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闢発の妖精王1 壊滅編  作者: C先輩
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謎の敵

ワクチン3回目、副反応でグッタリです。

少し執筆ペースを上げたい。頭から内容が飛びそうです。

 ソレは一瞬、思考加速が遅れたほんの隙を縫うように間合いを詰めた。

 追いついた視界が捉えたのは、驚異的な反応速度で剣を構えたバルカンを剣ごと叩き折り、胴へ掌底を叩き込んだ瞬間だった。

 同時にトアンは本能的に後ろへ思いっきり跳躍していた、良い判断だった。だがソレは、バルカンの状態を確認する事なく、下がるトアンへ一気に距離を詰めた。

 その僅かばかりの間にトアンが出来たのは、短剣を一矢投擲するのみ。それを容易く手で弾かれて、トアンの顔は蒼ざめた。

 間合いが詰まる。ソレは腕を引き絞り貫手の構え。短剣を素手で弾く強度とバルカンを吹き飛ばす腕力が織りなす貫手だ。トアンは容易に自分の胴に巨大な風穴が空くのを想像して目を瞑った。


 ――当然許すはずがない。


 奇怪な原始人のようなソレを宙に浮かせて拘束した。どんなに膂力があろうと、位置エネルギーも運動エネルギーも活かせなくしてしまえば、ただの重りだ。ソレは理解できない現象に暴れ、空中で無様に自転を繰り返している。

 無いとは思うが口からビームでも出してきたら敵わない。念のため出力の許す限り全方位から圧力をかけた。圧力に耐えかねた身体から青い体液を撒き散らし、ギギギと呻き声を上げながらメキメキと嫌な音を立てて身体がおかしな方向へ潰れ、やがて大人しくなった。


「大丈夫か?」


 トアンに近寄り手を伸ばすと、我に返ったのかバルカン!と叫んで駆けていく。そうだった、明らかにもっと重傷の奴が居た。

 駆け寄った先では壁に激突したバルカンがヨロヨロと動きながら呻いていた。鉄の胴当ては(ひしゃ)げて破壊されていた。外すと逞しい筋肉質な身体が、内出血を起こして青くなっている。


「クソ、油断した」


「いや、お前の防御は完璧だった」


 不意打ちを食らったあの瞬間、バルカンは剣を叩き折られると同時に身体をくの字に曲げながら衝撃を可能な限り逃がして吹っ飛ばされていた。あれが無ければ内臓はよりズタズタに、骨も至る所が砕けていただろう。


「バルカン、動けるか?」


「当たり前だ、よっと――ぐっぅぅお」


 トアンの問いに立ち上がろうとするバルカンだが、痛みからか呻いていた。


「ちょっと見せろ、触診する」


「触診?」


「いいから、見せろ」


 胴回りを触って痛む箇所を確認していく。


「ここは?」


「ふん、大したことはない」


「おい、正確な情報を言え。お前が我慢できるかどうかなんてどうでもいいんだ」


「なに!?」


「なにじゃない!戦闘時に反応が遅れる程の痛みかで生死を分けるんださっさと答えろ!」


 有無を言わせず、怪しい部位を強めに押さえていく。


「痛ぇ」


「ならここは?今の所より痛いか?」


「ぐ、そうだな、一番痛いかもしれん」


 一見強がっているが成程これは重傷だ。内臓は複数個所から出血しているし、肋骨もかなり怪しい。戦闘などもってのほかだ。


「トアン。バルカンを連れて一度町へ上がってくれ」


「馬鹿を言うな。俺なら大丈夫だ」


「じゃあトアン、セン。さっきの攻撃はどちらも捌けるか?」


 バルカンに肩を貸すトアンと、塗り薬のようなものを腹部へ塗っているセンへ問う。


「――自信があると言えば嘘になる」


「私は無理、でも逃げに徹するなら大丈夫」


 ニンジャっ娘は流石の俊敏さという事だろうか。


「なら連絡用にセンだけついて来てくれ。トアンは上でバルカンを守りながら、ここの奴らが町に出て来ないか、どこかに逃げないか見張れるだろうか」


「おい、俺は――」


「むぅ、それでは何のために我々が来たのか――」


「おいトアン!」


「何を言う」


 更に食いつくバルカンを抑えて続けた。


「ここで全滅する運命だった君等が生還できるんだ。素直に喜べ」



 その人はとっても不思議な人だった。

 名前はシュウ、人族の男。任務から戻ったらダグの町に居て、リヨース様からこの後の仕事に加わるメンバーと紹介された。

 エルフの同胞は人族を嫌う。隠密として人の町に潜入している私たちは兎も角、戦士長のバルカンなんて、手違いといって殺しかねない程に。

 でもそのバルカンが大人しくシュウの同行を許しているから本当に驚いた。トアンに聞いたら、なんでも大樹カールで決闘をして手も足も出なかったらしい。

 実力は折り紙付きという事だ、なら充分。そう思っていたけど、本当に驚いたのはそれからだった。

 彼は不思議な魔法を使う。エルフよりも音を立てず、風に乗るようにして森を駆け、野を駆ける。

 彼は不思議な妖精機を持つ。魔素の気配が無く、伝承にある妖精王と同じ竜核のような気配を持つ機体。

 野営の時に聞いてみたが、詳しい事情はよく分からなかった。だけどアレを見て、彼が招き入れられたのは理解できた。


 帰ったらもっと話を聞こう。


 目的の町に到着して、早速敵のアジトに潜入すると、いきなり敵襲に遭った。

 見たことも無い敵だ。ヒトか、魔物なのかさえ分からない。ただひたすらに速く、強かった。何せ戦士長が一発でやられてしまった。私は全速力で離脱する事を考えたが、彼は違った。

 トアンに襲い掛かるソレを、不思議な魔法で完全に封じ込めてしまった。

 もう、本当に驚いた。


(まさか本物の竜?)


――ありえない話では無い。


 竜は空を飛ぶ為、竜核を介して魔素とは別の物質を生み出してモノを浮かせるらしい。これはまさにそんな魔法だ。

 ヒトに化ける竜は伝説に語られているし、竜なら妖精王と同質の力を使えるのだから、妖精王を騙る事だって理屈ではできる。


(なんで力を貸すの?気まぐれ?)


 疑問は尽きない。帰ったらもっと話を聞こう。


 負傷したバルカンを連れてトアンが一時離脱する。

 私は彼について先程の怪物が出てきた扉をくぐった。

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