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闢発の妖精王1 壊滅編  作者: C先輩
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ヱビス到着

 商業国家ヱビス東部空港、大陸一の森林地帯とその先にある大平原を跨いで、大国であるオルカ帝国とフィガロスを繋ぐ巨大な空の港である。その一画に、疾風の足が誇る高速船アエーロークは停泊していた。少数の傭兵団である彼らは、全員掛かりで荷下ろしをこなしている。

 傭兵組合へ速足で向かう団長のエアと、その後に続く俺を除いて。


「金の燃えそうな町だな、或いは本当に信用通貨の紙幣でもあるのか?」


 眼前に広がるヱビスの景色は区画整理された土地に、ギッシリと無駄なく敷き詰められた洋風の建屋群だ。その建屋の間を石畳の道路が幾重にも舗装され、馬車がひっきりなしに行き交っている。

 風光明媚とは程遠いが、大自然とまだ共存する気概を感じるフィガロス王国とはかなり気風が違う――ここだけ産業革命が起きているのかと思う景色を見て、つい口走ってしまった。


「なんだいそりゃ」


 前を行くエアが訝し気に問う。


「どういう言葉に聞こえた?」


「どうって言われてもこの辺じゃ聞かない言葉じゃ分かんないよ」


「ああそうか――商売の話さ。ここは栄えているんだな」


 この世界の人びとが使う言語は厳密には自分達と体系が異なっている。何度かアイリスと確認をして出した結論だ。

 自分達には何らかの――翻訳のような力が働いているのだろう。迂遠な言い回しやこの世界の人間が知らなそうな単語を使用すると意味が伝わらなくなる。


「そりゃあそうさ、西の亜人、北の魔族、南の魚人と、東の大国二つを結ぶ、この大陸随一の金持ち国家だからね」


「エルフは?」


「ははっ、あんな揉め事が歩いてるような種族と交流なんてこちらから願い下げってね、あんたもそういう冗談が言えるのかい」


 何をしたらそんなに嫌われるんだエルフ。


「さ、ついたよ」


 案内されたのは空港からほど近い区画でも、一際大きな建屋――の隣にある少しだけ大きな建屋だった。建築様式は王国と随分違うが、ここがヱビスの傭兵組合ということだろう。


「どうもー!疾風の足です!戻りました~!」


 そう言って勢いよく扉を開けながら入っていくエアに続く。


「あらエアさん!お帰りなさい!心配してたんですよ~、王国の件以来連絡がありませんでしたから」


「ごめんなさいエレーナ、悪いんだけど急ぎの用があって、商業連合のお上に繋いでくれる?もしくはエリアマスターでもいいわ」


「あら、大きな仕事かしら」


「別にアタシらがする事は少ない――と思う。書状届けるだけだからさ」


「やーん、それってウチにも後から大口の話が下りてくるって事じゃない?いつも良い仕事拾ってくれるわねぇあなたの所、はいこれ紹介状」


 エレーナと呼ばれた受付の女性は、身体をクネクネさせながらもテキパキと作業をこなして、一枚の紙をエアに手渡す。


「ありがとう、それじゃあたしは行くわ。その間に彼――シュウっていうんだけど、ウチの新しい乗組員ね、最近妖精機乗りになって実績が出たから、昇級の案内をお願い。これは私達が証人として確認した活動記録ね、じゃそういうことで!」


「え、ちょちょっと!?」


 もう一枚の紙をエレーナに渡して、エアはそそくさと組合をあとにした。


「もう、慌ただしいんだから」


 溜息をつきながら、エレーナはこちらへ向き直る。


「改めまして、シュウさんですね?初めまして、私は傭兵組合ヱビス本部の受付を任されておりますエレーナと申します。傭兵証を拝見しても?」


「シュウです。こちらになります」


 4級の刻印がされた傭兵証を手渡す。エレーナは本人確認を済ませながら、エアの渡した実績証明を見て、目を丸くして固まった。


「し、少々お待ちくださいね?」


 エレーナは慌ただしく席を立つと、小走りにカウンターを抜け、階段を駆け上がって奥の一室へと勢いよく入っていく。しばらく待つとエレーナはまた小走りでやってきた。


「今回の内容について、詳しくお話を伺いたいので、こちらへどうぞ」


 エレーナが案内してくれたのは、先程駈け込んだ一室だった。あまり飾り気の無い、質素な執務室のようだが、応接用の机と椅子も備わっていた。


「おう、お前さんか怪しすぎる傭兵ってのは」


 部屋の主が、入るや否や随分な物言いで話しかけて来た。獅子のたてがみが如き金髪と、熊のような体格をした大男だ。相対的に小さく見える机に積まれた書類目掛けて、次々と判子を押している様は中々にシュールだった。


「シュウと言います」


「マーシュだ。ヱビスの傭兵は俺んとこで全部面倒見てる。で?このナメくさった記録は俺達に喧嘩売ってるのか?」


「強いやつが買ってくれる喧嘩ならいつでも特売中だ。あなたは弱そうだが」


「ほーーーーーーぅ、面白いじゃねえか」


その日以降、ヱビスの傭兵ギルドは大きく収益を上げることになるのだが、

日を追うごとにギルド長はじめ職員達が胃をやられそうになりながら東奔西走することになるのだった。

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