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闢発の妖精王1 壊滅編  作者: C先輩
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始まりにすぎず。

風邪でダウンしてしまいました。

窓を開けっぱなしで寝ていた為に冷えたようです。

皆さんも油断しないでお過ごし下さい。

 黒鉄隊の隊長、ネスに案内され、調度品を程よく拵えた華美過ぎない廊下を足早に歩く。

 ここはウガル領を治める辺境伯、クレイ・ウガル・マルキッツォの住まう館だ。先の戦闘報告と謝礼も兼ねて、ネスに領主と挨拶をぜひにと懇願された。

 辿り着いた奥の扉でネスは直立し、声を上げる。


「閣下!ネスです!入ります!」


 そのままネスは扉を開けてこちらを手招く。促されるままに入ったその部屋は、脇には生け花が一輪飾られている質素な部屋だった。応接用のテーブルと椅子、その奥に執務用の机があり、そこに一人の男が腰かけている。


「いらっしゃい、ご苦労様です」


 応えたのは、短く切り揃えた茶髪に掘りの深い目鼻立ちの、痩せぎすの男だった。彼の脇には一人の鎧を着た騎士が立っており、何か報告を聞いていたようだった。


「では、町の方をよろしくお願いします」


 男の声に騎士は敬礼をし、足早に部屋を立ち去る。


「お待たせしました。黒鉄卿、そちらの方は?」


「はい。我が窮地を救い、防衛線で比類なき力による助力を頂いた恩人です」


「それはそれは――失礼、申し遅れました。私がウガル領を治めるクレイ・ウガル・マルキッツォと申します。どうぞクレイとお呼び下さい」


「シュウです。傭兵をやっております」


 クレイに促されて、応接用であろうソファに腰を下ろす。対面にはクレイが座り、ネスは先程と変わらない位置で敬礼を続けていた。


「黒鉄卿、まずは簡潔に報告を」


「はっ」


 ネスは先程起きた戦闘のあらましを、なるべく要約して会話していく。だがカフカと自分が介入を始めた辺りの説明をしようとすると、なんと説明すべきか言い淀んでいた。特にこちらの”魔法”については。

 ここへ来る前に予め、この魔法のせいで方々から追われてしまうので秘密にして欲しいと伝えていた為だろう。思ったよりこの男は人が好いらしい。


「つまりですね閣下、彼は…」


「恐れながら閣下」


 ラチが開かないので、こちらから切り出そう。


「私は特殊な魔法が扱えます。故に身を隠して生きている身上を、騎士殿に伝えております」


「ほぉ、それで?」


 それでどうしたのだと、この領主は問うている。一介の傭兵如きの都合に騎士の報告が誤魔化される道理など無いのだ。その上で何を語るつもりなのだと。


「縁あって匿って頂いたエルフ達の依頼を受け、怪しい組織を追ってウガルまでやって参りました。彼らは、町の郊外にあった地下空洞で黒獣を生み出す研究をしていたようです」


「何!?」


 大きな声を上げて驚いたのはネスだった。


「まさか、町の外で大きな爆発があったというのは――」


「私がそこへ押し入った時に、仕掛けられていた罠が作動した為です」


 クレイの眼つきが鋭くなる。


「その行動が発端となって襲撃事件が起きた可能性は?」


「閣下!」


 ネスが滅相も無い事を、といった表情で叫ぶ。いやどんだけ信用してるんだ。君は現場に居なかっただろうに。


「違うと思いますが、それを証明する事などできません。疑うならどうぞお好きに。私は帰ります」


「おや良いのですか?もしご協力頂けるならば、"あなた方"が追われている件、こちらで上手く処理できると思うのですが」


 想定外の言葉を聞いて、思わずクレイを見た。相変わらず物腰は穏やかだが、その目は何を考えているのか読ませてくれない。


「どういう意味ですか?」


「国家反逆罪に問われている白騎士と、その協力者として依頼を受けた傭兵達の手配書が回って来ておりましてね。ああいや、傭兵の皆さんは捕縛命令に対して組合が猛抗議した経緯があって罪人ではなく参考人としての失踪者なのですがね。その中の名簿に、シュウさんという方が居ましたので、もしやと」


 やはり手配が回っていたかと思いつつも、別の疑問が湧いてくる。


「そこに手を差し伸べる閣下の道理が分かりません。何故です?」


 仮にも王国側に属する権力者だ。そんな事を言うからにはそれなりの権力を持っているのかもしれないが、国の意向に逆らうような事をしてまで欲しい何かがあるのだろうか。


「ふむ何故、ですか。そう言われるとハッキリ答え辛いのですがね」


 クレイは腕を組み片手を顎につけると、ふっと笑うと話し始めた。


「そもそも私は白騎士隊が国を裏切ったとは考えていません。おおよそ下らない政争にでも巻き込まれたのでしょう。あそこの隊長は、そういう真面目で優秀で、それでいて不憫なタイプの男です。ただ、緊急連絡の中に気になるモノもありました。黒獣との戦闘中に現れたという”翠の妖精機”に関する捜索命令です。何故かこれは厳に情報統制の上での指令と来ている。おかしい、捜索ならば常識的に考えて、広く情報を開示して民衆からも情報を募るべきなのに、これを秘匿で行えというのはどういう事か――」


 一拍の間、クレイは一度こちらを見据えて、話を続けた。


「――黒獣と謎の妖精機、黒獣の研究所、黒獣の襲撃、ここ数日の間に慌ただしい限りです。もし関連性があるならば、その主犯の目的を理解しない事には、身の振り方も決められない。そういう事ですよ」


 つまり――


「――欲しいのは情報ですね」


「有り体に言えばそうなりますね」


 口ぶりからして、彼は王国に忠実な僕という雰囲気では無い。利用できるならば多少のアウトローも利用するタイプだろうか。こちらとしても実に都合が良い。だがどんな情報を渡すべきか、判断に迷う。

 その時、クレイの机に置いてあった水晶玉が淡く光り出すと、そこから声が聞こえて来た。


『誰か!聞こえているか!』


 それは焦燥感に駆られた男の声だった。


『こちらグリストベン!黒獣の大群に防衛線を突破された!援軍を!援軍を!』


 立て続けに、水晶は光り出す。


『こちらグリフィントーチ!こちらも黒獣が来ている!数が多すぎる!増援を要請!』


「これは――」


 クレイが立ち上がって水晶から流れてくる声を呆然と聞いていた。

 どうやらこの町には随分と気の早い連中が来ていたらしい。

フルック「ウ、ウィッツ殿を容疑者として捕縛!?ふふふふフザケるなよあの〇×△※野郎どもめ!毎度毎度ウチが媚び諂うと思ったら大間違いだ!」

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