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闢発の妖精王1 壊滅編  作者: C先輩
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問い

投稿がズレ込んでしまいました。

ユーモア欠乏症なのです。おのれコロナめ

 人の目が届かぬ秘境、そこへ更に隠匿されたダグの町では、人々から排斥されたダークエルフを中心としたコミュニティが形成されていた。

 いや、コミュニティと称するには些かこの町は大規模だといえよう。大空洞に拓いたこの町には、大樹を中心に農場から工場まで建築され、中ではダグの守護戦士達が駆る妖精機の整備も行われている。


 その工廠の一角では、かつて名工と呼ばれたガスパルがシュウに託されたフレイの整備の最終段階を迎えようとしていた。


「ガスパル殿!仰られていた部品の錬成が完了したが、本当にこれで良いのですか!」


「おーう!そこに置いててくれ、すまんな!」


 ガスパルがダグの町にいるエルフの技師と共にフレイの主要パーツを精製し、錬金術師達に指定した術式を部品事に刻んでもらったものが、今まさに届いた。

 それは無骨な、鈍色の鉄腕。フレイの破損した腕部の代わりとなる部品だった。


「ご指定の頂いた通りの術式は確かに刻みましたが、一体これは何なのです?"色付け"も本当に不要なので?」


 部品を持ってきたエルフが今一つ要領を得ないといった顔でガスパルに確認する。


「あぁ、コイツは普通のやり方じゃ動かせないんだとよ。この方法も恐らく動くだろうという読み半分みたいな所でやってるからな」


「しかし分かりません。魔素の変換術式に"色付け"をしないとなると、そもそも乗り手の魔素に反応しないではないですか」


 色付け、要は妖精機を駆動させる魔素と、増幅魔法(オーバードマジック)を発動する為に必要な術式回路を励起させる為の刻印だ。長年やってきたガスパルも当然その重要性は知っている。普通の妖精機はこれが無いとまともに動かす事すら叶わないだろう。

 だが、フレイは普通の妖精機などでは無い。


 ガスパルの見立てではフレイとは無属性の魔素で駆動する特殊な機体だ。ダグの長を務める古きエルフ、リヨースと、とりわけ魔素の感受性が高いように見えたヤリンが口を揃えて竜と似た魔素を感じ取っている事からもそれは明らかのように思えた。

 故に、本来ならば"仕上げ"とも言われる色付け作業は省いた。おかげで完成は早かった訳だが――


「マトモに動くんかね、果たして」


 ガスパル自身も、その出来栄えには半信半疑だった。



「ふっ、はぁっ!」


 町の外れにある広場にて、アシュリーは剣の素振りをしていた。

 特に理由があった訳では無い。ただ身体が落ち着かないのだ。それを振り払うように直剣を横薙ぎ、ビッと剣先を静止させる。


(何なの?この感覚…)


 戦っている時や魔物を警戒している時の緊張感とも違う、肌がザワつく感覚にアシュリーは戸惑う。


「あらアシュリーさん」


「?――ああ、リヨース殿」


 そんなアシュリーに気付いたリヨースが歩み寄ってきた。


「精が出ますね」


「いえ、これは――」


 なんと説明したものか、アシュリーが言葉を選んでいると、リヨースは先に口を開く。


「ガスパル様から伺いました。複雑な事情があるとか」


「え!?あ、ええまぁ」


 一体あの叔父は何をどこまで話したのだろうか。仕事柄、王国の内情に詳しかった叔父はガーランド家の事情もほぼ把握しているのだ。漏らした内容によっては王国の――

 考えながらアシュリーは、はたと気づく。自分は何故、追われた王国の事を今更案じているのだろうか。

 リヨースは続けた。


「私は一度お話ししてみたかったのです。あなたが数奇な縁によって太祖の器に認められ、その強大な力をこれからどう使って行かれるおつもりなのかを」


 あぁと呟き、アシュリーは理解する。

 彼女は――彼女たちは警戒しているのだ。冠位級の機体を偶然手に入れた、元王国の騎士である自分を。


「分からないんです」


 剣を鞘に納めて、アシュリーは答えた。


「今考えても私、ここ最近の出来事って無茶苦茶だと思うんです」


 事件の参考人を追っていたら、疎遠だった叔父と二人でその渦中に巻き込まれ、味方のはずの騎士達に訳も分からず狙われ、敵だったはずの男に助けてもらいながら、行方不明になっていた妖精機を渡され、こんな秘境で身を隠している。

 自分ではどうしようもない何か大きな流れがあって、その状況に流されている。そんな自覚はアシュリーにもあった。


「本当はこれが全部夢で、家に逃げ帰ってベッドで包まって眠ってしまえばいつもと変わらない日常が戻ってくるんじゃないかって、何度も考えました」


「今は、違うのですか?」


「私、弱きを助ける騎士に憧れて聖騎士を目指したんです。犯罪者を取り締まる聖騎士に。でも実際は捕まえた人達の大半って貧困に喘ぐ人達が多くて、私も何が正しいのか分からなくなってた。そんな風に悩んでいた状況が一変してそれどころじゃ無くなって、でもそんな中でヤリンちゃんを助けようって思ったのは、私の本心から出た気持ちで、だからええっと――」


「ふふっよく分かりました」


 言葉に詰まるアシュリーにリヨースは得心がいったように微笑む。


「何故、太祖があなたを最初から認めているのか、分かった気がします」


「え?」


 リヨースは踵を返すと、ゆっくりと歩きだす。


「お茶にしませんか?もう少し、あなたとお話しをしてみたいですわ」


「あ、あの!?今のってどういう――」


 立ち去るリヨースをアシュリーは追っていく。

 長閑な風景の一幕がそこには流れていた。

 この日の昼下がり、草の者が帰還するまでは。


「報告します!現在フィガロス領西部から黒獣が大発生し、首都へ向けて移動中です!」


 アシュリーはすぐに駆け出した。

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