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闢発の妖精王1 壊滅編  作者: C先輩
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王都へ

花粉症で目が見えなさ過ぎて笑いました。

今回のお話しはバスク大佐よろしく水中ゴーグルで執筆しております。

異世界って花粉症あるんですかね、機会があったら書きます。

「何という事でしょう…」


 王国の各主要都市から飛び込んでくる同時多発テロの一報に、クレイは深刻な面持ちで呟く。


「狙われたのは、この町だけでは無かったようで」


「どうやってこれほどの黒獣を――いやそれよりも」


 はっと我に返ったクレイが大急ぎで水晶の脇にあった別の宝石を手に取り、何事か呟いた。すると水晶が青白く淡い光を放ち、それをクレイが確認すると、水晶に向かって話しかける。


「こちらウガル。クレイ・ウガル・マルキッツォです」


 どこかへ通信を飛ばしているらしい。だが待てども返事は来ない。


「その宛先はどちらへ?」


「王都です、これはおかしい。フィガロの魔水晶ならば、緊急通信用の為に士官が常駐しているはず」


 あの水晶は魔水晶というらしい。


「そんな、何かあれば最優先で使用するはずの魔水晶が機能していないと?」


 状況の深刻さを確かめるように言うネスに、クレイは頷く。


「最悪の仮説を立てるならば、敵の狙いは王の座するフィガロ。通信手段を予め遮断し、その後援軍が見込める都市を同時攻撃。こちらが対応に追われている間に大部隊で強襲――」


「今すぐ、隊を編成し王都へ向かいます!」


「待ちなさい!」


 ネスが駆け出そうとするのを、初めてクレイが強い語気で止める。


「遠見からの報告も既に受けています。あなたの機体は相当な損傷を受けている。違いますか?」


「い、いえ!装甲が少し抉れただけで戦闘に支障はありません!」


 そうなのですか?と無言でクレイがこちらへ目線を向けて来る。さてどう答えるべきか。


「搭乗者が剥き出しとも言える装甲の破損に、各関節の疲労度、先程は私が魔法によってそれらを補強していたから戦闘続行できていただけ。そのような印象です」


「シュウ殿!」


 そう、結局彼はカフカと戦った後に残党を殲滅するまでドーヴェンを動かし続けた。只でさえ重装甲の機体で、長時間に渡って高速戦闘を続ければどうなるか、むべなるかなといった所だった。


「そんな状態では救援に行った所で無駄死にです」


「閣下、止めないで下さい!私はドーヴェンが駄目ならディナ・シーに乗ってでも向かいます!」


「あの機体に認められた者の責務をお忘れか!黒鉄隊長!」


「しかし!王都には妻と――妻と娘がおるんです!」


 ――そうだった。

 彼らは、確かに今ここで"現実"に生きている。

 結婚し、生殖し、出産し、世代を紡ぐ生物としてのあるべき姿を謳歌しているのだ。

 全てに情報が割り振られた世界で、子を成すという行為まで()()されていた自分達が、失っていた尊厳だ。執着、愛着、何かに必死である事にどこか希薄であった自分にとってそれは、とても眩しく見えた。


「王都を守るは何れも一機当千の戦力たちです。今は彼らを信じるしか――」


「先程の敵はドーヴェンと互角以上の力を持っていたのです!戦力は少しでも多い方がいい。シュウ殿、報酬はいくらでも払う。どうか私の機体にもう一度同乗し、王都へ向かってはくれないだろうか」


「ふむ」


 自己犠牲を前提とした救いなど馬鹿げている。だが何とかしてあげたいとは思う。個人的にも黒獣を操る組織の連中とは妙に縁があるし、正直言って迷惑なのだ。ここらで一発ガツンとやり返したいとは思っていた。


(こんな事ならフレイの修理を後回しにして持ってくるべきだった)


 右腕が死んでいても超電磁加速砲は使えるし、今回の件でいえばそれで充分であろうからだ。

 そんな風に思っていたまさにその時だった。


 〈シュウ様、応答下さい〉


 脳内に聞きなれた声が響く。


 〈アイリス?〉


 〈緊急事態の為、換装作業を中断して急行しました〉


 あまりのタイミングの良さにうっかり笑いそうになった。


 〈どうしたんだ〉


 〈王都フィガロへ向けて、現在黒獣の大群が向かっているようです〉


 〈ああ、俺もさっき聞いた。でもアイリスと直接関係は無いだろう?〉


 〈はい、ただアシュリー様がサラマンダーに乗って独り王都へ向かいましたので、ご判断を仰ぎたく〉


 なるほど確かに想定外である。ガスパルに諭されてしばらく身を隠す決心をしたと思っていたが、彼女の愛国心が強すぎるのだろうか。


 〈待て、あの山脈から王都までどうやって行ったんだ?〉


 かなりのハイペースで行軍しても丸一日かかったダグから、王都までは平原をとてつもない距離で進まなければならないだろう。今更向かった所で間に合うとは思えない。


 〈それが、彼女は飛んで行きました〉


 〈は?〉


 聞けば、アシュリーはエルフ達の工廠からブースターランスと呼ばれる風圧を生む魔法が刻印された兵装をサラマンダーに取り付け、大量のブースターランスによってロケットのように機体を打ち上げて行ったのだという。無茶苦茶が過ぎる。


「シュウ殿――?」


 声を掛けられてはっと気づく。クレイとネスが、心配そうにこちらを見ていた。アイリスと話していて返答するのをすっかり忘れていた。


「ああ、失礼」


 折角フレイがあるのだから、ここはしっかり活かしていこう。


「今回は私も本気でお手伝いしましょう」


 よし、と掛け声を一発席を立つ。


「但し、条件付きです」


 ここぞとばかりの営業スマイルだった。

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