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闢発の妖精王1 壊滅編  作者: C先輩
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対峙

未開拓領域:魔素が濃く、黒獣が発生しやすい為放置された誰の領土にもならない地域。

当該域に面した国境を持つ国は、そこから魔物や黒獣が入り込まないよう、防衛戦力を配備している。

妖精機を多く保有する国家は、このような場所に面した小国家に対して、軍事力を貸与し外貨を稼いでいる。

 山脈より続く森を抜け、平原を疾駆する。だがその見た目は"走る"と言うには、些か様相が異なっていた。


 エルフであるトアン達は魔法に対する造詣が深いらしく、様々な魔法をその場で構築する術を身に着けている。追い風(テイルエア)と呼んだこの魔法もその一つだ。風を起こし、突風を背に大地をスキップするように駆け抜けていく。

 対してこちらは普通に彼らの横を"飛行"している。重力を相殺してしまえば、最初に身体を蹴りだせば追加の推進力は要らないからだ。


「それ、便利ね」


 そう言ってトアンが恨めしそうにこちらを見ている。

 彼らはかつての妖精王が使った、竜魔法と呼ばれる素粒子エンジンに似た力をこちらが使えると思い込んでいるので、こちらも竜魔法が使えるという事にしていた。

 いずれ竜の魔法とやらも調べてみる必要はありそうだ。


「妖精王以外で使えたエルフは居ないのか?」


「無い。私達は長命種が故に、歴史に関する口伝の喪失は殆ど無い。だから断言できる」


 世代が変わるスパンが極端に少ない彼らならではの証明だった。


「逆に君達のような魔法が俺はからっきしだから羨ましいよ」


 そう言うとセンが近くに寄ってきて口を開く。


「普通の魔法は術式があれば再現できる。でもそれは無理、どうなってるの?」


「俺が聞きたいね」


 ダグの町に居る時も、出発した後も、散々聞かれた話題だ。

 妖精王の遺産とはどういう意味か、竜魔法を何故使えるのか――

 殆ど思い付きで言った内容だが、魔法は生まれつきの体質で、機体は遺跡で発見して起動時にその言葉が画面上に出てきた事からそう思っているだけだと説明していた。


「案外、本物の生まれ変わり?」


 センがそんな事を言いながら首をかしげていた。魔法で物凄いスピードのスキップをしながらなので、絵面が非常にシュールだ。


「聞いたかバルカン俺を敬ってもいいよ」


「んな訳ねぇだろ!」


 やいのやいの言っている間に目的地の町へ到着した。

 港町ウガル。北のネリーク共和国と王国領とを結ぶ町で、重要なハブ都市の為か城壁の如き石壁が高く築かれており、城こそ無いが巨大な城下町のようだった。帝国領にも続く航路があり、多数の空艇が停泊するのだという。

 町の外から空艇が停泊する為の桟橋柱が何本も見えており、実際に空艇も何隻か停まっている。

 この町の地下に、逃げた人物が潜んでいるという――


「じゃあ、手筈通りに行くぞ」


 バルカンがそう言って、トアンとセンを引き連れて関所から離れていく。彼らは素性を隠したいエルフ達だ。正面から入る訳にはいかない。

 冒険者の自分は普通に門へ向かい、手続きをして中へ入る。その隙に見張りの死角を縫い壁を飛び越えて上手く潜入したようだ。忍者の才能がありすぎる。


「こっち」


 センによる先導を受け、町の端にある教会の墓地に到着した。

 そこでは神父が花に水遣りをしていたが、センは神父の懐に飛び込むや、掌底から肘打ち、回り込んで手刀を打ち込み昏倒させた。

 手荒いなぁと眺めていたら、センはこちらへ向き直る。


「こいつは仲間、ここの地下に案内していたから」


 優秀なだけだった。

 神父を縛って木陰に隠し、墓地の奥にある像の裏手に回る。像の裏には取っ手があり、引くと地下へ続く階段が現れた。


「まさか教会が敵なのか?」


 宗教組織は厄介だ。敵に回すと正当性の有無など関係無く、聖戦と嘯く悲惨な争いが起こるのは歴史が証明している。


「ルイン教会はエルフを崇めている。ここは隠れ蓑なんじゃないか」


 答えたのは意外にもバルカンだった。


「お前、ちゃんと物事を考察できるんじゃないか」


「おい喧嘩売ってんなら買うぞ」


「集中しろ二人とも、ここは敵地だぞ!」


 押し殺すような声でトアンが注意してくる。バルカンは返事もせず、腰のショートソードを抜いて階段を下りて行った。センもそれに続く、トアンの目に促されてこちらも後をついていった。

 地下は少し狭いがしゃがむ必要は無い程度には空間があり、一本道が続いた。もう町は外れてしばらくといった所で、大きな出口が見えてきた。警戒しながら出るとそこは、巨大な広場だった。


「なんだここは」


 天井には穴が開いていた。ぱらぱらと土塊が落ちている所から見るに傾斜は急だ。登る為のものでは無いだろう。

 魔法人のような模様が描かれた地面と、正面に鉄製の赤黒い扉が見える以外は他に変わった所が無い。

 気にせず正面の扉を開こうと近づいた時、向こうから扉が開いた。


「あ?」


 バルカンの声だった。

 それは扉を開けた存在に対しての声だった。

 全身は黒く、所々赤黒く滲んだ白い体毛を体中に生やし、虫の複眼のような目をしたバルカンと近い背丈の生物が、ドアノブを使って扉を開けて出てきたのだ。


「Crurrrurrrrurrrurrru」


 喉で転がるような鳴き声を上げながらそれはこちらを眺めまわす。そして――

 バギィン!という鈍い音と共に、バルカンが吹き飛んだ。

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