力とは、質量の速さに比例する。
正竜を何体登場させるか運命のダイスロールで決めました。
エグい事になって後悔しています。運命が闘争を求めている。
空艇アエーロークの後部ハッチが開くと同時に、シュウはするりと機体を外へ投げ出した。その機体の名はフレイ――恐らくこの世界に一つしかないであろう人型兵器EL.F.である。
主機である素粒子エンジンが静かに唸りをあげ、空間を濁流のように突き抜ける数多の素粒子に干渉し、重力に反旗を翻す。それはただ空に"浮く"だけに留まらず、質量を持った壁を作り、大気の抵抗を殺し、驚異的な速度での飛行さえも可能にする、人類の生み出した技術と叡智の極致。
飛び立ったのは、翠のEL.F.――フレイ。かつて、異なる世界で最強の名を欲しいままにした機体である。
〈あれか〉
〈翼竜の数11、変わらず氷竜を連れ、こちらへ向かっています〉
出撃と同時にアイリスが索敵を行い、敵の情報を正確に把握する。既にシステムも戦闘モードへと切り替わっており、一つ一つの会話が、瞬時に伝達される情報の一部となって脳内を駆け巡っていく。
〈アイリスの予測は?〉
〈人為的――狙いは空艇かと。船首回頭のタイミングで翼竜が大きく方向を変えましたし〉
空中で静止し、竜達の動きを観察する。翼竜は対して逃げ惑うでもなく、集団催眠にかかったように空艇へ一直線に飛び、次々に氷竜の餌食となって食い千切られている。
〈それにしてはお粗末だな〉
〈同感です〉
青白い鱗を全身に纏った氷竜は、翼竜の倍以上はあろうかという巨躯を、驚くほど速く、しなやかな動きで飛ばし、翼竜達に襲い掛かっていた。
この世界にモンスターテイマーのような存在がいるのかは不明だ。だが少なくとも、翼竜は一般的な基準で言えば非常に強力な魔物であるという。当然使役できるとなれば貴重だ、空艇無しで飛行できる移動手段が確保できる上に、強力な戦力となるのだから。
その貴重な翼竜を餌に、コレを仕掛けている者はより強力な竜をおびき寄せてこの空艇を襲わせようとしている――ように見える。
――そんなにうまくいくだろうか。
翼竜が挑発した所で、刺激をしなければ、翼竜が全滅しただけで氷竜は帰るのではないだろうか。存在が知られ、比較的近い土地に住まうウガルの人々の話す印象から察するに、氷竜は大人しいのか、出不精というイメージだ。
正直な話で言えば氷竜とは戦ってみたい。ガスパルが作った渾身の腕部は、超重剣の全力投擲に耐え得る強度と靭性を見せてくれたのだ、ならば今度は振り回して叩きつける相手をばと、考えていた所だった。
ただ今はクレイに頼まれたおつかいの途中だ。別に氷竜自体は北の山脈に居ると既に分かっているので、暇を見て殴り込みにこちらから出向けばいい。
念の為出撃したが、距離を取ってこのまま逃げ切ろう――
そんな事を考えていると、やがて最後の翼竜が無残に腸を食い破られて墜落していく。瞬間、それは起きた。ドォンッ!という轟音が後方から鳴り響いたのだ。振り返ると、こちらへ向かって空賊等から身を守る為に装備された、空戦用のバリスタから巨大な矢が打ち出され、氷竜目掛けて飛んで行く。
――いやいや誰だよこちらから刺激した馬鹿は。
〈甲板の拡大映像を確認、船内に潜入していた者が居たようです〉
どうしようもなく気が利くアイリスが、先回りして気になっている事を伝えてくれた。バリスタの矢は氷竜に直撃し、硬い鱗を貫通こそしなかったものの、質量兵器たるその衝撃が、氷竜を空中でよろめかせて見せた。
分かり切っていた事だが、前方にいる氷竜様のご機嫌は最高に悪化したようで、咆哮を上げてこちらへと向かってきた。
穏便な話とはいかなかったが、望ましい形ではある。"疾風の足"の連中には情報をかなり開示してしまう事になるが、旅は道連れと行こうじゃないか。
〈随分と楽しそうですね〉
それは言わないお約束である。
〈Prease,I/F〉
〈threshold,CP-FV.loadbarancer,fav〉
〈良し〉
前回の負荷テストから、アイリスに再調整させたのは、より長期間、高機動戦闘に耐えうるべく超電磁加速砲に回している予備電力と粒子制御のリソースを、全て負荷分散に充てるというものだ。瞬時に兵装の切り替えや発射ができなくなってしまうが、やはり弾数は有限、どうしても必要なタイミング以外では温存しても戦えなければならない。下手に機体の保護を怠ってしまえば、そのうちフレイの体中が肥大化した右腕のようになってしまうだろう。銀竜の時のような下手は打たない。
共振する素粒子エンジンを一気に回して、大気中の素粒子を励起させる。スラスターから圧縮させた大気が爆発燃焼し、重力という抵抗を無くしたEL.F.を、文字通り吹き飛ぶような速度で加速させた。
迫りくる氷竜と音速以上の相対速度で交差すると、慣性を殺すように急制動し、即座に逆方向へフル加速させる。挽肉になるような横方向のGをまさしく"消す"事のできるEL.F.だからこそできる芸当によって、氷竜の背後に飛び込むと、太く、頑丈になった右腕部で思いっきり上段から叩き込む。
〈左手は添えるだけってね〉
『ガァァッ!?!?』
隕石でも目の前に落ちたかのしょうな衝撃音と共に氷竜の悲鳴、背を守る硬い鱗が粉々に砕け散りながら、くの字に折れ曲がった氷竜が墜落し、大地へと叩きつけられた。
戦闘速度基準=ディナ・シーを1とする。
フレイ(安全域)=40ディナ・シー
銀竜 =45ディナ・シー
氷竜 =15ディナ・シー
翼竜(戦闘時) =2 ディナ・シー
翼竜(全速移動)=3 ディナ・シー
サラマンダー =2 ディナ・シー
ドーヴェン =1.3ディナ・シー
ナフタリ =1.6ディナ・シー
クー・シー =1.3ディナ・シー
軍馬(駆足) =0.3ディナ・シー




