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ヨイショ

「お前ら、なんでわかる」

「エヘッ。匂いがしたー」

「うん。楽しそうな匂いー♪」

タケシとバルザ、アキラが、コンドウ家前の道向こう、レールの上にトロッコを乗せていると、ルークとアークが現れる。

「こないだから納屋に籠もってたでしょ」

「バレとったか......」




「じゃあ行くよー、せーの」

ヨイショ、ヨイショ、ヨイショ....,...

「キャッホー。動いたぁー」

アキラが乗っかったトロッコがゆっくりと走り出した。

ヨイショ、ヨイショ、ヨイショ.......

動力車のシーソーを押しているのはルークとアーク。

いい年をした男達が、楽しそうに遊んでいる.......としか見えない。

「いい感じですな」

「そやな」

と、見ているのはタケシとバルサのおっさん2人組。

「タケシさん、工房までやと坂がないから行けるけど、職人街となると、キツないですか」

「あー。そうやなー、ちょいあの坂しんどいかもなぁ」

「降りて引っ張りますか」

「あ、バルサ、こんなんどう?」

タケシが地面に絵を描く。

「ここにさ、歯車みたいなんつけて.......レールの方にこんなんで、ほんで噛み合わせたら」

「あぁ、チャリンコのチェーンみたいな」

「それそれ」

と話していると、3人が又ヨイショヨイショと戻ってきた。

「タケシさん、いい感じですよ」と呑気なアキラ。

「ふぅー」

「ふぅー」

「アキラさん、次は交代して」

「運動不足解消できるっしょ」

「アキラさんの方が腹出てる」

「いや僕はまだ........」

「アキラくらいでしんどかったら荷物運べんぞ」

「ギア入れるか」

「そうですね」

「わっかんなーい」

と言いつつ、又交代でヨイショヨイショが始まる。


レールが少しづつ伸びる。車両の改良をしながら、

「うわぁー」ガチャン

「又脱輪したぁー」

「ちょいカーブきついんかな....」

「車輪になんか細工できませんかね......」

アキラ達3人組に、何故か近所の子供達が加わって、もはやテスト走行なのか遊びなのか、判然としないのだが.......徐々にスムーズに走れるようになってくる。


「タケシさん。これ、こないだ手紙で父に教えたら.......見たいって」

「え?」

「来るみたい」

「ゼル?」

頷くアーク。

「マジかよ」



タケシの構想は、ミナセの職人街とコンドウ商会工業地を繋ぐ専用レーン。

コンドウ街道と呼ばれている川沿いの道の脇にレールを敷いて、馬で荷台を連結させて引かせる。

これで工房への馬車乗り入れが減り、渋滞が解消できる。


「タケシさん、やっぱり木じゃ持たんですよ」

「車輪はともかくレールはなぁ」

「ちょっと鉄ようけ要りますなぁ」

「台座の上にちょい薄い鉄板にすっか。とりあえず」

薄暗くなり、ライトを照らして延々と作業していると.......

「もう!いい加減にして下さい!」

サーシャに怒られた。

「あ、すんません」

「もう、カツミさんやナターシャさんいないからって......ほどほどにしなさい!」

サーシャの冷たい目線が、1番怖かった。



全く懲りないタケシとバルザが、村の子供達を乗せてトロッコを走らせていると、上空に黒い影。

「あ!」子供達が指をさす。

「来たー。魔王様ー♪」

ゼルヴァーンの姿を見つけて、叫声をあげる。

フワリと降り立ったゼルヴァーンに、まとわりついている。

「タケシ、これかー」

「もうなんか、魔王の威厳もクソもないよな、ゼル」

「ハッハ。子は国の宝ぞ。して、この乗り物.......」

「トロッコっていうんや。荷物運ぶねん」

「それで動くのか」動力車を指さすゼルヴァーン。

「うん。ほんまは馬で引くんやけどな、これでも結構行けるで」

「乗って.....おったよな。ワシも乗れるかの」

すると子供達が、乗れとばかりに手を引く。

「重そうやなー。まあ荷重実験やな。バルサ、行く?」

「そうですな」

荷台に窮屈そうに収まるゼルヴァーン。

「ほないくでー」ヨイショ

「キツー。おいガキども、みんなで押せ」キャハハー

「せーの」ヨイショ、ヨイショ、ヨイショ........

ゆっくりと動き出す。

だんだんスピードが上がって、子供達は手を離し、後ろを駆け出した。



夕暮れ時。子供達は家に帰った。

縁側にどっかと座ったゼルヴァーン。

「よう遊んだな」タケシがお茶を出す。

「なあタケシ?あのトロッコなぁ、鉱山で使えんかな」

「うん。まあ元はそういうもんやけど」

「担いで運んでおるんじゃ」

「そらキツイな」

「もう少し小さくすれば良いのか」

「鉱石乗せるんやったらもうちょい改良いるけど......」

ゼルヴァーンがちょっと躊躇する。

「図面を......くれんか」

「んー。まあ別にええけど」

「後はうちで何とかする」

「ええよ。自分らで合うもんにするんやったら」

「助かる」

「ゼルはそういうとこ偉い。大概みんな作ってくれって言う」

「それではいざの時に困るだろう」

「そうなんよ。試作が大事やねん」

2人がゆるっとお茶を飲む。

「あ、ゼル今日泊まる?カツミおらんけど」

「良いのか?」

「うん。ほなちょっと俺、食堂にメシ貰いに行ってくるわ。待っとって」


タケシが出ていきしばらくすると、ルークとアークがやって来た。

「あ、父上。来てたんですか」

「お主ら、又つるんでおるのか」

「第2王子繋がりですし」

「魔王様、タケシは?」

「メシを取りに行ったぞ」

「じゃあ今日はみんなで宴会♪」

アークが嬉しそうに言う。

「お前変わらんな」

「え?」

「まあよい」

「あ、魔王様。たまには父の所へも行ってやってください」

ルークがちょこんと頭を下げた。

「んー。王都はのぉ......」

「たまーでいいですから。拗ねるんで」

「アヤツ拗ねるか」

ゼルヴァーンが大声で笑う。

「わかった。帰りに寄るわい」


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