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闢発の妖精王1 壊滅編  作者: C先輩
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落陽の一撃

職場が変わって来週から心機一転。

時間が前より余裕が出来て、規則正しい生活が送れそうなので、投稿ペースを上げたいな。

いや先に再編だろうか。煮詰めれてないシーン多いですよね…

 王都フィガロ襲撃――それは黒獣の大群だけに在らず、既に懐へと進攻していた。


 ドォッと地鳴りのする衝撃音と共に、城内の壁が砕け散る。幾星霜攻撃を受けた事の無い王城の壁が、大砲でも撃たれたかのように弾け飛び、城の廊下へと這い出て来たのは、ドロドロと黒泥を巻き散らす一匹の獣だった。


「こ、黒獣だ!オーク種か――?デカいぞ!」


 直ぐに騎士達が発見し、陣形を取りつつ各々が魔法を放ち始める。黒獣は火球の熱や氷柱の衝撃に悶えながら、騎士達を薙ぎ払おうと突進するも、すぐに前衛の騎士が土魔法の術式を刻印した大盾によるファランクスを形成し、衝撃を受け止め切る。

 彼らに混乱は無かった。


 "王の命を狙う者を警戒せよ――"


 騎士団長マーズの命により、この状況は既に予見されていた。黒獣の大群による町の襲撃など、人為的としか思えない。では王国を滅ぼすならば?

 当然、狙うは王の首。大戦力を郊外に引き付けている今、落ちぬ太陽が最も危機に晒されている事になる。マーズはそれを読み、城内を警戒する騎士達を完全装備にて待機させていた。


「そう何度も受けきれない!後退しつつ攻撃を続けるぞ!」


 とはいえ現れたのは、人の身を二回り以上越えるオークの如き黒獣だ。乱雑に振り回す腕の衝撃を数度受けただけで、魔法によって強度が増した大盾は早くも歪み、その刻印の効力も薄れつつある。


「玉座の間まで下がるぞ!」


 正面からやり合えば潰される――そう判断した騎士達は後退する。王の謁見する玉座の間は普段人が出入りしない上に現在地からかなり近い。そのうえ城内でもかなり広い空間の為、散会して四方から魔法を畳みかける事ができるからだ。


 目論見通り、黒獣は騎士達を猛追してきた。玉座の間へ転がり込んだ騎士達は、目の前の光景を見て反射的に横へ跳んだ。


「各員!撃てぇ!」


 そこに居たのは、騎士を引き攣れ、既に完全詠唱を終えた魔法使い達を配置した騎士団長マーズの姿だった。


「ブレイズ・ランス!」


「タービュランス!リピート!」


「パラライズフォーク!」


 刺突性の高い焔が黒獣を穿ち、炎を巻き込んで幾重もの乱気流が炎の竜巻を生み、その黒い身体を焼き尽くしていく。反撃しようと黒獣が暴れようとするも、3本の雷が黒獣を貫き、その身を痙攣させる事しかできない。

 その機を逃すマーズでは無い。鞘から長剣をすらりと抜き放つと、剣を下段に構える。


「グライスラー家に伝わりし魔剣、受けてみよ」


 魔力を込めた剣が風を纏う。瞬間、マーズは目にも止まらぬ速さで黒獣の懐に飛び込むと、直上へと一直線に跳躍しながら剣を振り抜いた。

 バターを斬るようにして黒獣の肉体を裂き、そのまま空中でくるりと回転しながらマーズは天井に"着地"して見せると、その天井を蹴って黒獣の脳天へと一直線に飛び込む。


「っはぁぁぁあああ!」


 風魔法による加速、そこへ全体重と落下するエネルギーを加えた刺突によって、マーズの剣は黒獣の頭に深々と突き刺さった。

 一瞬の痙攣、そして脱力したように膝をついて倒れる黒獣から飛び降りたマーズは、湧き上がる周囲の歓声に包まる。


「流石は団長だ!」


「妖精機が無ければ手こずるような相手を倒すなんて!」


「大陸随一の魔剣技と呼ばれたその腕前、実戦で見られる日が来るとは…」


 賞賛や驚嘆の声を浴びながら、マーズは底知れぬ違和感を感じていた。


(呆気ない――)


 本当にこれで終わりなのか、マーズはどうしてもそうは思えない。これが、今まさに王都へ攻め入らんとする黒獣をけしかけた組織の襲撃であるならば、言うなればこちらは本命なのだ。


「王の安否確認を急げ!王は今どちらにおいでか!」


 マーズの声に、状況を理解した騎士達は直ちに駆け出す。

 つまりはこの黒獣さえも陽動である可能性があると判断したのだ。そうであるならば、先の派手な侵入も頷けるというもの。


 ――しかし、その予想は最悪の形を以て裏切られる事となった。


「あら、やっぱり結構強いんじゃないアナタ」


 ひと気が無くなった玉座の間に響く艶のある声。その声の主を知るマーズは、どこか納得したように答えた。


「やはり、貴様が関係していたのか」


 そこへ現れたのは、艶やかなドレスに身を包んだオニキスだった。


「あら、何の事かしら」


「とぼけるな!王の懐へ入り込み、何某かの画策をしていたのは分かっていたのだ。貴様の行動、王への進言の数々は確かに王国へ利するものであった。だが貴様の獣性を私は知っている。加えてここ数日、貴様が郊外へ赴きどこかと連絡を取っていた事は調査済みだ。無関係とは言わせんぞ」


「あぁ、アレね。見つかっても良い頃合いだから手を抜いちゃダメね。まぁいいわ、それで?」


「貴様の目的は何だ?」


 マーズの問いに、オニキスはクツクツと笑い出す。


「ぁぁ、アナタまだ分からないのね。えぇ、教えてあげても良くてよ。私の目的」


 オニキスがゆっくりと近づきながらマーズの脇に倒れている黒獣に視線を向け、指差す。釣られてマーズも視線を落とし、心臓が止まるような衝撃を受けた。


「ソレをアナタに殺させる事よ」


 黒泥に塗れていた獣はその力を失い、やがて煙を上げながら朽ちていく。その時地肌が露わになり、原型となっていた生物の詳細が短い間ではあるが確認できる。


「―――馬鹿な」


 そこに在ったのは、頭を剣で貫かれた、フィガロス国王の亡骸であった。

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