ちょっと.......タケシ呼んじゃう?」
「そうだな」
重い空気が漂うアルネア城国賓室。
書類の束を前に、ヴァルディス=グラニオスは瞑目していた。
「もはや返済猶予などという事では済まんな」
ふぅと息をつく。
「全て私の不徳の致すところだ」
カイルは黙って聞いている。
「カイルよ。しばらく待ってくれ。処分は私が下す。このまま国を明け渡す訳にはいかぬ。グラニオスの法に従って処す」
グラニオスの法ーーかなり厳しい処罰が予想された。
「処刑が済み次第、私は退位する」
「わかりました。一旦皇太子殿をお立てください」
「良いのか」
「グラニオスの名を残す方策を考えます」
「すまぬ」
ヴァルディスはいつまでも頭を下げていた。




