線路は続く
トロッコのレールは職人街まで伸び、工房側への引き込みも出来上がり、いよいよ運用開始。
タケシの家の前から工房までは、動力車と小さな荷台を一つ、保守点検用に残している。
が......ほぼ子供達のおもちゃになっている。
コンドウ街道脇のレールを、馬に引かれた10台程の荷台が流れていく。
工房の裏に着くと荷を下ろし、荷積みが始まり、馬を逆につけて戻っていく。
「渋滞解消ですな」と胸を張るバルサ。
「ハッハー。俺等天才やー」タケシはドヤ顔だ。
「タケシー。父が見に来るって」
「げっ。今度はカイルか」
「そりゃーほっときませんって」
「なあルーク、国内にも鉱山ってあるんやろ」
ルークゆっくり指を折る。
「そうですねー。5つ位かな」
「絶対付けたいって言うよな」
「でしょうな」とバルサが頷く。
「ガッポガッポかな」ニヤッとするタケシ。
「レール引くの面倒ですよ。人手いるし、腰痛いし」
バルサは、もう十分遊んで満足していた。
「図面売って、丸投げ?」
「ワシ、その方がええなー」
「タケシさん。売ったらガッポ。やったらガッポガッポ。どっちにします?」
「うぅー」悩ましい。
トロッコ運用開始から1週間もすると、様子が変わってくる。
「人乗っとるやんか!」
「便利なんで」
「いや、荷物用やって」
「ええんちゃいます?」
「乗車料金取るぞ」
「ついでやないっすか」
「くっそー」
その流れ、もはやタケシにも留められず。
程なく、最後尾車両に手すりと椅子がついた。
「お前ら、通勤にも使うてるんか」
「あ、通勤は動力車で」
「ちゃんと順番に漕ぎ係決めてますから」
「......」
「あの......線路もう1本」
「自分らでせい」
「やったー。工房長、許可出ましたー」
「よっしゃ」
「お前止めんかい」
「え?なんで?」
結局勝手にレールが伸びだした。
「タケシ、聞いてた話と随分違う」
「へ?」
「荷物運ぶ車って」
「いや、運んでるで」
カイルが視察に来ている。
容赦なく、後部車両に慣れた様子で人が座っている。
「そうだけど......あっちは?」
ヨイショ、ヨイショ、ヨイショ
通勤トロッコが目の前を、職員を乗せて通り過ぎる。
「タケシ......ずるい」
「は?」
「乗せて」
結局カイルも散々トロッコ遊びを堪能した。
「あー。楽しかったぁー」
「お前、王様があんなにはしゃいでええんか」
「ここなら平気。アルネシアじゃやんないよ」
「ほんまにもう......」
「お茶入ったよ。みんな手ぇ洗ってな」カツミが声をかける。
「ほら、完全に子供扱いやん」
ゾロゾロと井戸に向かった。
「あれ、鉱山で使えるって?」
「うん。元々そういうもんや」
「じゃあやって」
「軽いなー。お前、そもそもなんでいっつも丸投げするねん」
「ん?」
どこが悪い?というカイルの表情に、ついタケシが口を滑らす。
「ゼルかて自分とこでやるって言うて」
「あー。図面タダで渡したんだって?」
「あっ」
「タケシはアルネア国民じゃん」
「うっ」
「その上伯爵じゃん。国益に寄与するのは当然でしょ」
「んー」なにも言い返せないタケシ。
カイルが地図を出してくる。
「丸つけてるところだよ」
「ほな.......共同事業にして。鉱山のことは鉱山従事者やないとわからんぞ」
「そうだねぇ......確かに......」
「うちから技術提供、後は現地で全部やらせる。材料現地調達出来るんちゃうん。輸送コストもバカにならんで」
「そうだねぇ」
「まあ技術代、しっかりもらう。一箇所開発できたら全部に使えるやろ」
「うん。それでいい。タケシ、行ってくれるね」
「バルサ行け」
呑気にお茶を飲んでいたバルサが、思わず吹いた。
「えぇーワシですかー」
「責任者手当つくで」
「いやぁー........」
「出張手当つくで」
「え?」
「鉱山やしな、特殊勤務手当もつくな」
「.....行く」
バルサが地図をじっと見る。
「あの.....カイル陛下」
「ん?なんだい?バルサ」
「最初はここにして下さい」
バルサが地図の丸を、トンと指差した。
「ここ?」
「はい。ワシここの出身です」
「そうなんだ」
「近くのドワーフ村です。子供の頃に出た切りですけど」
「バルサってハーフドワーフだっけ」
「はい。母が居づらくなってアルナに出たんですわ」
「そうだったんだ」
「へっへ。故郷に錦でさぁ」
「うん。頑張ってくれ」
「タケシ、あれさ、街道に伸ばすとすごく便利になるね」
「ん?まあな。けど時期尚早」
「なんで?」
「ミナセの中ならどうとでもなる。でも街道となると距離も延びるし、馬使うんやったら自由度の高い馬車の方が便利ちゃうか」
「そっか」
「まあ馬より早けりゃ別よな」
「タケシ、何か考えあるの?」
「あるけど。俺の範疇外やな」
タケシがゴロンと寝転んだ。
「え?」
「魔導車」
「ほう」
「魔導船の技術あるやろ。あれ応用せいや」
「あぁ、そっか」
「後は自分でやれや」
「そうだね。やってみよう」
タケシがぐぅーんと伸びてあくびした。
「もう、俺これ以上手ぇ広げたくない」
「前もそんなこと言ってたね」
「ほれ、孫待っとるんやろ、早よ行けや」
「そうだぁー。セリーヌちゃーん♪」




