一枚の羽根
タケシがのんびりとロビーで火照った体を冷ましている。ゆったりとしたローブでソファーにもたれていると、何やら外が騒がしい。
「父上、お待ちください!」
ドカドカドカ......
「タケシー」
「あ、ゼル」
「よく来たなー」大きな手でタケシの頭をグリグリ撫でたのは、魔王ゼルヴァーン。
「あ、魔王様、ちょっと.....」慌てるスタッフ。
全く構わず、タケシに話しかけるゼルヴァーン。
「なあ、城へ参ろうぞ」
「ゼル。ちょい待て。俺今からメシやし」
「城で食えば良いではないか」
「メシチェックするのも仕事のうちやねん」
「せっかく迎えに来たというのに」
「わかった。行くから。メシ済むまで待っとって」
「ふむ。では湯に浸かって待つか」
「魔王入って来たらみんなびっくりするやろが。ここで待っとって」
「うぅ。しょうがないの」
だが既に、騒ぎを覗きに来た貴族はみんな、顔が青かった。
「あ、すんません。メシにしましょ。はいはい。ほなゼル後でな」
食事を終えロビーに行くとゼルヴァーンは居眠り中。
「あ、父上。コンドウ様ですよ」
「おぅ。タケシ、行こうか」
「はいはい。これお土産」
「なんじゃ?」
「お城であけて」と従者に渡す。
宿を出た。
「??。馬車は?」
「タケシ、ここ」背中を指差すゼルヴァーン。
「げっ」
ヒョイとつままれ背中に乗せられた。
「マジかよー」
「捕まっておれ」
と言うとフワリと飛び上がり、大きく羽ばたいた。
「ひーえーーーー」
小さくなっていく魔王を見ながら、添乗員がカイロスに聞いた。
「大丈夫......でしょうか」
「私も子供の頃は、よく父の背中に乗りましたが......正直......自分で飛ぶより怖い」
「.........」
魔王城の中庭に、ゼルヴァーンはフワリと降り立った。
ズルズルズル......タケシがずり落ちて、そのまま仰向けにひっくり返った。
「どうじゃタケシ、気持ちよかったであろう」
「怖かった.......」
「ん?」
「怖かったー!」
大笑いするゼルヴァーン。
「そうか?怖いか」
「どーせ俺はビビリです」
「ハッハ。よし、土産をあけよう」
「スルーかよ」
「魔王様、こちらです」
箱を差し出すオルフェン。
「ん?なんじゃこれは」
よいしょ。っと起き上がったタケシが箱から出す。
「けん玉。このデカいのが、ゼルのんや。ちっこい方はみんなで使こて」
タケシが小さい方を持って、
カンカンカンカンくるーんスポッ。
「な、こんな感じ」
「ほー」
ゼルヴァーンもやり始める。
スカッ。スカッ。スカッ。
「膝使うんや。あ、みんなもやってみ」オルフェンが手に取る。
スカッ。スカッ。スカッ。
「うー。難しいぞ」
「難しいからおもろいの」
そしてけん玉練習会が始まった。
「お、乗ったぞ、タケシ」
「うんうん。ぐるっと回して先っぽ」
「うっ!」カツン。
「これはなかなか手強い」
その後、ゼルヴァーンは、自転車を引っ張り出して、中庭をグルグル回って見せた。
「ハハ。よう練習したな」
「まあな。タケシは楽しいものを作るの。さて、部屋で話そう。色々聞きたい」
その時。
「カー」カースケが降りてきた。
ビクッとするオルフェン。
「なんや。待っとけ言うたのに」
「ハッハ。よう来たカースケ」
ゼルヴァーンが手を出すと、チョンと留まった。
「カ」
ゼルヴァーンがカースケを肩に留めて歩き出した。
「そうよのぉ、反対はあったのぉ。特に長老共がな」
「だよなぁ」
タケシがソファーで伸びをする。
「じゃがな、タケシ。結局食い物が巡るとそういう声は減る。
海の魔獣も、今ではご馳走ぞ。スライムもどこの村でも飼っておるわ。年寄り共、今では食いやすいと喜んでおる」
「ようここまでやったと思うで」
「タケシらのアドバイスのおかげじゃ。確かに輸入だけではこうはいかんかった」
ゼルヴァーンが軽く頭を下げる。
「自分ら飛べるから輸送も早いし、俺等より楽やん。でもその楽で、目が濁るんよ」
「楽か」
「魔術かてそうや。便利に使うのはええけど、意識せんと進歩はせんよ」
「んー。そう言われるとそうだな。200年、なにも変わっておらん」
「まあアルネアかて、ここ15年程やけど......」
「15年?」
「俺とカツミが.......」
「ん?」
「......隠す必要もないか......」
タケシがふぅっと息をつく。
「ゼル、俺らはこの世界の人間やない。転移者や」
「テンイシャ?」
「元の世界でいっぺん死んで、ほんでここに来た。ミナセの神様に生き直しさせてもろてる」
「元の世界......」
「魔法も魔術もないとこや。でもここよりうーんと進んでた。鉄の塊が空飛んでる世界や」
「.......」
「俺もカツミも、そこの知識でこの世界見てる。そやから発想が違うねん」
「.......」
「でもな、俺等はこの世界好きやし、ずーっとここで暮らしていくし。うん、気に入ってるんよ、ここがな」
「タケシよ。よく分からんが、タケシはタケシじゃ。ワシは、おぬしらが何処から来ようが関係ないわ」
「へへっ」
「まぁ納得じゃ。やはりタケシは変わっとる」
「何がやねん」
「カー」
「あ、タケシ。帰ってたんだ」
ルークがやって来た。
「おぅ。ただいま」
コンドウ家の縁側。
「それ、何?」
タケシが持っているのは......
「ゼルにもろた」
黒い大きな羽根が1本。
「え。魔王の羽根.......なんかわかんないけど凄いことはわかる」
「角修理したらくれたんや」
「はぁ?」
「ボンドでとめてパテ埋めして磨いて......」
「タケシ、魔王様と何してたのさ」
「いや、古い傷が気になる言うから」
ルークがため息。
「ちゃんとツアーの報告書は作ったから」
「ならいいけど」
タケシが羽根をクルクル回す。
「帽子につけよかな」




